Mの襲来
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空家事件の時、犯人のMがモラン大佐だと知ってアオイは愕然としていた。
相当怖い思いをしたようだが、ホームズが言うにはモリアーティはモランとは比べものにならないらしい。
「奴に動きがあったらすぐわかるよう、ネットワークを張っておいて良かった。これで奴を回避できるなら、ウィギンスたちにソヴリン金貨をやったっていい」
彼の言葉から、あの時のようにアオイを人質に取られたら勝ち目はないのだと分かった。
「彼女には何て説明するんだい?」
「怖がらせたくない。モリアーティの事は伏せて、奴がロンドンにいる間は旅行にでも出そうと思う」
「お茶が入りましたよ!」
ドアが開いてアオイが顔を出した。
「おかえりなさい、ワトソンさん」
「あぁ。帰りに君の好きな砂糖菓子を買ってきたよ」
「わぁ、ありがとうございます」
アオイはパッと顔をほころばせ、子供のように喜んだ。
「ところでアオイ」
ホームズが口を開いた。
「旅行なんてどうだい? バースか、いや、この時期ならタンブリッジウェルズが良いか。ハドソンさんが付き添ってくれる」
「そりゃあ良い、ぜひ行くべきだ。あそこの鉱泉は女王陛下も滞在の間、毎日飲まれていたそうだよ」
私もホームズを後押しする。
「何ですか、突然」
アオイは苦笑している。
冗談か何かだと思ったようだ。
「旅行は嫌いかい?」
「いえ、嫌いじゃないですけど」
「じゃあ決まりだ。宿の手配は僕がしておこう」
「えっ?」
「今からなら午後一番の列車に間に合うだろう。急いで準備するんだ」
「ち、ちょっと待って……」
戸惑うアオイを無視し、ホームズは私に囁いた。
「おかみに説明して、僕が良いと言うまで戻って来ないように伝えてくれ。連絡も駄目だ。必要ならこちらからする」
「分かった」
私は階下に降りて行った。
ハドソン夫人に事情を説明して戻ってくると、ホームズはアオイのクローゼットを開けて衣類をトランクに放り込んでいた。
アオイはあっけにとられて、ただ突っ立ってホームズのやる事を眺めている。
「よし、これでいい」
トランクを閉めて立ち上がると、ホームズはクローゼットに残っていた帽子をアオイの頭にのせた。
「ウィンチェルシーにも足をのばすと良い。あのターナーの絵そのものの景色が見られる」
「あの、ホームズさん……」
アオイがためらいがちに口を開いた時、階下で呼び鈴が鳴った。
ハドソン夫人が応対に出るのが聞こえる。
「こんにちは。ホームズ君はいるかな?」
軽やかな男の声がした。
その声を聞くなりホームズは体を硬直させ、急に険しい顔つきになった。
「ホームズさんにご用ですか? では、お会いになるか伺ってまいります」
「いや、いいんだ。彼とは旧知の仲でね。勝手にあがらせてもらうよ」
「あ、ちょっと! 困りますよ!」
「いいから、いいから」
ゆっくりと階段を上がってくる音がする。
ホームズは慌てた様子で部屋を見回した。
アオイを部屋の中ほどまで押し戻し、人さし指を立てて早口で言う。
「アオイ、この部屋から出ないでくれ。いいね?」
急いでトランクをベッドの下へ滑り込ませ、何か言いたげなアオイを置いて居間へと戻る。
「誰なんだ。まさか……」
私は小声で訊ねた。
「説明しているヒマはない。ワトソン、うまく話を合わせてくれ」
「わかった」
相当怖い思いをしたようだが、ホームズが言うにはモリアーティはモランとは比べものにならないらしい。
「奴に動きがあったらすぐわかるよう、ネットワークを張っておいて良かった。これで奴を回避できるなら、ウィギンスたちにソヴリン金貨をやったっていい」
彼の言葉から、あの時のようにアオイを人質に取られたら勝ち目はないのだと分かった。
「彼女には何て説明するんだい?」
「怖がらせたくない。モリアーティの事は伏せて、奴がロンドンにいる間は旅行にでも出そうと思う」
「お茶が入りましたよ!」
ドアが開いてアオイが顔を出した。
「おかえりなさい、ワトソンさん」
「あぁ。帰りに君の好きな砂糖菓子を買ってきたよ」
「わぁ、ありがとうございます」
アオイはパッと顔をほころばせ、子供のように喜んだ。
「ところでアオイ」
ホームズが口を開いた。
「旅行なんてどうだい? バースか、いや、この時期ならタンブリッジウェルズが良いか。ハドソンさんが付き添ってくれる」
「そりゃあ良い、ぜひ行くべきだ。あそこの鉱泉は女王陛下も滞在の間、毎日飲まれていたそうだよ」
私もホームズを後押しする。
「何ですか、突然」
アオイは苦笑している。
冗談か何かだと思ったようだ。
「旅行は嫌いかい?」
「いえ、嫌いじゃないですけど」
「じゃあ決まりだ。宿の手配は僕がしておこう」
「えっ?」
「今からなら午後一番の列車に間に合うだろう。急いで準備するんだ」
「ち、ちょっと待って……」
戸惑うアオイを無視し、ホームズは私に囁いた。
「おかみに説明して、僕が良いと言うまで戻って来ないように伝えてくれ。連絡も駄目だ。必要ならこちらからする」
「分かった」
私は階下に降りて行った。
ハドソン夫人に事情を説明して戻ってくると、ホームズはアオイのクローゼットを開けて衣類をトランクに放り込んでいた。
アオイはあっけにとられて、ただ突っ立ってホームズのやる事を眺めている。
「よし、これでいい」
トランクを閉めて立ち上がると、ホームズはクローゼットに残っていた帽子をアオイの頭にのせた。
「ウィンチェルシーにも足をのばすと良い。あのターナーの絵そのものの景色が見られる」
「あの、ホームズさん……」
アオイがためらいがちに口を開いた時、階下で呼び鈴が鳴った。
ハドソン夫人が応対に出るのが聞こえる。
「こんにちは。ホームズ君はいるかな?」
軽やかな男の声がした。
その声を聞くなりホームズは体を硬直させ、急に険しい顔つきになった。
「ホームズさんにご用ですか? では、お会いになるか伺ってまいります」
「いや、いいんだ。彼とは旧知の仲でね。勝手にあがらせてもらうよ」
「あ、ちょっと! 困りますよ!」
「いいから、いいから」
ゆっくりと階段を上がってくる音がする。
ホームズは慌てた様子で部屋を見回した。
アオイを部屋の中ほどまで押し戻し、人さし指を立てて早口で言う。
「アオイ、この部屋から出ないでくれ。いいね?」
急いでトランクをベッドの下へ滑り込ませ、何か言いたげなアオイを置いて居間へと戻る。
「誰なんだ。まさか……」
私は小声で訊ねた。
「説明しているヒマはない。ワトソン、うまく話を合わせてくれ」
「わかった」