Late at night
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2人が帰ってくると、アジトには明かりがついていた。
「綾、無事か!?」
玄関をあがるなり、すぐさま五エ門が駆け寄ってきた。
彼は青ざめた顔で綾に飛びつき、顔やら腕やら背中やら、とにかくあちこちを眺めまわした。
そして怪我がないのを確認すると、ようやく安堵のため息をつく。
綾は笑った。
『大丈夫だよ』と言おうとしたが、それよりも早く、五エ門は綾の脇をすり抜けて次元に詰め寄った。
「貴様! よくも綾を!」
五エ門が眉間に怒りを走らせて次元の胸ぐらを掴んだ。凄まじい殺気が立ち上る。
「五エ門!」
綾の制止も彼の耳には届かぬ様子で、そのまま次元をドアまで押しやる。
ダンッ。鈍い音がした。
次元が僅かに顔を顰める。
「襲われるのが分かっていながら、何故綾を連れまわした! 何のためにルパンが電話したと思っている! 綾が怪我でもしたらどうする!」
「だからだ」
次元は乱暴に五エ門の手を振り払った。
不機嫌な顔で乱れた服を整える彼を、五エ門は険しい顔で、綾は心配そうに眉間に皺を寄せて見つめている。
「考えなかったわけじゃない。こんな殺伐とした世界とは無縁の場所で、普通の暮らしをした方が良いに決まっている」
「次元!」
綾が抗議の声を上げた。
次元は片手を上げて彼女を黙らせる。
彼女の手を掴んで自分に引き寄せ、五エ門の方に向き直らせた。
「次元?」
振り向こうとする綾の顔を、次元は両手で彼女の耳をふさぐようにしてロックした。
顔を動かせなくなった綾は次元の意図が分からず、不安と困惑の入り混じった顔で五エ門を見つめた。
五エ門もまた、次元の行動が理解できないといった顔で次元を見つめ返している。
次元はそのまま、五エ門に言った。
「こいつはな、あの刺青の連中を突き止めるまではこのまんまだ。誰が止めたって聞きやしねぇ。俺たちが介入したとしても、カタがつくまでこいつが危険なことに変わりはないだろう。俺たちを狙う奴がいたとしてもそうだ。そいつらの相手をするためにこいつをアジトに残して、その間に狙われたらどうする」
「そのために仲間がいるのではないのか? 今夜とて、拙者が何のために早く戻ってきたと思っているんだ」
「気持ちはありがたいんだがな、五エ門。遠慮さしてもらうぜ」
二人の会話は、耳をふさがれた綾にはくぐもっていてよく聞き取れない。
「信用できぬというのか」
「そうじゃねぇよ。俺は……俺のあずかり知らぬ所で、手の届かない所で、勝手にこいつを傷つけられちゃあ、たまんねぇんだよ」
うめくように次元は言った。
口にしたことでより鮮明になった不安を堪えるように、手を彼女の耳に押し付ける。
両手に伝わる彼女の体温がたまらなく愛おしい。
「絶対に安全だと言い切れるのは、俺の側だけだ」
五エ門の表情が、はじめは険しく、一瞬キョトンとし、最終的には無表情になるのを綾は見ていた。
会話が止み、静かになった。
次元が綾の耳から手を放す。
五エ門は綾に歩み寄り、ため息とともにポンとその肩に手を置いた。
「良かったな」
それだけ言って、五エ門は自室に引き上げていった。
「え、何が……?」
綾はキョトンとして次元を振り返った。
間近に立っていたせいで、いつもは見ることのない彼の表情を覗き込む格好になる。
「俺に聞くな。こっちを見るな」
大きな手のひらを向けて綾を制止する次元。
もう片方の手で覆った顔は、珍しく赤くなっているのだった。
おわり
「綾、無事か!?」
玄関をあがるなり、すぐさま五エ門が駆け寄ってきた。
彼は青ざめた顔で綾に飛びつき、顔やら腕やら背中やら、とにかくあちこちを眺めまわした。
そして怪我がないのを確認すると、ようやく安堵のため息をつく。
綾は笑った。
『大丈夫だよ』と言おうとしたが、それよりも早く、五エ門は綾の脇をすり抜けて次元に詰め寄った。
「貴様! よくも綾を!」
五エ門が眉間に怒りを走らせて次元の胸ぐらを掴んだ。凄まじい殺気が立ち上る。
「五エ門!」
綾の制止も彼の耳には届かぬ様子で、そのまま次元をドアまで押しやる。
ダンッ。鈍い音がした。
次元が僅かに顔を顰める。
「襲われるのが分かっていながら、何故綾を連れまわした! 何のためにルパンが電話したと思っている! 綾が怪我でもしたらどうする!」
「だからだ」
次元は乱暴に五エ門の手を振り払った。
不機嫌な顔で乱れた服を整える彼を、五エ門は険しい顔で、綾は心配そうに眉間に皺を寄せて見つめている。
「考えなかったわけじゃない。こんな殺伐とした世界とは無縁の場所で、普通の暮らしをした方が良いに決まっている」
「次元!」
綾が抗議の声を上げた。
次元は片手を上げて彼女を黙らせる。
彼女の手を掴んで自分に引き寄せ、五エ門の方に向き直らせた。
「次元?」
振り向こうとする綾の顔を、次元は両手で彼女の耳をふさぐようにしてロックした。
顔を動かせなくなった綾は次元の意図が分からず、不安と困惑の入り混じった顔で五エ門を見つめた。
五エ門もまた、次元の行動が理解できないといった顔で次元を見つめ返している。
次元はそのまま、五エ門に言った。
「こいつはな、あの刺青の連中を突き止めるまではこのまんまだ。誰が止めたって聞きやしねぇ。俺たちが介入したとしても、カタがつくまでこいつが危険なことに変わりはないだろう。俺たちを狙う奴がいたとしてもそうだ。そいつらの相手をするためにこいつをアジトに残して、その間に狙われたらどうする」
「そのために仲間がいるのではないのか? 今夜とて、拙者が何のために早く戻ってきたと思っているんだ」
「気持ちはありがたいんだがな、五エ門。遠慮さしてもらうぜ」
二人の会話は、耳をふさがれた綾にはくぐもっていてよく聞き取れない。
「信用できぬというのか」
「そうじゃねぇよ。俺は……俺のあずかり知らぬ所で、手の届かない所で、勝手にこいつを傷つけられちゃあ、たまんねぇんだよ」
うめくように次元は言った。
口にしたことでより鮮明になった不安を堪えるように、手を彼女の耳に押し付ける。
両手に伝わる彼女の体温がたまらなく愛おしい。
「絶対に安全だと言い切れるのは、俺の側だけだ」
五エ門の表情が、はじめは険しく、一瞬キョトンとし、最終的には無表情になるのを綾は見ていた。
会話が止み、静かになった。
次元が綾の耳から手を放す。
五エ門は綾に歩み寄り、ため息とともにポンとその肩に手を置いた。
「良かったな」
それだけ言って、五エ門は自室に引き上げていった。
「え、何が……?」
綾はキョトンとして次元を振り返った。
間近に立っていたせいで、いつもは見ることのない彼の表情を覗き込む格好になる。
「俺に聞くな。こっちを見るな」
大きな手のひらを向けて綾を制止する次元。
もう片方の手で覆った顔は、珍しく赤くなっているのだった。
おわり