アオイは今、捕らわれの身だった。

ホームズが留守の間に依頼人としてやってきた男は、一瞬のうちにアオイに睡眠薬を嗅がせて浚った。

見知らぬ部屋で目を覚ましたアオイはぼんやりともやがかかった視界に男の姿をとらえ、口を開いた。

「誰、なの……？」

男はそれには答えず、言った。

「君にはシャーロック・ホームズをおびき出す餌になってもらう」

「餌って……」

アオイは立ち上がろうとしたが、椅子に後ろ手に縛られていて身動きができなかった。

男が一枚のカードを差し出した。

「彼の部屋にはこれを残してきた」

アオイは恐る恐るカードに目を通す。

『君の可愛いレディは預かった　Ｍ』

Ｍ……モリアーティ。

ジェームズ・モリアーティ教授。犯罪界のナポレオン。

アオイの顔から血の気が引いた。