もう少し。
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「で? 綾ちゃんは子供の頃、何になりたかったの?」
興味本位にルパンが訊ねた。
綾は瞳を輝かせる。
「お嫁さん!」
「今は?」
「お嫁さん!」
まぁ、いずれはなるだろうさ。
嬉しそうに答える彼女の綺麗な横顔を見ていると、そう遠い未来の事でもない気がする。
その時、俺は。
笑って見送れるんだろうか。
彼女を、手放す事が出来るのか……?
「次元!」
考えに耽っていた俺の目の前に、綾がニュッと顔を突き出した。
驚いて、持っていたマグカップを落としそうになる。
「わっ。何だ」
「私、お嫁さんって言ったのよ?」
「聞いていたさ」
「じゃあ照れるとかニヤニヤするとかしなさいよ」
「何で俺がニヤニヤしなきゃならねぇんだ」
真顔で綾を見つめると、彼女はグッと言葉を詰まらせた。
彼女の後ろでルパンが俺に『止めとけ』とジェスチャーしている。
これ以上はからかうなということだ。
綾が俺との結婚をほのめかしたのぐらい、分かってる。
だがそれは、遠ざけてきた『現実』がふいに俺の目の前に現れて選択を迫ってきた、みたいな感覚だった。
俺だって考えなかったわけじゃない。
彼女を愛しているし、何よりも大切に思っている。
だからこそだ。
現実は容赦ない。
俺のこれまで、そしてこれからを考えると、彼女を幸せにできないのはわかりきっていた。
『愛さえあれば』なんて思える歳でもない。
それでも彼女を手放せずにいる俺は結局こう言い放った。
「やめとけって。ドレスの裾を踏んづけるのがオチだぜ」
もう少し。
もう少しだけ先延ばしにしたっていいだろ。
むくれる彼女の後ろでは、ルパンが盛大にため息をついていた。
おわり
興味本位にルパンが訊ねた。
綾は瞳を輝かせる。
「お嫁さん!」
「今は?」
「お嫁さん!」
まぁ、いずれはなるだろうさ。
嬉しそうに答える彼女の綺麗な横顔を見ていると、そう遠い未来の事でもない気がする。
その時、俺は。
笑って見送れるんだろうか。
彼女を、手放す事が出来るのか……?
「次元!」
考えに耽っていた俺の目の前に、綾がニュッと顔を突き出した。
驚いて、持っていたマグカップを落としそうになる。
「わっ。何だ」
「私、お嫁さんって言ったのよ?」
「聞いていたさ」
「じゃあ照れるとかニヤニヤするとかしなさいよ」
「何で俺がニヤニヤしなきゃならねぇんだ」
真顔で綾を見つめると、彼女はグッと言葉を詰まらせた。
彼女の後ろでルパンが俺に『止めとけ』とジェスチャーしている。
これ以上はからかうなということだ。
綾が俺との結婚をほのめかしたのぐらい、分かってる。
だがそれは、遠ざけてきた『現実』がふいに俺の目の前に現れて選択を迫ってきた、みたいな感覚だった。
俺だって考えなかったわけじゃない。
彼女を愛しているし、何よりも大切に思っている。
だからこそだ。
現実は容赦ない。
俺のこれまで、そしてこれからを考えると、彼女を幸せにできないのはわかりきっていた。
『愛さえあれば』なんて思える歳でもない。
それでも彼女を手放せずにいる俺は結局こう言い放った。
「やめとけって。ドレスの裾を踏んづけるのがオチだぜ」
もう少し。
もう少しだけ先延ばしにしたっていいだろ。
むくれる彼女の後ろでは、ルパンが盛大にため息をついていた。
おわり