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「綾。さっきから携帯ばっかり見てるね」
マキに指摘され、慌てて携帯をデスクに戻す。
「そ、そうかな」
「あやしいなー。彼氏?」
「いや、そういうのじゃなくて」
あの怪しい風貌の男ふたりを、なんて説明すればいいのだろう。
『時空管理局のエージェントです』なんて言ったら、中二病の後遺症かと生ぬるい目で見られてしまう。
誤魔化さなければと思ったその時、入口付近がなにやら騒がしくなった。
うちの会社は小さなオフィスビルの2階のワンフロア。
区画されてはいるがパーテーションが低いため、少し背伸びをすれば社内全体が見渡せる。
受付の周りに女子社員が詰めかけて、ちょっとした人だかりになっていた。
きゃーという黄色い声も聞こえる。
何事かと見守っていると、その全員が一斉にこちらを振り返った。
「えっ? えっ?」
反射的に自分の背後を振り返るが私のデスクは壁際だ。壁しかない。
「早く来て! お客様よ!」
「わ、私?」
手招きされて、思わず自分を指さして確認してしまった。
人なみをかきわけて受付にたどり着く。
立っていたのは時空管理局の長身の方だった。
黒ずくめの格好のままで、怪しさ満点。
どうしよう。女子社員の『きゃー』は黄色い声じゃなくて、悲鳴だったんだ。
内心ダラダラと汗をかいていると、
「驚いた顔をしているね」
男がクスリと笑った。
すると、周りの女子社員たちからうっとりしたため息が漏れる。
「素敵」なんて声まで漏れ聞こえてきて、私は耳を疑った。
どういうこと……?
黒ずくめブームでも起きてるの?
その時、男はふと手首に目を落とし、腕時計を操作しながら小さく呟いた。
「すまない。少し調整する」
カチリ、と小さな音がして──
次の瞬間。
私の目に映る男の姿が、ふっと変わった。
見知らぬ外国人男性だった。
身に纏っているのは仕立てのよさそうなダークブラウンのスリーピース。
「やぁ」と軽く上げた片腕から覗くのは、ブランドに疎い私にも高級そうだと分かる大判フェイスの腕時計。
涼しげな目もとにスッと通った鼻筋、薄い唇。
襟足長めの髪はすっきり後ろに流され、清潔感がある。
背丈はここにいる男性社員たちより頭ひとつ分は高い。
誰デスカ、コノヒト……?
まるで二次元から飛び出してきたみたいなイケオジに、私の思考は完全にストップした。
「さっき電話をくれただろう。待ちきれなくて迎えに来てしまったんだが、迷惑だっただろうか」
「…………」
驚きすぎて言葉も出ない。ただ金魚のように口をパクパクさせるだけ。
理解が追いつかない。
「スミスが外で待っているから、行こう」
ジョンの言葉に反応した女子社員たちが一斉に窓の方へ向かった。
まるでアイドルを追いかけるパパラッチだ。
その波に呑まれ、私も一緒に窓際へ追いやられる。
オフィスの窓は表通りに面している。
お昼にはお弁当屋さんが来ていて、わざわざ外に出なくても上から日替わりランチのメニューが分って便利だ。
窓からちょうど正面に見える街灯のあたりに、男性が立っていた。
ダークブロンドのソフト七三。
ラペルの細いシンプルなダークスーツはきちんとした素材のおかげで体にぴったりと沿っている。
厚い胸板。
服の上からでも分かるマッチョ体型。
少し奥目のブルーアイに下がり気味の眉毛が少し寂し気な印象を与える。
薄い唇、頑丈そうな顎。
「なんっ……」
言葉にならない声。
たとえ何かを言ったとしても聞こえるはずもないのに、彼はこちらを見上げ、私に片手をあげて見せた。
「ジェームズ・ボンド……」
マキが呟いた。
「綾、急いでくれないか」
入口からジョンが私を呼んだ。
「お、お先に失礼します……」
全社員の視線を浴びながら、私は慌てて鞄を手に会社を出た。
マキに指摘され、慌てて携帯をデスクに戻す。
「そ、そうかな」
「あやしいなー。彼氏?」
「いや、そういうのじゃなくて」
あの怪しい風貌の男ふたりを、なんて説明すればいいのだろう。
『時空管理局のエージェントです』なんて言ったら、中二病の後遺症かと生ぬるい目で見られてしまう。
誤魔化さなければと思ったその時、入口付近がなにやら騒がしくなった。
うちの会社は小さなオフィスビルの2階のワンフロア。
区画されてはいるがパーテーションが低いため、少し背伸びをすれば社内全体が見渡せる。
受付の周りに女子社員が詰めかけて、ちょっとした人だかりになっていた。
きゃーという黄色い声も聞こえる。
何事かと見守っていると、その全員が一斉にこちらを振り返った。
「えっ? えっ?」
反射的に自分の背後を振り返るが私のデスクは壁際だ。壁しかない。
「早く来て! お客様よ!」
「わ、私?」
手招きされて、思わず自分を指さして確認してしまった。
人なみをかきわけて受付にたどり着く。
立っていたのは時空管理局の長身の方だった。
黒ずくめの格好のままで、怪しさ満点。
どうしよう。女子社員の『きゃー』は黄色い声じゃなくて、悲鳴だったんだ。
内心ダラダラと汗をかいていると、
「驚いた顔をしているね」
男がクスリと笑った。
すると、周りの女子社員たちからうっとりしたため息が漏れる。
「素敵」なんて声まで漏れ聞こえてきて、私は耳を疑った。
どういうこと……?
黒ずくめブームでも起きてるの?
その時、男はふと手首に目を落とし、腕時計を操作しながら小さく呟いた。
「すまない。少し調整する」
カチリ、と小さな音がして──
次の瞬間。
私の目に映る男の姿が、ふっと変わった。
見知らぬ外国人男性だった。
身に纏っているのは仕立てのよさそうなダークブラウンのスリーピース。
「やぁ」と軽く上げた片腕から覗くのは、ブランドに疎い私にも高級そうだと分かる大判フェイスの腕時計。
涼しげな目もとにスッと通った鼻筋、薄い唇。
襟足長めの髪はすっきり後ろに流され、清潔感がある。
背丈はここにいる男性社員たちより頭ひとつ分は高い。
誰デスカ、コノヒト……?
まるで二次元から飛び出してきたみたいなイケオジに、私の思考は完全にストップした。
「さっき電話をくれただろう。待ちきれなくて迎えに来てしまったんだが、迷惑だっただろうか」
「…………」
驚きすぎて言葉も出ない。ただ金魚のように口をパクパクさせるだけ。
理解が追いつかない。
「スミスが外で待っているから、行こう」
ジョンの言葉に反応した女子社員たちが一斉に窓の方へ向かった。
まるでアイドルを追いかけるパパラッチだ。
その波に呑まれ、私も一緒に窓際へ追いやられる。
オフィスの窓は表通りに面している。
お昼にはお弁当屋さんが来ていて、わざわざ外に出なくても上から日替わりランチのメニューが分って便利だ。
窓からちょうど正面に見える街灯のあたりに、男性が立っていた。
ダークブロンドのソフト七三。
ラペルの細いシンプルなダークスーツはきちんとした素材のおかげで体にぴったりと沿っている。
厚い胸板。
服の上からでも分かるマッチョ体型。
少し奥目のブルーアイに下がり気味の眉毛が少し寂し気な印象を与える。
薄い唇、頑丈そうな顎。
「なんっ……」
言葉にならない声。
たとえ何かを言ったとしても聞こえるはずもないのに、彼はこちらを見上げ、私に片手をあげて見せた。
「ジェームズ・ボンド……」
マキが呟いた。
「綾、急いでくれないか」
入口からジョンが私を呼んだ。
「お、お先に失礼します……」
全社員の視線を浴びながら、私は慌てて鞄を手に会社を出た。