振られて正解だな
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バタン!
大きな音をたてて玄関のドアが開閉され、怒りを露わにした足音がリビングに向かってくる。
素知らぬフリをしてバーボンを飲んでいた次元だったが、背後から細い腕が伸びてロックグラスを奪った。
「何をするんだ」
振り向くと、綾はグラスの中身を一息に飲み干し、大きなため息をついた。
グラスを叩きつけるようにテーブルにおろす。
新しいグラスを取りにキッチンへ行った次元が戻ってみると、綾は片手にグラス、片手にバーボンのボトルを持ち、手酌で勝手にお代わりをしていた。
「俺の酒だぞ」
次元はボトルを取りあげ、テーブルに戻した。
ずいぶん荒れているな。
そう話しかける前に綾が口を開いた。
「つまらない女だって!」
綾は空になったグラスをダン! とテーブルに置いた。
これ以上飲ませると厄介だ。
酒を取られまいと次元はボトルに手をかけた。
しかし綾は次元の手の上からボトルを掴み、3杯目を注いだ。
「おいっ」
抗議の声をあげて見上げると、綾はひどい有様だった。
髪はボサボサ、頬に涙の跡。
「男か」
「くやしい~」
怒り顔がクシャッと歪んで、泣き顏に取って代わる。
「絶対、後悔させてやるんだから!」
そう言いながら一晩泣いていた彼女だったが。
翌朝。
彼女はばっちりフルメイクをし、きれいな白いワンピースを着て現れた。
ただ朝のゴミ出しに行くだけにもかかわらず、だ。
次の日も、その次の日も、特に用事もないのに綺麗に着飾っている彼女。
「何をしてるんだ、お前」
朝早くから玄関前を掃き掃除していた綾に、次元は声をかけた。
「何って、掃除」
「そんな格好でか」
次元は綾の姿をジロジロながめた。
可愛らしいドット柄のワンピースに、揺れるデザインの小さな石のついたピアスをキラキラさせている。足もとはピンクベージュのヒールの高いサンダル。
「誰が見てるか分からないでしょ。気を抜けないわ」
綾は眉をつり上げ、拳を握りしめた。
「私をフッた事、絶対後悔させてやるんだから!」
成程、そういう事か。
次元は納得して笑みを浮かべた。
「何で笑うのよっ。何かおかしい⁉︎」
「いいや。まぁせいぜい頑張るんだな」
「言われなくたって分かってるわよ!」
綾はひどく気合いの入った顔で掃除の続きを始めた。
親の仇とばかりに力一杯地面をこすっており、掃除というより箒を破壊しているかのようだ。
次元は煙草を燻らせながら、そんな彼女をずっと眺めていた。
つまらない女だって?
彼女をフッた奴はバカだ。
感情をストレートに出し、クルクルと表情を変え。
今は自分を振った相手を後悔させる事に躍起になっている。
こんなに見ていて飽きない彼女を “つまらない女” とは、まったく見る目がない。
「ま、振られて正解だな」
思わず呟いた言葉を、彼女は耳ざとく聞きつけて振り向いた。
「何ですって⁉︎」
箒を振り上げて睨みつける彼女に、次元は慌てて家の中に逃げ込むのだった。
終わり
大きな音をたてて玄関のドアが開閉され、怒りを露わにした足音がリビングに向かってくる。
素知らぬフリをしてバーボンを飲んでいた次元だったが、背後から細い腕が伸びてロックグラスを奪った。
「何をするんだ」
振り向くと、綾はグラスの中身を一息に飲み干し、大きなため息をついた。
グラスを叩きつけるようにテーブルにおろす。
新しいグラスを取りにキッチンへ行った次元が戻ってみると、綾は片手にグラス、片手にバーボンのボトルを持ち、手酌で勝手にお代わりをしていた。
「俺の酒だぞ」
次元はボトルを取りあげ、テーブルに戻した。
ずいぶん荒れているな。
そう話しかける前に綾が口を開いた。
「つまらない女だって!」
綾は空になったグラスをダン! とテーブルに置いた。
これ以上飲ませると厄介だ。
酒を取られまいと次元はボトルに手をかけた。
しかし綾は次元の手の上からボトルを掴み、3杯目を注いだ。
「おいっ」
抗議の声をあげて見上げると、綾はひどい有様だった。
髪はボサボサ、頬に涙の跡。
「男か」
「くやしい~」
怒り顔がクシャッと歪んで、泣き顏に取って代わる。
「絶対、後悔させてやるんだから!」
そう言いながら一晩泣いていた彼女だったが。
翌朝。
彼女はばっちりフルメイクをし、きれいな白いワンピースを着て現れた。
ただ朝のゴミ出しに行くだけにもかかわらず、だ。
次の日も、その次の日も、特に用事もないのに綺麗に着飾っている彼女。
「何をしてるんだ、お前」
朝早くから玄関前を掃き掃除していた綾に、次元は声をかけた。
「何って、掃除」
「そんな格好でか」
次元は綾の姿をジロジロながめた。
可愛らしいドット柄のワンピースに、揺れるデザインの小さな石のついたピアスをキラキラさせている。足もとはピンクベージュのヒールの高いサンダル。
「誰が見てるか分からないでしょ。気を抜けないわ」
綾は眉をつり上げ、拳を握りしめた。
「私をフッた事、絶対後悔させてやるんだから!」
成程、そういう事か。
次元は納得して笑みを浮かべた。
「何で笑うのよっ。何かおかしい⁉︎」
「いいや。まぁせいぜい頑張るんだな」
「言われなくたって分かってるわよ!」
綾はひどく気合いの入った顔で掃除の続きを始めた。
親の仇とばかりに力一杯地面をこすっており、掃除というより箒を破壊しているかのようだ。
次元は煙草を燻らせながら、そんな彼女をずっと眺めていた。
つまらない女だって?
彼女をフッた奴はバカだ。
感情をストレートに出し、クルクルと表情を変え。
今は自分を振った相手を後悔させる事に躍起になっている。
こんなに見ていて飽きない彼女を “つまらない女” とは、まったく見る目がない。
「ま、振られて正解だな」
思わず呟いた言葉を、彼女は耳ざとく聞きつけて振り向いた。
「何ですって⁉︎」
箒を振り上げて睨みつける彼女に、次元は慌てて家の中に逃げ込むのだった。
終わり