「俺さぁ、子供ん時に何になりたいかとかそういうの、なかったんだよねぇ」

テレビを見ながらルパンがポツリとつぶやいた。

画面には小学生のなりたい職業ランキングが映し出されている。

昔に比べると、スポーツ選手より医師や教師などが増えた気がする。

近頃のガキは現実的だ。

「ガキの頃からジーサマみたいになるんだろうなって思っててさ」

ルパンは話を続ける。

「10代の頃にゃ、オレじーさまみたいになるんだなぁって思った」

ルパンは生まれた時からルパンだ。

そういう宿命を負っている。

「他のもんになりてぇとか思った事あんのか」

「無い」

奴は頭をかいて笑った。

「だぁってよ、俺が教師とか、次元ちゃん想像できる？」

まず詐欺師にしか見えんだろうな。

ところが綾の意見は違った。

「私、ルパンの授業受けてみたかったかも」

話が面白くて、聞いているうちに知識が身に付くんじゃないかというのが彼女の意見である。

「物知りだし、いろんな事教えてくれそう」

「うんうん、手取り足取り腰取り、もう色々教えてあげちゃう！　ムフフフフ……」

「やめろ」

下品な笑い方をして両手をニギニギさせているルパンの顔を掴み、綾からひき離した。

「こんなのに教わったら碌な大人にならんぞ」

「お互い様だろ。自分だって銃と酒くらいしか教えられないくせに」

「まぁな」

碌な大人じゃない俺たちに教わっても碌な大人になれっこねぇって結論に達し、俺たちは大笑いした。