「あーあ、よくやるよ……」

綾が寝室に引き上げると、次元は呆れたように言った。

例の宝飾品の袋を弄んでいたルパンは次元を振り返る。

「何だよ。文句あっか、次元」

「うまく誤魔化しやがって。今回の仕事だって不二子がらみだったクセによ」

「だってよ、不二子ちゃんに『お願いルパ～ン、chu！』なーんておねだりされちゃったら、次元だってやるでしょ」

「やるか！　シナをつくるな、気持ち悪い！」

ルパンはニシシと笑っている。

「そんなんでお前、いつかバチが当たっても知らねぇぞ」

次元はため息をついた。

「ルパ～ン？ 例のダイヤを手に入れてくれたって聞いたから、急いで来たわよ」

夜更けにもかかわらず不二子がやってきた。

「不二子ちゃ～ん！」

ルパンは両手を広げて不二子を出迎える。

ニヤニヤしながら不二子の腰を抱き寄せ、例の袋を持ち上げてみせた。

「これさ。不二子の為に俺、頑張っちゃったのよ～？」

「何を頑張ったって……？」

背後から低い声がした。

ギ、ギ、ギと壊れたロボットのようにぎこちなく振り向くルパンの目に、腰に手をあてて仁王立ちする綾が見えた。

怖い顔でルパンを睨んでいる。

「あら綾。そんな顔してどうしたの？」

何も知らない不二子は首をかしげた。

袋から目当てのダイヤを取り出して満足そうに自分の懐にしまう。

「綾。これはですね……」

ルパンは焦った様子で説明を始めた。

言い訳が通用する筈もないのに、往生際が悪いったらない。

「俺ァ知らね……」

次元はそそくさとその場を離れた。

直後、

「ルパンのばかぁー！」

綾の怒りの一撃がルパンに炸裂した。

さらに、

「綾を泣かせたわね！ 最低！」

不二子の往復ビンタ。

ルパンはあえなくノックアウトした。

教訓。

二兎を追う者は一兎をも得ず。



おわり