「午前1時34分」


腕時計を確認してから、男は私に手錠をかけた。


「まんまとひっかかりおって。ルパンはどこだ」


「さぁね」


そっけなく答えて私は男を見上げた。


銭形警部をこんなに間近で見るのは初めてだった。


身長は……五エ門と同じくらいだろうか。


それでも五エ門より大きく見えるのは、そのがっしりした体型のせいだろう。


熊みたいだ。


「落ち合う場所ぐらい決まっとるだろう。どこだ」


銭形を無視して、私は解けかかった靴紐を結びなおした。


「…………」


銭形は黙っていた。


もう片方の紐を結びなおすフリをしながら盗み見ると、彼は私の足を見ていた。


短めのタイトスカートが屈み込んだせいでさらに短くなって、露出はいつもより多め。


あぁ、そう。


逃げるにしても、こんな大柄な男に力でかなうはずが無いと思ってたけど。


不意打ちなら何とかなりそうな気がしてきた。


「……歩け」


銭形がわずかに腕を引いて歩き出した。


私は足を突っ張って抵抗する。


「子供じみた真似はよせ。お前さんは捕まったんだ」


銭形はわずかに顔をしかめ、それから力をこめて腕を引っ張った。


私の体はやすやすと引き寄せられ、勢いあまって銭形の胸に飛び込む。


「⁉︎」


彼の目が驚きで大きく見開かれた。


柔らかなブラウンの瞳に私の顔が映っていた。


綺麗な瞳。


私はその瞳に吸い寄せられるように、銭形にキスをした。