すまん。
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診察室の扉があき、俺は我に返った。
白衣の裾をひるがえしながらリンダが難しい顔をして出てくる。
「どうなんだ、先生」
「良くないわね」
リンダは腕組みをしてため息をついた。
「血管繋いで穴をふさいで……女の子だからなるべく傷が目立たないようにと思って、苦労したわ。あなた達、いったい何をしていたの?」
探るような視線を向けるリンダ。
俺は辺りを見回し、それからさも重要な秘密を漏らすかのように小声でささやいた。
「実は彼女は、命を狙われている某国の姫君なんだ」
「なら私は大統領よ」
バカらしい、とでも言いたげにリンダは眉根を寄せた。
嘘は言ってない。彼女はお姫様だ。
ルパンにとっては。
「それで、いつ動けるようになる?」
「それはまだ。まず輸血が必要だけど、AB型のRhマイナスは貴重だから手に入れるのが大変よ」
「それは俺がなんとかしよう」
近くの街の大病院からちょいと拝借すれば良いだろう。
「他には?」
「他にはって……あなたね、それが一番やっかいなのよ? ABマイナスの血を探すのがどれだけむずかしいか!」
「心配ご無用!」
背後から声が聞こえた。
振り返ると、ルパンがズボンのポケットに両手を突っ込んで入り口に立っていた。
こいつ、本当に一時間で来やがった。
「あなた誰?」
リンダが訝しげに訊ねた。
「綾ちゃんのカレシですよ?」
ルパンは歩み寄ってリンダの手を取った。
「俺、ABマイナスなんだ」
嫌な予感がした。
「まさか、てめぇの血を輸血しようってんじゃないだろうな」
「まさかってなんだよ。Rhマイナスなんて、そうそうあるもんじゃないんだぜ?」
「お前なぁ! 綾の性格が変わっちまったらどーすんだよっ」
「なぁに、ちっとは賢くなれっかもよ? なんせ俺様、IQ300の天才だから」
ムフムフと笑うルパンだったが、診察室に通されると笑みが消えた。
青白い顔でベッドに横たわる綾に歩み寄り、手の甲でそっと彼女の頬に触れる。
「綾……」
ルパンが泣きそうな表情を浮かべたのを見て、俺は少なからず驚いた。
あんな顔、今まで見たことがなかった。
「ルパン……」
かける言葉も見つからずに黙りこむと、ルパンはコロッと表情を変えて綾の頬を両手で包みこんだ。
笑みを浮かべて綾の額に自分の額をくっつける。
「さぁ綾ちゃん。俺様の愛をたーっぷり注いであげるからね」
「気色悪い言い方をするなっ!」
リンダは綾の隣にルパンを寝かせると、二人をチューブで繋いだ。
真っ赤な血がチューブを伝わって綾の体に入っていく。
なんとなく赤い糸なんてものが頭をよぎり、モヤモヤした気分になった。
「おめぇの血じゃ綾がおかしくなっちまう。俺の血じゃダメか?」
「型があわないでしょーが。それに、俺がヤキモチ焼いちゃうからダメだね。綾ちゃんの体の中で彼女とお前の血がひとつになるなんて、あーもう、想像しただけで腹が立つ」
ヤキモチ……?
ヤキモチなのか?
ルパンの言葉に愕然とする。
彼女とルパンの血がひとつに混じり合う事に嫉妬してるっていうのか。
じっと綾を見つめた。
陶器のように真っ白な皮膚のすぐ下で、奴の血が全身を駆け巡っていく。
他を寄せ付けず、ルパンの血だけを受け入れて。
それが絆であるかのように。
所有の証であるかのように。
俺は彼女に背を向けた。
「……どったの、次元?」
「なんでもねぇ……てめぇがカラカラになる位たっぷりわけてやれ」
「言われなくてもわかってらぁ」
そのまま振り返らずに部屋を出る。
背後でバタンと扉が閉まり、俺はリビングに一人立ち尽くした。
終わり
白衣の裾をひるがえしながらリンダが難しい顔をして出てくる。
「どうなんだ、先生」
「良くないわね」
リンダは腕組みをしてため息をついた。
「血管繋いで穴をふさいで……女の子だからなるべく傷が目立たないようにと思って、苦労したわ。あなた達、いったい何をしていたの?」
探るような視線を向けるリンダ。
俺は辺りを見回し、それからさも重要な秘密を漏らすかのように小声でささやいた。
「実は彼女は、命を狙われている某国の姫君なんだ」
「なら私は大統領よ」
バカらしい、とでも言いたげにリンダは眉根を寄せた。
嘘は言ってない。彼女はお姫様だ。
ルパンにとっては。
「それで、いつ動けるようになる?」
「それはまだ。まず輸血が必要だけど、AB型のRhマイナスは貴重だから手に入れるのが大変よ」
「それは俺がなんとかしよう」
近くの街の大病院からちょいと拝借すれば良いだろう。
「他には?」
「他にはって……あなたね、それが一番やっかいなのよ? ABマイナスの血を探すのがどれだけむずかしいか!」
「心配ご無用!」
背後から声が聞こえた。
振り返ると、ルパンがズボンのポケットに両手を突っ込んで入り口に立っていた。
こいつ、本当に一時間で来やがった。
「あなた誰?」
リンダが訝しげに訊ねた。
「綾ちゃんのカレシですよ?」
ルパンは歩み寄ってリンダの手を取った。
「俺、ABマイナスなんだ」
嫌な予感がした。
「まさか、てめぇの血を輸血しようってんじゃないだろうな」
「まさかってなんだよ。Rhマイナスなんて、そうそうあるもんじゃないんだぜ?」
「お前なぁ! 綾の性格が変わっちまったらどーすんだよっ」
「なぁに、ちっとは賢くなれっかもよ? なんせ俺様、IQ300の天才だから」
ムフムフと笑うルパンだったが、診察室に通されると笑みが消えた。
青白い顔でベッドに横たわる綾に歩み寄り、手の甲でそっと彼女の頬に触れる。
「綾……」
ルパンが泣きそうな表情を浮かべたのを見て、俺は少なからず驚いた。
あんな顔、今まで見たことがなかった。
「ルパン……」
かける言葉も見つからずに黙りこむと、ルパンはコロッと表情を変えて綾の頬を両手で包みこんだ。
笑みを浮かべて綾の額に自分の額をくっつける。
「さぁ綾ちゃん。俺様の愛をたーっぷり注いであげるからね」
「気色悪い言い方をするなっ!」
リンダは綾の隣にルパンを寝かせると、二人をチューブで繋いだ。
真っ赤な血がチューブを伝わって綾の体に入っていく。
なんとなく赤い糸なんてものが頭をよぎり、モヤモヤした気分になった。
「おめぇの血じゃ綾がおかしくなっちまう。俺の血じゃダメか?」
「型があわないでしょーが。それに、俺がヤキモチ焼いちゃうからダメだね。綾ちゃんの体の中で彼女とお前の血がひとつになるなんて、あーもう、想像しただけで腹が立つ」
ヤキモチ……?
ヤキモチなのか?
ルパンの言葉に愕然とする。
彼女とルパンの血がひとつに混じり合う事に嫉妬してるっていうのか。
じっと綾を見つめた。
陶器のように真っ白な皮膚のすぐ下で、奴の血が全身を駆け巡っていく。
他を寄せ付けず、ルパンの血だけを受け入れて。
それが絆であるかのように。
所有の証であるかのように。
俺は彼女に背を向けた。
「……どったの、次元?」
「なんでもねぇ……てめぇがカラカラになる位たっぷりわけてやれ」
「言われなくてもわかってらぁ」
そのまま振り返らずに部屋を出る。
背後でバタンと扉が閉まり、俺はリビングに一人立ち尽くした。
終わり