嵐を呼ぶレディ
Nawe Change
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その夜、船長の計らいで特別なゲストのためのディナーが催された。
着替えを済ませた綾とフローラは、ディナーのために整えられたデイキャビンへと向かった。
────胸の奥に、それぞれ小さな火種を抱えながら。
「おーい、ハンスのおっさーん」
フェイスがガレーにやってきた。
ガレーは良い匂いが立ち込め、調理員が忙しく動き回っている。
フローラとアランのための料理を作っている最中だった。
「ウィルの飲み物、貰ってくぜ」フェイスは慣れた様子で調理員達の間をすり抜け、ミルクの瓶を取り出す。
「で? 今日のデザートは何だ?」
「実は、フルーツタルトとショートケーキで迷ってるんだ」料理長のハンスが言った。「金髪さんに、綺麗なのと可愛いの、どっちがお好きかって聞いたんだがね」
「ほう。両手に花だな」
「そうさ。そしたら金髪さん、なんて言ったと思う?」
「「両方!」」二人の声が重なり、笑いが起こった。
フローラとアランのためのディナーの席に、綾はシルバーが贈ったワンピースを着て同席した。
シルバーとアランが船上での苦労話を面白おかしく話して聞かせ、フローラを楽しませた。
控えめなノックの後に、料理長が顔を覗かせた。申し訳なさそうに談笑の邪魔をした非礼を詫びる。
「失礼」シルバーが立ち上がって入口まで出て行った。
「すまない、ハンス。まだどちらを選ぶか決めかねてるんだ。もう少しだけ待ってくれ」
料理長が下がりシルバーが席に戻ると、綾が尋ねた。
「どうしました? どちらを選ぶとか聞こえましたけど」
「あぁ。綺麗なのと可愛いの、どちらにするか迷っていてね」
「えっ」
綾はポカンと口を開け、フローラもアランもフォークを持つ手を止めて固まっている。
フローラも綾も、『綺麗なのと可愛いの』が自分達の事かと思った。アランもだ。
シルバーはそれに気づいていない。
キースだけが両方の考えに思い至ったが、我関せずの態度で黙々と料理を口に運んでいた。
「早く決めろと料理長にせっつかれてるんだ」
「料理長に遠慮することはないんじゃないか? 君自身のことなんだから」
「そ、そうですわ。ゆっくりよくお考えになった方が良いと思います」
シルバーは首を捻った。フローラ嬢はともかく、料理長のデザートをいつも一番楽しみにしているのはアランだというのに、なぜ今日に限って料理長に厳しいのか。
「……この際だから聞くが、綺麗な方は何が良いんだ?」
アランの質問に、シルバーはふふん、と笑った。
ルークス号ではデザートはいつも内緒で、出てくるまでのお楽しみとなっている。だからアランも、デザートが『何か?』ではなく『どんな風か?』という聞き方をしたのだろう。
着替えを済ませた綾とフローラは、ディナーのために整えられたデイキャビンへと向かった。
────胸の奥に、それぞれ小さな火種を抱えながら。
「おーい、ハンスのおっさーん」
フェイスがガレーにやってきた。
ガレーは良い匂いが立ち込め、調理員が忙しく動き回っている。
フローラとアランのための料理を作っている最中だった。
「ウィルの飲み物、貰ってくぜ」フェイスは慣れた様子で調理員達の間をすり抜け、ミルクの瓶を取り出す。
「で? 今日のデザートは何だ?」
「実は、フルーツタルトとショートケーキで迷ってるんだ」料理長のハンスが言った。「金髪さんに、綺麗なのと可愛いの、どっちがお好きかって聞いたんだがね」
「ほう。両手に花だな」
「そうさ。そしたら金髪さん、なんて言ったと思う?」
「「両方!」」二人の声が重なり、笑いが起こった。
フローラとアランのためのディナーの席に、綾はシルバーが贈ったワンピースを着て同席した。
シルバーとアランが船上での苦労話を面白おかしく話して聞かせ、フローラを楽しませた。
控えめなノックの後に、料理長が顔を覗かせた。申し訳なさそうに談笑の邪魔をした非礼を詫びる。
「失礼」シルバーが立ち上がって入口まで出て行った。
「すまない、ハンス。まだどちらを選ぶか決めかねてるんだ。もう少しだけ待ってくれ」
料理長が下がりシルバーが席に戻ると、綾が尋ねた。
「どうしました? どちらを選ぶとか聞こえましたけど」
「あぁ。綺麗なのと可愛いの、どちらにするか迷っていてね」
「えっ」
綾はポカンと口を開け、フローラもアランもフォークを持つ手を止めて固まっている。
フローラも綾も、『綺麗なのと可愛いの』が自分達の事かと思った。アランもだ。
シルバーはそれに気づいていない。
キースだけが両方の考えに思い至ったが、我関せずの態度で黙々と料理を口に運んでいた。
「早く決めろと料理長にせっつかれてるんだ」
「料理長に遠慮することはないんじゃないか? 君自身のことなんだから」
「そ、そうですわ。ゆっくりよくお考えになった方が良いと思います」
シルバーは首を捻った。フローラ嬢はともかく、料理長のデザートをいつも一番楽しみにしているのはアランだというのに、なぜ今日に限って料理長に厳しいのか。
「……この際だから聞くが、綺麗な方は何が良いんだ?」
アランの質問に、シルバーはふふん、と笑った。
ルークス号ではデザートはいつも内緒で、出てくるまでのお楽しみとなっている。だからアランも、デザートが『何か?』ではなく『どんな風か?』という聞き方をしたのだろう。