GPSいらず
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久しぶりにワトソンがベーカー街の下宿へ顔を出すと、部屋にはホームズしかいなかった。
「ワトソン?」
部屋を見回したのを見て、ホームズが呼びかける。
「いや、なんでもないよ」
ワトソンは笑って手を振ったが、ホームズには何もかもお見通しだ。
「アオイなら今出かけている」
「なんで僕が彼女を探していると思ったんだい?」
「違うのか? ポケットから砂糖菓子の瓶がのぞいているから、てっきり彼女にやるのかと思ったが」
「あぁ、そうだよ。彼女が喜ぶと思ってね」
ワトソンは瓶をテーブルに置いた。
「どこに行くか聞いたかい?」
「いや。そんなもの、聞かなくたってわかる」
ホームズは両手の指を突き合わせ、チラリと時計を見た。
「彼女は郵便局へ出かけた。その後は角の花屋。ちょっと覗いてみるつもりがあの子の事だ、店員のマギーに押し切られて何がしか買わされるだろう。それからコーヒーを買って、もうすぐ帰ってくる頃だな」
ワトソンは窓際に歩み寄って、通りを見下ろした。
ちょうど、アオイが通りを渡ってくるところだった。
「本当だ。帰ってきたよホームズ」
アオイは片手にコーヒーの包み、片手にチューリップの花束を抱えて部屋に入ってきた。
ワトソンを見るなり、パッと顔をほころばせる。
「あれ、ワトソンさん! いらっしゃい」
「こんにちは」
ワトソンはアオイの手から荷物を受け取ってやり、テーブルに置いた。
「アオイちゃんは買い物に行ってたの?」
「いえ、郵便局へ行ったんです。その帰りに、角のお花屋さんのお花があまりにきれいだったので眺めてたら、店員さんがすごく勧めてきて、結局根負けして買っちゃいました。それから、ハドソンさんがコーヒーがきれたって言ってたのを思い出したんで、すぐそこでついでに買ってきました」
「すごいなホームズ。大正解だよ」
ワトソンは声を上げて笑った。
何のことか分からないアオイは、キョトンとして2人の顔を交互に見つめる。
「何のことです?」
「君が今日どこへ行ったのか、ホームズが言い当てたんだよ」
「ワトソンに手紙を書いていたのは知っていたし、普段の彼女を見ていればきれいな物にすぐ目を奪われるのも、マギーの押しにかなわないのも分かる。それにハドソンさんがコーヒーがきれたと言っていたのは僕も聞いていたからね」
初歩的な推理だよと、ホームズはさも何でもない事のように言った。
(ホームズさんがいれば世の中にGPSは必要ないな……)
アオイはそう思った。
終わり
「ワトソン?」
部屋を見回したのを見て、ホームズが呼びかける。
「いや、なんでもないよ」
ワトソンは笑って手を振ったが、ホームズには何もかもお見通しだ。
「アオイなら今出かけている」
「なんで僕が彼女を探していると思ったんだい?」
「違うのか? ポケットから砂糖菓子の瓶がのぞいているから、てっきり彼女にやるのかと思ったが」
「あぁ、そうだよ。彼女が喜ぶと思ってね」
ワトソンは瓶をテーブルに置いた。
「どこに行くか聞いたかい?」
「いや。そんなもの、聞かなくたってわかる」
ホームズは両手の指を突き合わせ、チラリと時計を見た。
「彼女は郵便局へ出かけた。その後は角の花屋。ちょっと覗いてみるつもりがあの子の事だ、店員のマギーに押し切られて何がしか買わされるだろう。それからコーヒーを買って、もうすぐ帰ってくる頃だな」
ワトソンは窓際に歩み寄って、通りを見下ろした。
ちょうど、アオイが通りを渡ってくるところだった。
「本当だ。帰ってきたよホームズ」
アオイは片手にコーヒーの包み、片手にチューリップの花束を抱えて部屋に入ってきた。
ワトソンを見るなり、パッと顔をほころばせる。
「あれ、ワトソンさん! いらっしゃい」
「こんにちは」
ワトソンはアオイの手から荷物を受け取ってやり、テーブルに置いた。
「アオイちゃんは買い物に行ってたの?」
「いえ、郵便局へ行ったんです。その帰りに、角のお花屋さんのお花があまりにきれいだったので眺めてたら、店員さんがすごく勧めてきて、結局根負けして買っちゃいました。それから、ハドソンさんがコーヒーがきれたって言ってたのを思い出したんで、すぐそこでついでに買ってきました」
「すごいなホームズ。大正解だよ」
ワトソンは声を上げて笑った。
何のことか分からないアオイは、キョトンとして2人の顔を交互に見つめる。
「何のことです?」
「君が今日どこへ行ったのか、ホームズが言い当てたんだよ」
「ワトソンに手紙を書いていたのは知っていたし、普段の彼女を見ていればきれいな物にすぐ目を奪われるのも、マギーの押しにかなわないのも分かる。それにハドソンさんがコーヒーがきれたと言っていたのは僕も聞いていたからね」
初歩的な推理だよと、ホームズはさも何でもない事のように言った。
(ホームズさんがいれば世の中にGPSは必要ないな……)
アオイはそう思った。
終わり