嵐を呼ぶレディ
Nawe Change
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船の行き足が止まった。
船員たちが慌ただしく行き交うなか、綾はアッパーデッキへ上がった。スケイディからアランが来ると聞いたからだ。
集まっている野次馬から顔を覗かせて見ると、舷門では既にシルバー達がアランを迎えていた。いつもと違うのは、アランが女性を伴っていることだった。
スラリとした長身の美人で、フリルのついた白いパラソルをさし、笑顔でシルバーの挨拶を受けている。
丹精なアランと並ぶと、絵に描いたように似合いのカップルだ。
「綺麗な人……」
「エティエンヌ嬢だそうだ。お偉いさんの娘らしいぜ」
フェイスがどこからか聞きつけてきた情報を綾に囁いた。
「あぁ、あの方が……」
「それよりお前、金髪さんと付き合ってるってのは本当なのかよ」
「なっ……!」
途端に顔を真っ赤にした綾に、フェイスは小さく笑った。
「わっかりやすいなー、お前」
「ちがっ……」
慌てて訂正しようとした綾だったが、その時シルバーが綾を見つけて手招きをした。
「ほら、呼んでるぜ」
フェイスに背中を押され、綾は否定もできないままシルバーのもとへ駆けていった。
「彼女がリョウです。何かありましたら彼女にお申し付けください」
「まぁ、貴女が!」フローラ・エティエンヌは眩しい笑顔を綾に向けた。
「いつぞやの記事を拝見してから、ずっとお会いしたく思っていました」
ヒューとキースの決闘騒ぎの時のことを言っているのだろう。
あの時『船の規律を著しく乱した』として投獄された綾を救ったのは、シルバーが一計を案じて新聞に載せた『身寄りのない哀れな少女、無実の罪で投獄』という記事に同情したマダムやレディ達だったのだ。
彼女達が軍人である自分の夫や父親に働きかけてくれなければ、綾は今頃絞首刑になっていたかもしれない。
「仲良くしてくださいね」
そう言って綾の手を握るフローラに、綾は曖昧な笑みしか返せなかった。
「リョウ、お二人を案内して差し上げろ。……もっとも、船の構造なんかはキャプテン・アランの方が詳しいだろうが」
「いえ、私はリョウさんのお話の方が聞きたいです」と、アランは綾を見て嬉しそうに笑いかけた。
「それじゃ、行きましょうか。足もとに気をつけてくださいね」
「お前こそ気をつけるんだぞ、リョウ」キースが呼び止めた。
「お前が一人で歩ける場所だけ案内しろ。それならレディ・エティエンヌも安全だ」
「どうせ私は陸上者 ですよ……ビームに頭をぶつけるし、ステップラダーから転落する陸上者 ですよ……」
「そんなに気落ちしないでください」アランが慌てた様子で言った。
「キャプテン・シルバーの要求が無茶なんですよ。貴女のような女性にボースンズチェアも用意せず、ラダーを登れなどと……」
「うちの乗組員ならば当然だ」シルバーは言い返し、早くしろと綾を手で追い立てた。
どうやら早く行ってほしいようだと理解した綾はシルバーに頭を下げて歩き出した。あとからアランとフローラが続く。それを合図に、乗組員達も各々の作業に戻っていった。
「まいったな……」
残ったのがキースだけになると、シルバーは大きな手を頭にやって盛大なため息をついた。
「まさかアランが彼女を連れてくるとは……」
ルークス号を見失ってフローラが困っていたところへ、アランの船が通りかかったらしい。
「私の船なら早いから、すぐに追いつけるでしょう」という小さな親切は、シルバーにとってはまったく大きくお世話だった。
「面倒な事になりましたね」
アランが以前から綾に好意を抱いていることは、シルバーもキースも気づいている。
ここでシルバーが綾を恋人扱いしようものなら、彼との関係に支障が出るだろう。
「アランの前では普段通りにするしかなかろう。リョウを口説くなら、アランにバレないようにしなければ」
「…………」キースは無言でシルバーを見つめた。
「だから言ったじゃないか、みたいな目をするのはやめろ。俺が一番分かってるんだ」
シルバーはまた大きなため息をついた。
船員たちが慌ただしく行き交うなか、綾はアッパーデッキへ上がった。スケイディからアランが来ると聞いたからだ。
集まっている野次馬から顔を覗かせて見ると、舷門では既にシルバー達がアランを迎えていた。いつもと違うのは、アランが女性を伴っていることだった。
スラリとした長身の美人で、フリルのついた白いパラソルをさし、笑顔でシルバーの挨拶を受けている。
丹精なアランと並ぶと、絵に描いたように似合いのカップルだ。
「綺麗な人……」
「エティエンヌ嬢だそうだ。お偉いさんの娘らしいぜ」
フェイスがどこからか聞きつけてきた情報を綾に囁いた。
「あぁ、あの方が……」
「それよりお前、金髪さんと付き合ってるってのは本当なのかよ」
「なっ……!」
途端に顔を真っ赤にした綾に、フェイスは小さく笑った。
「わっかりやすいなー、お前」
「ちがっ……」
慌てて訂正しようとした綾だったが、その時シルバーが綾を見つけて手招きをした。
「ほら、呼んでるぜ」
フェイスに背中を押され、綾は否定もできないままシルバーのもとへ駆けていった。
「彼女がリョウです。何かありましたら彼女にお申し付けください」
「まぁ、貴女が!」フローラ・エティエンヌは眩しい笑顔を綾に向けた。
「いつぞやの記事を拝見してから、ずっとお会いしたく思っていました」
ヒューとキースの決闘騒ぎの時のことを言っているのだろう。
あの時『船の規律を著しく乱した』として投獄された綾を救ったのは、シルバーが一計を案じて新聞に載せた『身寄りのない哀れな少女、無実の罪で投獄』という記事に同情したマダムやレディ達だったのだ。
彼女達が軍人である自分の夫や父親に働きかけてくれなければ、綾は今頃絞首刑になっていたかもしれない。
「仲良くしてくださいね」
そう言って綾の手を握るフローラに、綾は曖昧な笑みしか返せなかった。
「リョウ、お二人を案内して差し上げろ。……もっとも、船の構造なんかはキャプテン・アランの方が詳しいだろうが」
「いえ、私はリョウさんのお話の方が聞きたいです」と、アランは綾を見て嬉しそうに笑いかけた。
「それじゃ、行きましょうか。足もとに気をつけてくださいね」
「お前こそ気をつけるんだぞ、リョウ」キースが呼び止めた。
「お前が一人で歩ける場所だけ案内しろ。それならレディ・エティエンヌも安全だ」
「どうせ私は
「そんなに気落ちしないでください」アランが慌てた様子で言った。
「キャプテン・シルバーの要求が無茶なんですよ。貴女のような女性にボースンズチェアも用意せず、ラダーを登れなどと……」
「うちの乗組員ならば当然だ」シルバーは言い返し、早くしろと綾を手で追い立てた。
どうやら早く行ってほしいようだと理解した綾はシルバーに頭を下げて歩き出した。あとからアランとフローラが続く。それを合図に、乗組員達も各々の作業に戻っていった。
「まいったな……」
残ったのがキースだけになると、シルバーは大きな手を頭にやって盛大なため息をついた。
「まさかアランが彼女を連れてくるとは……」
ルークス号を見失ってフローラが困っていたところへ、アランの船が通りかかったらしい。
「私の船なら早いから、すぐに追いつけるでしょう」という小さな親切は、シルバーにとってはまったく大きくお世話だった。
「面倒な事になりましたね」
アランが以前から綾に好意を抱いていることは、シルバーもキースも気づいている。
ここでシルバーが綾を恋人扱いしようものなら、彼との関係に支障が出るだろう。
「アランの前では普段通りにするしかなかろう。リョウを口説くなら、アランにバレないようにしなければ」
「…………」キースは無言でシルバーを見つめた。
「だから言ったじゃないか、みたいな目をするのはやめろ。俺が一番分かってるんだ」
シルバーはまた大きなため息をついた。