嵐を呼ぶレディ
Nawe Change
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「失礼します、船長」
背後の暗闇から声がかかった。アーネストがゆっくりと歩み寄ってくる。
「風向きが変わりそうです。早めのご決断をと思いまして」
「嵐か」こんな時にとシルバーは軽く舌打ちをする。
「回避は……可能ならとっくにやってるよな」
「はい。急激な低気圧の発達で、俺も読みきれませんでした」
シルバーは少し考え込む。
「よし。アーネスト、リョウを連れてエティエンヌ嬢の所へ行ってくれ。アランの船に避難するよう伝えるんだ。アランには俺が伝えよう」
シルバーは足早に去っていった。
アーネストも踵を返して歩き出す。彼と並んで歩き出しながら綾は言った。
「いつからあそこにいたの? ……というか、どこから聞いてた?」
「ん? 何を?」アーネストはすっとぼけた。「ワンピースが戦利品じゃないとか、君が猫だとか、俺は知らんよ」
(はじめからだった……!)と綾は顔を赤らめる。
「あのねアーネスト。あれは……」
「分かってるよ」アーネストは綾の顔を覗き込んで笑った。
「俺は何も言わない。せいぜい頑張れ」
(全然分かってない……!)
綾はため息をついた。
風が強くなってきていた。掌帆手に指示を出すスケイディの怒号と号笛が響く中、綾はフローラの部屋を訪れた。
「失礼します、フローラ様」
「どうかしましたか、リョウさん。……船がかなり揺れているけれど、その事かしら」
フローラはナイトドレスの上にガウンを羽織って出てきた。アーネストは目のやり場に困って、外で待っていると言った。
「嵐が迫っています、フローラ様。安全のために、ミスタ・アランの船に移っていただけますか」
「…………」
フローラは体の前で両手を組み、じっと考え込んでいる。
「フローラ様……?」
「『可愛いのは諦めるんですか』って、どういう意味でしたの?」
フローラが顔を上げた。真っ直ぐに綾の目を見つめる。
「え、えっ⁉︎ あっ、あれは……」
綾は目を白黒させた。必死で言い訳を考える。
「あ、あれはケーキのことですよね⁉︎」
「……そうですわね」
フローラは目をスッと細めて小さく笑った。
「そうですよ。私、可愛いケーキに目がないんです!」
「私もです」顔を上げたフローラはもう笑ってはいなかった。
熱のこもった強い瞳で綾を見つめ返す。
「私も諦めたくはありません」
「フローラ様……」一瞬、絆されそうになった綾は首を振った。
「いえ、フローラ様。危険ですから、どうか」
「怖くないと言えば嘘になります。でも、見てみたいんです……あの方が船を守る姿を。それに、私も軍人の娘。ここで一人逃げ出すなんて、できませんわ」
フローラはにっこりと微笑んだ。
「私の事は私が決めますわ。もし……どうしてもとおっしゃるなら、船長おん自ら説得にいらっしゃるよう、お伝えください」
これ以上の説得は無駄と諦めて、綾はフローラの部屋を後にした。
背後の暗闇から声がかかった。アーネストがゆっくりと歩み寄ってくる。
「風向きが変わりそうです。早めのご決断をと思いまして」
「嵐か」こんな時にとシルバーは軽く舌打ちをする。
「回避は……可能ならとっくにやってるよな」
「はい。急激な低気圧の発達で、俺も読みきれませんでした」
シルバーは少し考え込む。
「よし。アーネスト、リョウを連れてエティエンヌ嬢の所へ行ってくれ。アランの船に避難するよう伝えるんだ。アランには俺が伝えよう」
シルバーは足早に去っていった。
アーネストも踵を返して歩き出す。彼と並んで歩き出しながら綾は言った。
「いつからあそこにいたの? ……というか、どこから聞いてた?」
「ん? 何を?」アーネストはすっとぼけた。「ワンピースが戦利品じゃないとか、君が猫だとか、俺は知らんよ」
(はじめからだった……!)と綾は顔を赤らめる。
「あのねアーネスト。あれは……」
「分かってるよ」アーネストは綾の顔を覗き込んで笑った。
「俺は何も言わない。せいぜい頑張れ」
(全然分かってない……!)
綾はため息をついた。
風が強くなってきていた。掌帆手に指示を出すスケイディの怒号と号笛が響く中、綾はフローラの部屋を訪れた。
「失礼します、フローラ様」
「どうかしましたか、リョウさん。……船がかなり揺れているけれど、その事かしら」
フローラはナイトドレスの上にガウンを羽織って出てきた。アーネストは目のやり場に困って、外で待っていると言った。
「嵐が迫っています、フローラ様。安全のために、ミスタ・アランの船に移っていただけますか」
「…………」
フローラは体の前で両手を組み、じっと考え込んでいる。
「フローラ様……?」
「『可愛いのは諦めるんですか』って、どういう意味でしたの?」
フローラが顔を上げた。真っ直ぐに綾の目を見つめる。
「え、えっ⁉︎ あっ、あれは……」
綾は目を白黒させた。必死で言い訳を考える。
「あ、あれはケーキのことですよね⁉︎」
「……そうですわね」
フローラは目をスッと細めて小さく笑った。
「そうですよ。私、可愛いケーキに目がないんです!」
「私もです」顔を上げたフローラはもう笑ってはいなかった。
熱のこもった強い瞳で綾を見つめ返す。
「私も諦めたくはありません」
「フローラ様……」一瞬、絆されそうになった綾は首を振った。
「いえ、フローラ様。危険ですから、どうか」
「怖くないと言えば嘘になります。でも、見てみたいんです……あの方が船を守る姿を。それに、私も軍人の娘。ここで一人逃げ出すなんて、できませんわ」
フローラはにっこりと微笑んだ。
「私の事は私が決めますわ。もし……どうしてもとおっしゃるなら、船長おん自ら説得にいらっしゃるよう、お伝えください」
これ以上の説得は無駄と諦めて、綾はフローラの部屋を後にした。