嵐を呼ぶレディ
Nawe Change
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「フローラ様、お茶をお持ちしましたよ」
忙しそうなウィルの代わりにティーセットをを持ってフローラの部屋をノックした綾だったが、返事がない。
「わっ、いない!」部屋を覗いた綾は慌てた。
フローラみたいな女性が一人で船内をうろつくなど、危険極まりない。ひどい揺れに転倒して綺麗な顔に傷でもついたら……と、綾は顔色を失った。
「フローラ様! フローラ様⁉︎」
綾は昇降階段を駆け上り、アッパーデッキに飛び出した。
その途端、バランスを崩して転倒する。
「本当にお前は、いつまで経っても陸上者 だなぁ」
笑い声と共に腕を掴まれて身体を起こされた。スケイディが顔を覗き込んでくる。
「何を慌ててんだ?」
「フローラ様がお部屋にいなくて。転んで怪我でもなさったら、船長の立場が……」
「フローラ? あぁ、エティエンヌのお嬢様か。だったら、」スケイディは少し背を屈めて綾の目線に合わせ、船尾方向を指差した。
「あっち」
メインマスト辺りに彼女のスカートが見え隠れしている。
「ありがとうスケイディ!」
「転ぶなよ!」スケイディが綾の背中に叫んだ。
「フローラ様、探しましたよ」綾はフローラに駆け寄った。彼女は柔らかな笑顔を浮かべる。
「リョウさん。ごめんなさいね、見たことのない物ばかりで楽しくて」
二人は邪魔にならないような場所に並んで立ち、クルー達がマストを調整するのを眺めたり、遠くの海を見つめたりした。
「皆さんロープを握ると真剣なお顔になって。とても凛としていらっしゃるわ」
「そうですね。でも凛々しさでいったら、ミスタ・アランが一番では?」綾はチャンスとばかりに切り出した。
「素敵ですよね、王子様みたいで。彼の船は三本マストのバーミリオン号で立派ですし、フォクスル・デッキから指示を出すところは、本当に凛としていてカッコ良いんですよ」
綾はアランがどれ程魅力的か、どれ程将来有望かを得意げに語った。
彼女があまりにも熱弁を振るうため、フローラは呆気にとられていた。
「随分と熱く語るじゃないか、リョウ?」
頭上から降ってきた声に、綾はギクリと肩をすくめた。
「まぁ、ミスタ・ゴールディ!」
フローラがフォクスル・デッキを振り仰いで顔を綻ばせる。
シルバーはひらりと身を踊らせて アッパー・デッキに飛び降りると、フローラに軽く挨拶をした。それから綾に歩み寄る。
「確かにアランは良い男かもしれないが、そんなに手放しで褒めるのを聞いたら、さすがに俺も穏やかではいられないな」
「せ、船長っ……」綾はバッと顔を赤らめて一歩引いた。
「違います、私はただ、キャプテン・アランとフローラ様がお似合いだと……」
綾が引いた分、シルバーは一歩足を進める。
「それはつまり、自分は対象外だということか?」
「それは、ええと……」
言葉に詰まる綾の顔を覗き込んで、シルバーは少し口角を上げる。
「……君は、自分の可愛らしさを自覚しているか?」
思わず口をつぐむ綾。その頬が、さらに赤くなる。
その空気を割るように、別の声が響いた。
「可愛らしいとは、誰のことです?」
三人の視線が一斉に声の主へ向く。
アランが靴音を響かせて近寄ってきた。背筋を伸ばし、いつもの穏やかな笑顔で三人を見つめる。
「キャプテン・アラン!」
綾が思わず声を上げた。シルバーはサッと表情を切り替え、アランに向き直る。
「もちろん、レディ・エティエンヌのことだ。装いも素晴らしく、まるで花のようだ。そう思わないか、アラン?」
「……まったく、その通りです」
アランの視線がちらりと綾に向く。彼女は完全に固まっていた。
フローラは少し驚いたような顔をしながらも、微笑んで一礼する。
「まぁ……ありがとうございます」
(どうしよう。余計に面倒な事になった気がする……)
綾は頭を抱えた。
忙しそうなウィルの代わりにティーセットをを持ってフローラの部屋をノックした綾だったが、返事がない。
「わっ、いない!」部屋を覗いた綾は慌てた。
フローラみたいな女性が一人で船内をうろつくなど、危険極まりない。ひどい揺れに転倒して綺麗な顔に傷でもついたら……と、綾は顔色を失った。
「フローラ様! フローラ様⁉︎」
綾は昇降階段を駆け上り、アッパーデッキに飛び出した。
その途端、バランスを崩して転倒する。
「本当にお前は、いつまで経っても
笑い声と共に腕を掴まれて身体を起こされた。スケイディが顔を覗き込んでくる。
「何を慌ててんだ?」
「フローラ様がお部屋にいなくて。転んで怪我でもなさったら、船長の立場が……」
「フローラ? あぁ、エティエンヌのお嬢様か。だったら、」スケイディは少し背を屈めて綾の目線に合わせ、船尾方向を指差した。
「あっち」
メインマスト辺りに彼女のスカートが見え隠れしている。
「ありがとうスケイディ!」
「転ぶなよ!」スケイディが綾の背中に叫んだ。
「フローラ様、探しましたよ」綾はフローラに駆け寄った。彼女は柔らかな笑顔を浮かべる。
「リョウさん。ごめんなさいね、見たことのない物ばかりで楽しくて」
二人は邪魔にならないような場所に並んで立ち、クルー達がマストを調整するのを眺めたり、遠くの海を見つめたりした。
「皆さんロープを握ると真剣なお顔になって。とても凛としていらっしゃるわ」
「そうですね。でも凛々しさでいったら、ミスタ・アランが一番では?」綾はチャンスとばかりに切り出した。
「素敵ですよね、王子様みたいで。彼の船は三本マストのバーミリオン号で立派ですし、フォクスル・デッキから指示を出すところは、本当に凛としていてカッコ良いんですよ」
綾はアランがどれ程魅力的か、どれ程将来有望かを得意げに語った。
彼女があまりにも熱弁を振るうため、フローラは呆気にとられていた。
「随分と熱く語るじゃないか、リョウ?」
頭上から降ってきた声に、綾はギクリと肩をすくめた。
「まぁ、ミスタ・ゴールディ!」
フローラがフォクスル・デッキを振り仰いで顔を綻ばせる。
シルバーはひらりと身を踊らせて アッパー・デッキに飛び降りると、フローラに軽く挨拶をした。それから綾に歩み寄る。
「確かにアランは良い男かもしれないが、そんなに手放しで褒めるのを聞いたら、さすがに俺も穏やかではいられないな」
「せ、船長っ……」綾はバッと顔を赤らめて一歩引いた。
「違います、私はただ、キャプテン・アランとフローラ様がお似合いだと……」
綾が引いた分、シルバーは一歩足を進める。
「それはつまり、自分は対象外だということか?」
「それは、ええと……」
言葉に詰まる綾の顔を覗き込んで、シルバーは少し口角を上げる。
「……君は、自分の可愛らしさを自覚しているか?」
思わず口をつぐむ綾。その頬が、さらに赤くなる。
その空気を割るように、別の声が響いた。
「可愛らしいとは、誰のことです?」
三人の視線が一斉に声の主へ向く。
アランが靴音を響かせて近寄ってきた。背筋を伸ばし、いつもの穏やかな笑顔で三人を見つめる。
「キャプテン・アラン!」
綾が思わず声を上げた。シルバーはサッと表情を切り替え、アランに向き直る。
「もちろん、レディ・エティエンヌのことだ。装いも素晴らしく、まるで花のようだ。そう思わないか、アラン?」
「……まったく、その通りです」
アランの視線がちらりと綾に向く。彼女は完全に固まっていた。
フローラは少し驚いたような顔をしながらも、微笑んで一礼する。
「まぁ……ありがとうございます」
(どうしよう。余計に面倒な事になった気がする……)
綾は頭を抱えた。