皇女の部屋を探し続けて何とか目当ての宝石を見つけたルパン達は、急いでレセプション会場に向かった。

ホール係に変装して会場に潜り込む。

正面の一段高くなった場所に座った綾は、そつなくオリヴィアを演じているようだった。

誰1人気付いたものはいないようだ。

「それではここで、オリヴィア皇女にお言葉を頂戴したいと思います」

「いっ⁉︎」

慌てたルパン達だったが、綾が想定していたかのようにサッと立ち上がるのを見て、大人しく様子を見守る事にする。

『それでは皇女、お願いたします』

XX国の言葉で話されたその言葉は綾には分からない。

しかし綾は笑ってマイクを握った。

「私ハ今日の為に、日本語を勉強してキマシタ。ここでハ決シテ、母国語を話さないと、ソウ決めていまシタ……」

わざとたどたどしく、ゆっくりと話す綾。

その場にいた誰もが皇女に好感を持ったのは、拍手の音で明白だった。

綾は少しはにかんだような笑顔で拍手に応えている。

「それでは、お約束通り皇女が歌を披露してくださいます！」

「はっ⁉︎」

司会者の言葉に、綾は固まった。

ルパンは頭を抱える。

「そうだった……皇女は歌が得意なんだ。海外でのレセプションでも必ず披露されてる！」

「どーすんだルパン！」

二人はそろって綾を見つめた。

綾ははじめこそ動揺した様子で目が泳いでいたが、すぐに持ち直してマイクを握り直した。

「女ごころの未練を編んだ　あなたのセーターなみだ色　面影ひとりしのび酒　飲めば泣けます雪の夜……聞いて下さい」

勝手にナレーションまでつけて、綾は歌い始めた。

その場にいた誰もが固まり、耳を疑った。

ルパン達は笑いをこらえるのに必死だった。

「ククッ……おい、いーのかよ」

「いーんでない？　皆喜んでるし」

「こぶし回っちゃってるぞ」

「アハハ、上手いねぇ、綾ちゃん」

二人はのん気に綾の歌を聴き続けた。