港は静かだった。

次元はコンテナの間を歩きながら男を探した。

次元の後から、綾はサングラスをかけて大下走りでついてくる。

「やめろ」

次元はサングラスも取り上げた。

男の背中を確認し、次元と綾はコンテナの陰に身をひそめる。

耳をすますと、小さな靴音が聞こえてきた。

ハイヒールの音だ。

靴音が止まると、男女の話し声が聞こえてきた。

「取引相手はやっぱり女か」

次元は苦々しそうに呟いた。

「そのようね」

二人は顔を見合わせ、次の瞬間、そこから同時に飛び出した。

男の目の前に立ちはだかる。

「そこまでよ、ルパン！　不二子ちゃんも動かないで！」

「綾ちゃん。次元まで……どうしてここに？」

男―――
ルパンが呟いた。

不二子は訳がわからないといった様子で、ポカンとしている。

次元はルパンにマグナムを突きつけた。

「そのポケットに入ってるダイヤをこっちに渡してもらおうか、ルパン。ネタはあがってんだ」

「い、一体なんの事かなぁ……？」

ルパンは焦った様子でそっぽを向いた。

「しらばっくれるつもり？　私たちが苦労して盗んだダイヤを不二子ちゃんにプレゼントしようとしてたのはマルッとお見通し！　先刻承知の承知之助よ！」

「先刻承知って……喋り方が五エ門みたいだぞ、綾」

次元の呟きを、綾は聞こえなかったか無視したかのどちらかだった。

ルパンに歩み寄って、ポケットから大きなダイヤを取り出す。

「よし次元、撤収！」

「あいよ！」

2人はハイタッチを交わすと、ルパンと不二子を置き去りにして走り去った。

ダイヤのないルパンなんてホームランの出ない野球、風刺のない漫画、由美かおるの入浴シーンのない水戸黄門、クリープのないコーヒーである。

「ルパンの嘘つき！」

と不二子に平手打ちをくらい、あっさり振られたのはお約束。



終わり