Stay Home
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「うわっ、何コレ?」
リビングの入口でルパンは足を止めた。
普通、リビングにある物といえばテーブルとかソファとか、そういうものだと思う。
足を踏み入れるのを躊躇うような物は、普通のご家庭にはない。
普通のご家庭じゃなくても無論、このアジトにだってない。
……はずだった。
「あ、ルパン。おかえり~!」
という、いつもならすぐに飛んでくるはずの綾の声もない。
なぜなら彼女は今、テント設営の真っ最中。
ルパンの帰宅など気づいてもいないのである。
「なんだってこんな部屋の中に……」
リビングの入口に突っ立ったまま、ルパンはしばし綾のテント張りの様子を眺めた。
彼女のクルクルとした髪がテントの陰にフワフワと見え隠れする。
少し調子はずれなハミングに髪が踊っているようだ。
あまりに楽しげなその光景に、ルパンは笑みを浮かべた。
彼女がキャンプに行きたがっていたのは知っていた。
けれど、“STAY HOME”が合言葉の今、キャンプどころではなかった。
いかにルパン一味といえど、COVID-19は普通に怖い。
『手洗い・うがい』
『外出時はマスク着用』
などと毛筆で書かれた張り紙がアジトのあちこちに貼られているほどだ。
せめて庭で、と提案したいところだったが、あいにく現在滞在中のアジトはマンションだ。
バルコニーは狭く、次元のミニトマトとハーブの鉢植えをどかしても、キャンプどころかバーベキューすらできない。
『外でできないなら、家の中で』
『せめて気分だけでも楽しもう』
そういう結論に至ったのだろう。
「考えたねぇ」
ルパンは思わず苦笑する。
「褒めるな。アイツはすぐ調子に乗るから」
次元がやってきて言った。
着々と完成しつつある大型テントを、忌々しげに見やる。
「考えたわけじゃない。欲望のままに行動しているだけだ」
言葉は辛辣だが、その口調はどこか楽しげだ。
普段の次元なら、容赦なくテントを没収しているに違いない。
そうしないのは、きっと、非常事態宣言の続く状態に次元も退屈しているのだ。
「あ、ルパン!」
ヒョコっとテントの陰から顔を出した綾は、ようやくルパンに気がついた。
「いいところに帰ってきた! ちょっとそっち側を持っていてくれない?」
「はいはい」
「それじゃ、俺はキャンプ料理もどきでも作るかな」
結局キャンプごっこに参加する、つきあいのいいルパン達なのだった。
おわり
リビングの入口でルパンは足を止めた。
普通、リビングにある物といえばテーブルとかソファとか、そういうものだと思う。
足を踏み入れるのを躊躇うような物は、普通のご家庭にはない。
普通のご家庭じゃなくても無論、このアジトにだってない。
……はずだった。
「あ、ルパン。おかえり~!」
という、いつもならすぐに飛んでくるはずの綾の声もない。
なぜなら彼女は今、テント設営の真っ最中。
ルパンの帰宅など気づいてもいないのである。
「なんだってこんな部屋の中に……」
リビングの入口に突っ立ったまま、ルパンはしばし綾のテント張りの様子を眺めた。
彼女のクルクルとした髪がテントの陰にフワフワと見え隠れする。
少し調子はずれなハミングに髪が踊っているようだ。
あまりに楽しげなその光景に、ルパンは笑みを浮かべた。
彼女がキャンプに行きたがっていたのは知っていた。
けれど、“STAY HOME”が合言葉の今、キャンプどころではなかった。
いかにルパン一味といえど、COVID-19は普通に怖い。
『手洗い・うがい』
『外出時はマスク着用』
などと毛筆で書かれた張り紙がアジトのあちこちに貼られているほどだ。
せめて庭で、と提案したいところだったが、あいにく現在滞在中のアジトはマンションだ。
バルコニーは狭く、次元のミニトマトとハーブの鉢植えをどかしても、キャンプどころかバーベキューすらできない。
『外でできないなら、家の中で』
『せめて気分だけでも楽しもう』
そういう結論に至ったのだろう。
「考えたねぇ」
ルパンは思わず苦笑する。
「褒めるな。アイツはすぐ調子に乗るから」
次元がやってきて言った。
着々と完成しつつある大型テントを、忌々しげに見やる。
「考えたわけじゃない。欲望のままに行動しているだけだ」
言葉は辛辣だが、その口調はどこか楽しげだ。
普段の次元なら、容赦なくテントを没収しているに違いない。
そうしないのは、きっと、非常事態宣言の続く状態に次元も退屈しているのだ。
「あ、ルパン!」
ヒョコっとテントの陰から顔を出した綾は、ようやくルパンに気がついた。
「いいところに帰ってきた! ちょっとそっち側を持っていてくれない?」
「はいはい」
「それじゃ、俺はキャンプ料理もどきでも作るかな」
結局キャンプごっこに参加する、つきあいのいいルパン達なのだった。
おわり