Late at night
name change
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『今に分かる』などと勿体ぶった言い方をした次元だったが、その後も特に何もなかった。
美味しいお酒とたわいもない会話を楽しみ、店を出る。
綾は肩透かしを食らった気分だった。
「不満そうだな」
ふいに次元に言い当てられて、綾はうまく切り返せずに口ごもった。
「不満なんて……」
「顔に書いてあるぜ。何も分からなかった、ってな」
「…………」
黙り込んだ綾の手を次元が掴んだ。
綾は足を止めて次元を振り返る。
「その角を曲がれば嫌でも分かるさ。だが、その前に……」
次元は掴んでいた綾の腕を引いた。
バランスを崩した彼女はそのまま次元の身体に倒れこむ。
背中に回った腕が彼女を引き寄せ、低い声がそっと囁いた。
「絶対に俺から離れるな。いいな?」
反射的に頷いたものの、角を曲がった先で待ち受けていた人影に綾の心臓はドクンと跳ねた。
薄暗い路地裏で、明らかに敵意───否、殺意を持った何者かが次元たちを取り囲んだ。
大通りからわずかに差し込む明かりに鈍く反射した彼らの凶器。
綾は息を飲んだ。
次元がジャケットを跳ね上げて銃を抜いた。
綾は彼の腰に腕を回した。
直後、乱闘が始まった。
次元の腰にしがみついた綾は顔を上げることもできなかった。
ただ必死で彼の動きに合わせ足を動かした。
乱れた足音と怒号、銃声。うめき声。地面に倒れる音。
時おり、次元が綾の頭を押さえたり抱き寄せたりした。
耳元で何かが空を切る音がして悲鳴をあげそうになる。
しかしそれもあっという間の出来事だった。
「終わったぜ、綾」
ポンと背中をたたかれて我に返った。
身体を起こしてみると、もう辺りはしんと静まり返っている。
襲ってきた連中は皆退却したようで、路地裏には次元と綾しかいなかった。
「帰るぞ。そろそろ五エ門も戻ってる頃だろう」
次元は綾の顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
「うん。だ、大丈夫……」
「怖かったか?」
綾は顔を上げて次元を見た。
そして「ううん」と首を振る。
「次元がいれば大丈夫って、分かってるから」
ニコッと笑った。
次元はそうか、とだけ呟いた。
目深に被った帽子の下で、少しホッとしたような顔をして。
美味しいお酒とたわいもない会話を楽しみ、店を出る。
綾は肩透かしを食らった気分だった。
「不満そうだな」
ふいに次元に言い当てられて、綾はうまく切り返せずに口ごもった。
「不満なんて……」
「顔に書いてあるぜ。何も分からなかった、ってな」
「…………」
黙り込んだ綾の手を次元が掴んだ。
綾は足を止めて次元を振り返る。
「その角を曲がれば嫌でも分かるさ。だが、その前に……」
次元は掴んでいた綾の腕を引いた。
バランスを崩した彼女はそのまま次元の身体に倒れこむ。
背中に回った腕が彼女を引き寄せ、低い声がそっと囁いた。
「絶対に俺から離れるな。いいな?」
反射的に頷いたものの、角を曲がった先で待ち受けていた人影に綾の心臓はドクンと跳ねた。
薄暗い路地裏で、明らかに敵意───否、殺意を持った何者かが次元たちを取り囲んだ。
大通りからわずかに差し込む明かりに鈍く反射した彼らの凶器。
綾は息を飲んだ。
次元がジャケットを跳ね上げて銃を抜いた。
綾は彼の腰に腕を回した。
直後、乱闘が始まった。
次元の腰にしがみついた綾は顔を上げることもできなかった。
ただ必死で彼の動きに合わせ足を動かした。
乱れた足音と怒号、銃声。うめき声。地面に倒れる音。
時おり、次元が綾の頭を押さえたり抱き寄せたりした。
耳元で何かが空を切る音がして悲鳴をあげそうになる。
しかしそれもあっという間の出来事だった。
「終わったぜ、綾」
ポンと背中をたたかれて我に返った。
身体を起こしてみると、もう辺りはしんと静まり返っている。
襲ってきた連中は皆退却したようで、路地裏には次元と綾しかいなかった。
「帰るぞ。そろそろ五エ門も戻ってる頃だろう」
次元は綾の顔を覗き込んだ。
「大丈夫か?」
「うん。だ、大丈夫……」
「怖かったか?」
綾は顔を上げて次元を見た。
そして「ううん」と首を振る。
「次元がいれば大丈夫って、分かってるから」
ニコッと笑った。
次元はそうか、とだけ呟いた。
目深に被った帽子の下で、少しホッとしたような顔をして。