Late at night
name change
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次元の馴染みの店だというその小さなバーは、猥雑な店が並ぶ、少しばかり夜道が危険な界隈にあった。
「ドライ・マティーニを、シェイクで」
「やめろ綾。ジェームズ・ボンドのつもりか」
「あはは、言ってみたかっただけ。甘くない軽めのものをお願いします」
促されるまま背の高いスツールに腰を下ろし、綾は店内を見回した。
客はまばらで、当然いると思っていたルパンの姿はなかった。
「ルパンは?」
「なんだって?」
次元は綾を見つめ、したり顔で言った。
「ははーん、さてはさっきの電話だな。悪いが奴は来ないぜ。俺だけじゃ不満か?」
「そんなワケないでしょ。分かってて訊くなんて、タチわるーい」
綾は口をとがらせた。
目の前に置かれたグラスに口をつける。
「ん、美味しい」
「そりゃあ良かった」
「……ちっとも良くない」
「笑ったり拗ねたり、忙しいことだな」次元は苦笑した。
「それで、何が良くないんだ」
「だって、なんか変」
綾が次元に向き直ると、彼もグラスを置いてこちらを見た。
視線がぶつかる。
「これはルパンの電話は関係なくて、本当にあなたの個人的な『お誘い』なの?」
お誘いにしては急だったし、やや強引だったと、綾は思う。
「いくら気を許したとはいえ、こんな夜更けに、あなたは気まぐれでこんな所に私を連れてくる人じゃない。何かあるんでしょ」
次元は黙って視線を外し、ゆっくりとグラスを煽った。
綾はじっと次の言葉を待った。
「俺は、お前を1人にしたくなかっただけだ」
次元はぽつりと言った。
綾には訳が分からなかった。
いつも私を置いて勝手に出かけてしまう人が、今さら何を言っているのだろう。
綾が黙っていると、次元はチラリと彼女を見やって言った。
「今に分かる」
それ以上はいくら尋ねても次元は答えず、ただウイスキーの杯を重ねただけだった。
「ドライ・マティーニを、シェイクで」
「やめろ綾。ジェームズ・ボンドのつもりか」
「あはは、言ってみたかっただけ。甘くない軽めのものをお願いします」
促されるまま背の高いスツールに腰を下ろし、綾は店内を見回した。
客はまばらで、当然いると思っていたルパンの姿はなかった。
「ルパンは?」
「なんだって?」
次元は綾を見つめ、したり顔で言った。
「ははーん、さてはさっきの電話だな。悪いが奴は来ないぜ。俺だけじゃ不満か?」
「そんなワケないでしょ。分かってて訊くなんて、タチわるーい」
綾は口をとがらせた。
目の前に置かれたグラスに口をつける。
「ん、美味しい」
「そりゃあ良かった」
「……ちっとも良くない」
「笑ったり拗ねたり、忙しいことだな」次元は苦笑した。
「それで、何が良くないんだ」
「だって、なんか変」
綾が次元に向き直ると、彼もグラスを置いてこちらを見た。
視線がぶつかる。
「これはルパンの電話は関係なくて、本当にあなたの個人的な『お誘い』なの?」
お誘いにしては急だったし、やや強引だったと、綾は思う。
「いくら気を許したとはいえ、こんな夜更けに、あなたは気まぐれでこんな所に私を連れてくる人じゃない。何かあるんでしょ」
次元は黙って視線を外し、ゆっくりとグラスを煽った。
綾はじっと次の言葉を待った。
「俺は、お前を1人にしたくなかっただけだ」
次元はぽつりと言った。
綾には訳が分からなかった。
いつも私を置いて勝手に出かけてしまう人が、今さら何を言っているのだろう。
綾が黙っていると、次元はチラリと彼女を見やって言った。
「今に分かる」
それ以上はいくら尋ねても次元は答えず、ただウイスキーの杯を重ねただけだった。