風が吹けば
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ホームズがあちこち観察している間に、ワトソンは炭レンジに火を入れてヤカンを置いた。
戸棚からティーセットを出していると、ホームズが嬉しそうに立ち上がった。
「簡単な事だったよ」
「何か分かったのかい?」
「初歩的な事さ。さっき新聞を読んだ時に気づくべきだった」
ホームズは二階から新聞を持ってくると、目当ての記事をワトソンに突き出した。
「煙突火災の記事だな」
ワトソンは困惑しながら顔を上げた。
「これが何か?」
「何って、君が知りたがったんじゃないか」
ホームズも困惑顔をするから、ますます訳が
わからない。
「下町の煙突火災を知りたいなんて、言った覚えはないんだが」
「あぁ、そうか。すまない、間を省き過ぎた。一から説明しよう」
ホームズは調理台のそばにあった丸椅子に腰かけると、人さし指で左の手のひらにチェックマークを書きながら、説明し始めた。
「風の強い日に起こりやすいこの火災の原因はといえば、煙突掃除を怠ったからだ。煙突火災の恐ろしさは皆の知るところだから、周りの家々は思い出したかのように一斉に煙突掃除夫を呼ぶ。すると当然、掃除夫の手が足りなくなる。今日はウィギンスも来ないだろうな、あっちの方が稼げるから。そうなると、ハドソンさんが買物をしようにも荷物を持ってくれる奴がいない。見かねたアオイが手伝いを買ってでるだろう。それで二人とも留守なんだ」
「へぇ……」
ワトソンが納得して頷くと、ちょうどお湯が沸いた。
ティーポットに紅茶の葉を入れお湯を注ぐと、紅茶独特の良い香りが立ち上る。
「わかってみると実に単純だろう?」
「つまりはアレだ。風が吹けば桶屋が儲かる、ってやつだな」
ワトソンが言うと、ホームズは怪訝な顔をして訂正した。
「何を言ってるんだワトソン。桶屋なんか儲からないぜ」
「たとえだよ、たとえ」
笑っていると、玄関のドアが開いてアオイの声が聞こえた。
「ただいま……あっ、ワトソンさん!」
キッチンに現れたアオイは、両手に荷物を抱えたままワトソンに笑いかけた。
彼女の後ろからハドソン夫人もキッチンに入ってくる。
「おかえり、ハドソンさん。アオイもご苦労だったね」
ホームズは二人の手から荷物を受け取り、テーブルの上に置いた。
アオイは目線で感謝の意を表してから、不思議そうに言った。
「ホームズさんもワトソンさんも、こんな所で何をしてるんですか?」
「まぁ、かけたまえ。疲れただろう?」
ホームズは二人のために椅子をひいてやり、それから横目でワトソンを見てニヤリと笑った。
「お茶にしないか? 今ちょうど、メイドが淹れてくれたんだ」
「ホームズ!」
終わり
戸棚からティーセットを出していると、ホームズが嬉しそうに立ち上がった。
「簡単な事だったよ」
「何か分かったのかい?」
「初歩的な事さ。さっき新聞を読んだ時に気づくべきだった」
ホームズは二階から新聞を持ってくると、目当ての記事をワトソンに突き出した。
「煙突火災の記事だな」
ワトソンは困惑しながら顔を上げた。
「これが何か?」
「何って、君が知りたがったんじゃないか」
ホームズも困惑顔をするから、ますます訳が
わからない。
「下町の煙突火災を知りたいなんて、言った覚えはないんだが」
「あぁ、そうか。すまない、間を省き過ぎた。一から説明しよう」
ホームズは調理台のそばにあった丸椅子に腰かけると、人さし指で左の手のひらにチェックマークを書きながら、説明し始めた。
「風の強い日に起こりやすいこの火災の原因はといえば、煙突掃除を怠ったからだ。煙突火災の恐ろしさは皆の知るところだから、周りの家々は思い出したかのように一斉に煙突掃除夫を呼ぶ。すると当然、掃除夫の手が足りなくなる。今日はウィギンスも来ないだろうな、あっちの方が稼げるから。そうなると、ハドソンさんが買物をしようにも荷物を持ってくれる奴がいない。見かねたアオイが手伝いを買ってでるだろう。それで二人とも留守なんだ」
「へぇ……」
ワトソンが納得して頷くと、ちょうどお湯が沸いた。
ティーポットに紅茶の葉を入れお湯を注ぐと、紅茶独特の良い香りが立ち上る。
「わかってみると実に単純だろう?」
「つまりはアレだ。風が吹けば桶屋が儲かる、ってやつだな」
ワトソンが言うと、ホームズは怪訝な顔をして訂正した。
「何を言ってるんだワトソン。桶屋なんか儲からないぜ」
「たとえだよ、たとえ」
笑っていると、玄関のドアが開いてアオイの声が聞こえた。
「ただいま……あっ、ワトソンさん!」
キッチンに現れたアオイは、両手に荷物を抱えたままワトソンに笑いかけた。
彼女の後ろからハドソン夫人もキッチンに入ってくる。
「おかえり、ハドソンさん。アオイもご苦労だったね」
ホームズは二人の手から荷物を受け取り、テーブルの上に置いた。
アオイは目線で感謝の意を表してから、不思議そうに言った。
「ホームズさんもワトソンさんも、こんな所で何をしてるんですか?」
「まぁ、かけたまえ。疲れただろう?」
ホームズは二人のために椅子をひいてやり、それから横目でワトソンを見てニヤリと笑った。
「お茶にしないか? 今ちょうど、メイドが淹れてくれたんだ」
「ホームズ!」
終わり