俺たちは研究データをいただきに、とある研究施設へと忍び込んでいた。

このデータは不二子も狙っていたから、俺たちは少々焦っている。

先を越されるわけにはいかない。

「とりあえず手分けしようぜ。その方が早い」

そう提案すると、仲間たちは散り散りになり、あっという間に姿を消した。

綾も小さくうなずいて駆け出して行こうとする。

俺は慌ててその手を掴んで引きとめた。

「おっと、ダメダメ。綾はまだ新米なんだから俺と一緒ね」

まぁ、片時も離したくないってのが本音だけれど。　

彼女を連れて、目をつけておいた部屋に忍び込む。

鉄製の棚に段ボールの書類箱が隙間なく並べられている。

この研究施設には同じような倉庫がいくつもあるから、不二子より先にデータを見つけるには手分けするしかなかったのだ。

「誰もいないね。不用心だなぁ」

倉庫に足を踏み入れて、綾が小さく呟く。

「まぁ、その方がこっちは助かる」

俺は懐中電灯で段ボールに貼られたラベルを確認しながら、歩き始めた。

綾がすぐ真後ろからついてくる。

静かな室内に、コツコツと俺たちの靴音だけが響く。