握った手ははなさないから
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診察をしているワトソンの耳に、玄関のドアがバタンと開閉する大きな音が聞こえた。
続いて、17段の階段を駆け上がってくる足音。
「アオイ!」
ドアを勢いよく開けてホームズが飛び込んできた。
ワトソンは聴診器を耳から外しながらホームズを振り返る。
「病人の前だ、静かにしてくれないか」
「どうなんだワトソン」
ホームズは意識なくベッドに横たわるアオイを心配そうに覗き込んだ。
彼女は発熱のために顔を真っ赤にし、荒い呼吸を繰り返している。
「何か重い病気じゃないだろうね? 死んだりしないよな?」
「何とも言えないよ」
それを聞いたホームズは顔をひきつらせた。
唇がワナワナ震えているのを見て、ワトソンは思わず苦笑する。
「心配するな、無理しなけりゃ大丈夫さ。風邪だと思うよ」
「そうか……ははっ。なんだ、そうか……」
ホームズは恥ずかしそうに笑うとアオイのそばに腰かけた。
ワトソンは医療鞄を閉じて立ち上り、部屋を出ようとしたが、ドアの手前でホームズを振り返った。
「なぁ、ホームズ」
「何かね」
「こんな事を言っていいものか……怒らないで聞いてくれ」
言いよどむワトソンにホームズは顔を向けた。
ワトソンは短く息を吸い込んで意を決したように言う。
「アオイはいずれ現代へ帰るんだよ。わかっているよね?」
ホームズが息をのんだ。
何を言わんとしているかが分かったのだろう。
それでもワトソンは更に付け足した。
「あまり彼女にのめりこむと、辛い思いをするんじゃないかな。君も、彼女も」
ホームズは黙っていた。
ワトソンが部屋を出て行き、ドアが閉まる音がした。
「…………」
ホームズはじっとアオイの顔を見つめていた。
「わかってるさ。言われなくても」
低い声でつぶやいた。
自分は良いとしても、彼女を悲しませたくはない。
だから彼女には『ごく普通』に接してきたつもりだった。
それなのに。
「ワトソンに指摘されるとは……」
ため息が漏れる。
続いて、17段の階段を駆け上がってくる足音。
「アオイ!」
ドアを勢いよく開けてホームズが飛び込んできた。
ワトソンは聴診器を耳から外しながらホームズを振り返る。
「病人の前だ、静かにしてくれないか」
「どうなんだワトソン」
ホームズは意識なくベッドに横たわるアオイを心配そうに覗き込んだ。
彼女は発熱のために顔を真っ赤にし、荒い呼吸を繰り返している。
「何か重い病気じゃないだろうね? 死んだりしないよな?」
「何とも言えないよ」
それを聞いたホームズは顔をひきつらせた。
唇がワナワナ震えているのを見て、ワトソンは思わず苦笑する。
「心配するな、無理しなけりゃ大丈夫さ。風邪だと思うよ」
「そうか……ははっ。なんだ、そうか……」
ホームズは恥ずかしそうに笑うとアオイのそばに腰かけた。
ワトソンは医療鞄を閉じて立ち上り、部屋を出ようとしたが、ドアの手前でホームズを振り返った。
「なぁ、ホームズ」
「何かね」
「こんな事を言っていいものか……怒らないで聞いてくれ」
言いよどむワトソンにホームズは顔を向けた。
ワトソンは短く息を吸い込んで意を決したように言う。
「アオイはいずれ現代へ帰るんだよ。わかっているよね?」
ホームズが息をのんだ。
何を言わんとしているかが分かったのだろう。
それでもワトソンは更に付け足した。
「あまり彼女にのめりこむと、辛い思いをするんじゃないかな。君も、彼女も」
ホームズは黙っていた。
ワトソンが部屋を出て行き、ドアが閉まる音がした。
「…………」
ホームズはじっとアオイの顔を見つめていた。
「わかってるさ。言われなくても」
低い声でつぶやいた。
自分は良いとしても、彼女を悲しませたくはない。
だから彼女には『ごく普通』に接してきたつもりだった。
それなのに。
「ワトソンに指摘されるとは……」
ため息が漏れる。