Mの襲来
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それぞれの定位置に腰を下ろしたところで、男が姿を現した。
「こんにちは」
入ってきたのは、長身で人好きのする男性だった。
モリアーティではなさそうなので、とりあえずホッとする。
仕立ての良いスーツを着て、ピカピカの皮靴を履いている。
それなりの身分のようだ。
「久しぶりにロンドンに来たもんだから、君に挨拶をと思ってね」
「それはそれは、ご丁寧にどうも」
対するホームズはいかにも面倒だと言わんばかりに、しかめっ面で男を睨んでいる。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。何もしやしないよ」
そう言って男は笑い、私に向き直った。
「君がドクター・ワトソンか。聞いてたよりもいい男だ」
手を差し出してきたので、軽く握手をする。
「さぞモテるだろうね」
「は……?」
唐突すぎて、何を言っているのか分からなかった。
「おっかない顔ばっかりしてるホームズ君のそばにこんな優男がいたら、対比効果でみんな君になびくよねぇ」
「なにしに来た!」
ホームズがイライラして声を荒げた。
「やだなぁ。怒らなくてもいいじゃないか」
怒鳴られても男はいっこうに気にしていないようだ。
ニコニコしている。
「犯罪界のナポレオンと親交を深める気はない!」
「犯罪界のナポレオンって、じゃあ君が……!」
私は驚いて彼から一歩退いた。
モリアーティがまさか、こんな好青年だったとは思わなかった。
勝手に目つきの悪い痩せこけた男を想像していたのだ。
「僕も普通にナポレオンは嫌いなんだけど。まぁ一応、褒め言葉として受け取っておくよ」
モリアーティはニコニコしてテーブルの席に座った。
「用件はなんだ、モリアーティ」
「別にないよ。ただ……」
モリアーティは部屋をぐるりと見回した。
「何か隠してるだろ、ホームズ君」
「何もない。用がないならさっさと帰れ」
ホームズはポーカーフェイスで応じるが、モリアーティは余裕の表情でホームズを見あげて言った。
「女……か?」
思わずハッと息をのんでしまったのを、モリアーティは見逃さなかった。
ニヤリと口もとに笑みを浮かべる。
「ワトソン先生は正直だねぇ。ぜひ紹介して欲しいな」
「バカらしい。この部屋のどこに女の影がある?」
ホームズが冷たい声で言った。
「え、だって、なんだか良い匂いがするよ」
「テーブルの花だろう」
「このカップは? ワトソン先生の他に誰かいたみたいだけど」
テーブルの上のティーカップは三つ。
一つはアオイの物だ。
「客だ。僕も一応探偵として名が通っているのでね」
「ふぅん……」
信じていない様子だ。
立ち上がってあちこちを眺めている。
「部屋がキレイだね。僕の知るホームズ君の部屋は、混沌としていたよ。スリッパに煙草が入ってたりね」
「何で知っているんだ」
ホームズは眉間のシワをピクリとさせた。
モリアーティは悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「ふふ、秘密。とにかく、こんなにキレイじゃなかった」
「今朝ハドソン夫人が掃除していったよ。大事な客が来るんで頼んでおいたんだ」
私が助け船を出した。
余分なティーカップがあるし、話に齟齬は無いだろう。
「君が勘繰るような事は何もない。帰りたまえ」
「……分かったよ」
モリアーティは渋々部屋を出て行こうとした。
私たちは彼を見送ろうと立ち上がる。
すると、モリアーティが身を翻して奥の部屋へと駆け寄った。
「あっ!」
私は短く叫び声をあげ、ホームズはしまったという顔を隠し切れなかった。
私たちが制止する間もなく、モリアーティが扉を開ける。
「きゃ……!」
扉に寄りかかるようにして外の様子をうかがっていたらしいアオイが中から転がり出てきた。
「おっと!」
倒れそうになったアオイをモリアーティが抱きとめた。
「こんにちは」
入ってきたのは、長身で人好きのする男性だった。
モリアーティではなさそうなので、とりあえずホッとする。
仕立ての良いスーツを着て、ピカピカの皮靴を履いている。
それなりの身分のようだ。
「久しぶりにロンドンに来たもんだから、君に挨拶をと思ってね」
「それはそれは、ご丁寧にどうも」
対するホームズはいかにも面倒だと言わんばかりに、しかめっ面で男を睨んでいる。
「そんなに警戒しなくてもいいじゃないか。何もしやしないよ」
そう言って男は笑い、私に向き直った。
「君がドクター・ワトソンか。聞いてたよりもいい男だ」
手を差し出してきたので、軽く握手をする。
「さぞモテるだろうね」
「は……?」
唐突すぎて、何を言っているのか分からなかった。
「おっかない顔ばっかりしてるホームズ君のそばにこんな優男がいたら、対比効果でみんな君になびくよねぇ」
「なにしに来た!」
ホームズがイライラして声を荒げた。
「やだなぁ。怒らなくてもいいじゃないか」
怒鳴られても男はいっこうに気にしていないようだ。
ニコニコしている。
「犯罪界のナポレオンと親交を深める気はない!」
「犯罪界のナポレオンって、じゃあ君が……!」
私は驚いて彼から一歩退いた。
モリアーティがまさか、こんな好青年だったとは思わなかった。
勝手に目つきの悪い痩せこけた男を想像していたのだ。
「僕も普通にナポレオンは嫌いなんだけど。まぁ一応、褒め言葉として受け取っておくよ」
モリアーティはニコニコしてテーブルの席に座った。
「用件はなんだ、モリアーティ」
「別にないよ。ただ……」
モリアーティは部屋をぐるりと見回した。
「何か隠してるだろ、ホームズ君」
「何もない。用がないならさっさと帰れ」
ホームズはポーカーフェイスで応じるが、モリアーティは余裕の表情でホームズを見あげて言った。
「女……か?」
思わずハッと息をのんでしまったのを、モリアーティは見逃さなかった。
ニヤリと口もとに笑みを浮かべる。
「ワトソン先生は正直だねぇ。ぜひ紹介して欲しいな」
「バカらしい。この部屋のどこに女の影がある?」
ホームズが冷たい声で言った。
「え、だって、なんだか良い匂いがするよ」
「テーブルの花だろう」
「このカップは? ワトソン先生の他に誰かいたみたいだけど」
テーブルの上のティーカップは三つ。
一つはアオイの物だ。
「客だ。僕も一応探偵として名が通っているのでね」
「ふぅん……」
信じていない様子だ。
立ち上がってあちこちを眺めている。
「部屋がキレイだね。僕の知るホームズ君の部屋は、混沌としていたよ。スリッパに煙草が入ってたりね」
「何で知っているんだ」
ホームズは眉間のシワをピクリとさせた。
モリアーティは悪戯っ子のような笑みを浮かべる。
「ふふ、秘密。とにかく、こんなにキレイじゃなかった」
「今朝ハドソン夫人が掃除していったよ。大事な客が来るんで頼んでおいたんだ」
私が助け船を出した。
余分なティーカップがあるし、話に齟齬は無いだろう。
「君が勘繰るような事は何もない。帰りたまえ」
「……分かったよ」
モリアーティは渋々部屋を出て行こうとした。
私たちは彼を見送ろうと立ち上がる。
すると、モリアーティが身を翻して奥の部屋へと駆け寄った。
「あっ!」
私は短く叫び声をあげ、ホームズはしまったという顔を隠し切れなかった。
私たちが制止する間もなく、モリアーティが扉を開ける。
「きゃ……!」
扉に寄りかかるようにして外の様子をうかがっていたらしいアオイが中から転がり出てきた。
「おっと!」
倒れそうになったアオイをモリアーティが抱きとめた。