彼女は常に嘘をつく4
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「ジングルベル~ジングルベル~ジングルベル~ジングルベル~ジングルベル~ジングルベル~」
「おいっ!」
「はいっ?」
綾はキョトンとして振り返った。
脚立を降りて次元の元に駆け寄ってくる。
「何でしょう、次元のダンナ」
「その歌は何だ。壊れたレコードみたいに同じところを何度も歌いやがって」
「は?」
ツリーに対する指摘だろうと思っていた綾は、意外な所に入ったツッコミに目が点になった。
「好物を食おうとした瞬間に横取りされたっつーか、3連単当てたと思ったら審議で順位が入れ替わったっつーか……分かるだろ?」
「ぜんぜんワカリマセン」
こだわりを理解してもらえず、次元は軽く舌打ちをした。
「歌うならちゃんと歌え。気持ち悪いんだよ」
「ちゃんとと言われましても…… そこしか知らないんで」
次元はあっけにとられた。
「知らねぇって……子供の頃覚えなかったのか?」
綾は首を振った。
この歌を知ったのはつい最近だという。
「まぁ、この時期になりゃ嫌でも耳にするからな。お前さんならすぐ覚えるだろう」
綾はまた首を振った。
確かに、覚えるスピードには自信はある。
「でも、耳にするのは『ジングルベル~』のフレーズ、それも大抵メロディだけだもん」
街に流れるメロディなど、いつもは気に留めていない。
たまたま「ジングルベル~」の部分だけが、彼女の耳に入っただけなのだった。
次元は帽子をとって頭をかいた。
彼女の表情がふいに寂しげな色を帯びて見え、触れてはいけない古傷に触れたのではないかと思った。
「ここに座れ」
次元は自分の隣をポンポンと叩いて綾を座らせた。
「一回歌えば、お前は覚えるよな? 記憶力だけは良いんだから」
「『だけ』は余計です」
帽子を深くかぶりなおし、次元はうろ覚えの歌詞を記憶から引きずり出した。
綾はじっと聞いていた。
低い、優しい歌声。
声が止んでも、綾はそのまま微動だにしなかった。
「……覚えたか?」
沈黙が照れくさくなった次元は綾の顔を覗き込んだ。
俯き加減だった綾の目が潤んでいる。
「どうした?」
すると綾は大きく伸びをして笑った。
「素敵な歌声を聴いていたら眠くなっちゃった。まさか次元が催眠術を使えるなんて知らなかったよ! あなたは段々眠くなる〜」
「その手つきを止めろ、鬱陶しい」
「痛っ。あざーっす」
デコピンをくらったところで、ちょうど外から車のエンジン音がした。
「あっ、ルパンが返ってきた! おっかえりなさーい!」
綾は玄関の外へ飛び出していってしまった。
「おいっ!」
「はいっ?」
綾はキョトンとして振り返った。
脚立を降りて次元の元に駆け寄ってくる。
「何でしょう、次元のダンナ」
「その歌は何だ。壊れたレコードみたいに同じところを何度も歌いやがって」
「は?」
ツリーに対する指摘だろうと思っていた綾は、意外な所に入ったツッコミに目が点になった。
「好物を食おうとした瞬間に横取りされたっつーか、3連単当てたと思ったら審議で順位が入れ替わったっつーか……分かるだろ?」
「ぜんぜんワカリマセン」
こだわりを理解してもらえず、次元は軽く舌打ちをした。
「歌うならちゃんと歌え。気持ち悪いんだよ」
「ちゃんとと言われましても…… そこしか知らないんで」
次元はあっけにとられた。
「知らねぇって……子供の頃覚えなかったのか?」
綾は首を振った。
この歌を知ったのはつい最近だという。
「まぁ、この時期になりゃ嫌でも耳にするからな。お前さんならすぐ覚えるだろう」
綾はまた首を振った。
確かに、覚えるスピードには自信はある。
「でも、耳にするのは『ジングルベル~』のフレーズ、それも大抵メロディだけだもん」
街に流れるメロディなど、いつもは気に留めていない。
たまたま「ジングルベル~」の部分だけが、彼女の耳に入っただけなのだった。
次元は帽子をとって頭をかいた。
彼女の表情がふいに寂しげな色を帯びて見え、触れてはいけない古傷に触れたのではないかと思った。
「ここに座れ」
次元は自分の隣をポンポンと叩いて綾を座らせた。
「一回歌えば、お前は覚えるよな? 記憶力だけは良いんだから」
「『だけ』は余計です」
帽子を深くかぶりなおし、次元はうろ覚えの歌詞を記憶から引きずり出した。
綾はじっと聞いていた。
低い、優しい歌声。
声が止んでも、綾はそのまま微動だにしなかった。
「……覚えたか?」
沈黙が照れくさくなった次元は綾の顔を覗き込んだ。
俯き加減だった綾の目が潤んでいる。
「どうした?」
すると綾は大きく伸びをして笑った。
「素敵な歌声を聴いていたら眠くなっちゃった。まさか次元が催眠術を使えるなんて知らなかったよ! あなたは段々眠くなる〜」
「その手つきを止めろ、鬱陶しい」
「痛っ。あざーっす」
デコピンをくらったところで、ちょうど外から車のエンジン音がした。
「あっ、ルパンが返ってきた! おっかえりなさーい!」
綾は玄関の外へ飛び出していってしまった。