「綾ちゃん。好きなの選んで」

ルパンは名前の目の前で袋の中身を開けた。

テーブルいっぱいに宝飾品が広がる。

「ひとつプレゼントするよ」

「いらない」

綾はルパンを一瞥すると、手もとの雑誌に視線を戻してしまった。

「どうせ盗品でしょ。欲しくない」

「喜ぶと思ったのになぁ。『わぁ、嬉しい！　ルパンありがとぉー、Chu！』なんつって！」

「不二子ちゃんにあげたら？」

「綾！」

ルパンが急に真顔になった。

ストンと綾の横にくっついて座る。

「な、なによ」

勢いに圧された綾が少し横にずれて間を空けると、ルパンはまた座りなおして距離をつめてくる。

そして、真剣な顔で綾を見つめた。

「俺は、綾に喜んで欲しいんだ」

「！」

「不二子じゃなくて、綾にさ」

「ルパン……」

綾はさっきのとげとげしい言葉を取り消したいと思った。

ルパンがいつも不二子の我儘を聞いて彼女の欲しいものばかりを狙っていたから、やきもちを焼いていたのだ。

「ごめんなさ……」

「そうだよな。所詮、盗品だもんな……」

綾が謝ろうとしたのを遮って、ルパンがため息交じりに呟いた。

テーブルの上の宝飾品を全て袋に戻して立ち上がる。

「綾が嫌がるのも無理はねぇ。悪かった」

「あ、待って……！」

ルパンが背中を向けると、綾は慌てて立ち上がった。

彼のジャケットの裾を掴んで引き留める。

「なに？」

「あ、えっと……」

ルパンに見つめられ、綾は真っ赤になって口ごもった。

「本当は…… 嫌じゃないっていうか……」

真っ赤な顔でうつむいたまま、上手く言葉が出てこない。

そんな綾の様子に、ルパンは思わず笑みをこぼした。

ポケットから小さな石のついたネックレスを取り出す。

「こっちが本当のプレゼント。綾に似合いそうだと思って、『買った』んだ」

綾は感激して、泣きそうな顔でルパンに抱き着いた。

「ごめんねルパン。大好き～」

「俺もだよ、綾～」

だらしなく相好を崩しながら、ルパンもギュッと綾を抱きしめた。