綾の負傷で、俺達はサバーニという小さな町に足止めを食らっていた。


気前よく前金を弾んで貸し切りにした小さなモーテル。


「綾。朝飯……」


ドアを蹴り開けて彼女の部屋へ入ると、綾は窓際のベッドに半身を起こして座っていた。


カーテンが数センチだけ開けられ、そこから朝日が差し込んで彼女の顔を照らしている。


「わー、こんな所に天使がいる」


じっと窓の外に視線を向けていた綾は俺の声にパッと振り向いた。


「あ、ルパン。お早う」


「おハヨ、綾。めまいはどうよ？」


彼女は大量に血液を失ったせいで貧血気味だ。


顔がまだ青白い。


俺はベッドに歩み寄り、彼女の膝に朝食のトレーを置いた。


ポケットからブリックパックの牛乳を出して、トレーに乗せる。


「しっかり食べろよ」


「うん。ありがとう」


カーテンを開け、窓も開けて空気を入れ替える。


何気なく外に目をやれば、ちょうど次元が戻ってくるところだった。


モーテルの入口で立ち止り、こちらを見上げる。


軽く新聞を持った手をあげて挨拶をしてくる。


「よぉ次元、おはよーさん！ 俺のあつーい視線に気づいた？」


次元は苦笑いをしていた。