悪ィ。
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ポツン、と。
空から大粒のしずくが落ちたと思えば、次の瞬間、滝のような大雨が俺たちを襲った。
「走れ、綾っ」
俺達はつないだ手をはなし、その手を顔の前にかざしながら、ゆるく傾斜している道を走り出す。
遠雷が低く聞こえてきたかと思えば、傾斜がきつくなるにつれ大きな激しい雷鳴となって耳に突き刺さる。
目の前が真っ白になるくらいの豪雨に、俺は時々綾を振り返りつつ走った。
彼女は大雨にうたれ、小さな体がよりいっそう小さく見えた。
「あっ!」
せり出した木の根に足を取られ、綾の体が宙に投げ出された。
とっさに手を伸ばしたが間に合わず、綾は茂みに覆いかぶさるように転倒した。
「綾っ!」
腕を引っ張って助け起こし、息をのんだ。
直径1センチあまりの枝が彼女の右太ももに突き刺さっていた。
おそらく枝の先端に向かい、まっすぐ倒れ込んだのだろう。
「綾、大丈夫か」
「……っ。ご、ごめんなさい。大丈夫」
「大丈夫って、お前……」
訊いといてこの返答もナンだが、泣きも喚きもせずに俺を見上げた彼女の姿に、胸が締め付けられた。
綾は唇を噛みしめて枝を握った。
「あ、おいっ!」
止める間もなく、綾は太ももから一気に枝を引き抜いた。
容赦なく血が流れ落ちる。
「抜いちゃいけねぇんだ、バカっ!」
ネクタイを外し、傷口より上をきつく縛った。
「ありがとう」
小さな声が聞こえて顔を上げると、顔はひきつり、見開かれた大きな瞳は真っ赤になっている。
雨のせいで泣いているのも分からない。
だが、ここでいつまでも立ち止ってもいられなかった。
強い風が脆くなった木をなぎ倒し、倒れてくるかもしれない。
雷鳴の感覚も短くなっている。
「あと少しで山を下りる」
綾の腕を掴んで無理やり立たせ、顔を見た。
彼女は真っ白な顔で俺を見ていた。
唇が震えている。
「怖い……痛い……」
消え入りそうな声だった。
「あぁ、わかってる。背中に負ぶされ」
「え?」
「負ぶされってんだ」
綾の前にしゃがみ込んだ。
だが綾は首をふり、強い意志をもった眼差しで俺を見た。
「自分で歩く」
「無理すんな。お前1人ぐらい……」
「平気。さ、早く」
綾が俺の腕を掴んで引っ張る、その手が震えているのが伝わってくる。
きっと精一杯の強がりなんだろう。
ルパンと接している時は、何もできないお姫様状態だったのに。
俺に気を遣わせないつもりか……
お前ってやつは……。
「わかった。行くぞ」
腕をグイッと引っ張ると、綾は泣きそうな顔をしながらも頷いた。
空から大粒のしずくが落ちたと思えば、次の瞬間、滝のような大雨が俺たちを襲った。
「走れ、綾っ」
俺達はつないだ手をはなし、その手を顔の前にかざしながら、ゆるく傾斜している道を走り出す。
遠雷が低く聞こえてきたかと思えば、傾斜がきつくなるにつれ大きな激しい雷鳴となって耳に突き刺さる。
目の前が真っ白になるくらいの豪雨に、俺は時々綾を振り返りつつ走った。
彼女は大雨にうたれ、小さな体がよりいっそう小さく見えた。
「あっ!」
せり出した木の根に足を取られ、綾の体が宙に投げ出された。
とっさに手を伸ばしたが間に合わず、綾は茂みに覆いかぶさるように転倒した。
「綾っ!」
腕を引っ張って助け起こし、息をのんだ。
直径1センチあまりの枝が彼女の右太ももに突き刺さっていた。
おそらく枝の先端に向かい、まっすぐ倒れ込んだのだろう。
「綾、大丈夫か」
「……っ。ご、ごめんなさい。大丈夫」
「大丈夫って、お前……」
訊いといてこの返答もナンだが、泣きも喚きもせずに俺を見上げた彼女の姿に、胸が締め付けられた。
綾は唇を噛みしめて枝を握った。
「あ、おいっ!」
止める間もなく、綾は太ももから一気に枝を引き抜いた。
容赦なく血が流れ落ちる。
「抜いちゃいけねぇんだ、バカっ!」
ネクタイを外し、傷口より上をきつく縛った。
「ありがとう」
小さな声が聞こえて顔を上げると、顔はひきつり、見開かれた大きな瞳は真っ赤になっている。
雨のせいで泣いているのも分からない。
だが、ここでいつまでも立ち止ってもいられなかった。
強い風が脆くなった木をなぎ倒し、倒れてくるかもしれない。
雷鳴の感覚も短くなっている。
「あと少しで山を下りる」
綾の腕を掴んで無理やり立たせ、顔を見た。
彼女は真っ白な顔で俺を見ていた。
唇が震えている。
「怖い……痛い……」
消え入りそうな声だった。
「あぁ、わかってる。背中に負ぶされ」
「え?」
「負ぶされってんだ」
綾の前にしゃがみ込んだ。
だが綾は首をふり、強い意志をもった眼差しで俺を見た。
「自分で歩く」
「無理すんな。お前1人ぐらい……」
「平気。さ、早く」
綾が俺の腕を掴んで引っ張る、その手が震えているのが伝わってくる。
きっと精一杯の強がりなんだろう。
ルパンと接している時は、何もできないお姫様状態だったのに。
俺に気を遣わせないつもりか……
お前ってやつは……。
「わかった。行くぞ」
腕をグイッと引っ張ると、綾は泣きそうな顔をしながらも頷いた。