初耳だな。
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
レンガ道の先はトンネルだった。
光の差さない真っ黒な闇が、人待ち気にそこに横たわっている。
数歩進んだだけで、俺は闇にすっぽりと包まれてしまった。
ゆっくり、すり足で前へ進んだ。
手を伸ばしたが、空をきるばかりだ。
そのままずいぶんと長いこと歩き続けたが、見えるものは何もなかった。
『耳をすまして、次元』
綾と組んだばかりの頃、レニングラードで闇の中をさ迷ったことがあった。
右も左もわからない、ちょうど今と同じような状況だった。
綾は俺のジャケットの裾を掴んでじっとしていた。
手を離せばお互いの位置が分からず、離れ離れになってしまうからだった。
『心配するな。そのうちルパンが助けにくるだろう』
女であることを気遣って、一応慰めを口にした。
すると彼女は、
『あら、心配なんかしてないわよ?』
あっけからんとそう言って、パッと手を離した。
靴音が遠ざかっていく。
『おい! どこにいるかわからなくなるだろう!』
『シーッ。次元、耳を澄まして。私の声が聞こえるように』
どこからか彼女の声が聞こえて、続けて歌が流れてきた。
優しい歌声が近くなり、遠くなり、聞こえてくる。
『歌がうまいんだな』
『歌手だったの』
『へぇ、初耳だ』
『でも殺人事件を目撃しちゃって、証言台に立つまで修道院に隠れててね。そこでシスター達と讃美歌を歌って、』
『“ 天使にラブソングを ”だな』
『あ、わかった?』
俺と彼女は闇の中をゆっくりと移動しながら、ついには出口を見つけたのだった。
俺は耳を澄ました。
静寂の中に、ふと何かかが聞こえた気がした。
それは歩を進めるたびに徐々に明瞭になってくる。
あぁ、彼女だ。
彼女の歌が聞こえる。
光の差さない真っ黒な闇が、人待ち気にそこに横たわっている。
数歩進んだだけで、俺は闇にすっぽりと包まれてしまった。
ゆっくり、すり足で前へ進んだ。
手を伸ばしたが、空をきるばかりだ。
そのままずいぶんと長いこと歩き続けたが、見えるものは何もなかった。
『耳をすまして、次元』
綾と組んだばかりの頃、レニングラードで闇の中をさ迷ったことがあった。
右も左もわからない、ちょうど今と同じような状況だった。
綾は俺のジャケットの裾を掴んでじっとしていた。
手を離せばお互いの位置が分からず、離れ離れになってしまうからだった。
『心配するな。そのうちルパンが助けにくるだろう』
女であることを気遣って、一応慰めを口にした。
すると彼女は、
『あら、心配なんかしてないわよ?』
あっけからんとそう言って、パッと手を離した。
靴音が遠ざかっていく。
『おい! どこにいるかわからなくなるだろう!』
『シーッ。次元、耳を澄まして。私の声が聞こえるように』
どこからか彼女の声が聞こえて、続けて歌が流れてきた。
優しい歌声が近くなり、遠くなり、聞こえてくる。
『歌がうまいんだな』
『歌手だったの』
『へぇ、初耳だ』
『でも殺人事件を目撃しちゃって、証言台に立つまで修道院に隠れててね。そこでシスター達と讃美歌を歌って、』
『“ 天使にラブソングを ”だな』
『あ、わかった?』
俺と彼女は闇の中をゆっくりと移動しながら、ついには出口を見つけたのだった。
俺は耳を澄ました。
静寂の中に、ふと何かかが聞こえた気がした。
それは歩を進めるたびに徐々に明瞭になってくる。
あぁ、彼女だ。
彼女の歌が聞こえる。