嵐を呼ぶレディ
Nawe Change
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『綺麗なの』はフルーツタルトだ。ルークス号では出たことがない。
「馴染みのないタイプだし、触れたら崩れそうなんだが、キラキラしていて綺麗で、つい目がいっちゃうんだよ」
「まぁ、そんな……」
フローラが頬を赤らめた。
そう、それ程までに美味しいんだよ、とシルバーは思う。
「でもミスタ・ゴールディ」
「何でしょう、フローラ?」
「見た目だけじゃなくて、その、中身も知っていただけたら嬉しいのですけれど」
「えぇ、ですからそれは、食べてみれば分かるでしょう」
「!」
アランが飲みかけたワインを誤飲し、咳き込んだ。
フローラだけでなく、綾までが真っ赤になって目を泳がせている。
そんなに楽しみなら、とシルバーは心を決めた。
「それじゃ決ま……」
「ち、ちょっと待ってください!」
綾が勢いよく立ち上がった。
綾にしてみれば、ここでフローラを選ぶのは意味が分からない。何のために恋人のフリなどさせられたのか。
「それじゃ『可愛いの』は諦めるんですか⁉︎」
「うーん……」シルバーは唸った。
リョウも毎回デザートを楽しみにしている。あわよくば両方、とでも思っているのかもしれない。
『可愛いの』はショートケーキだ。料理長にしても、手に入れた生クリームを早めに使い切りたいところだろう。
「諦めるわけないだろう」
「でも、こっちはどうでもいいって口ぶりでしたよ」
「どうでもいいと思っていたら、こんなに悩まないさ」シルバーは綾を見つめた。
「俺にとっては身近な存在で、気負わずに向き合える存在だ。それに可愛いしな」
「そ……そうです、か……」
綾は顔を真っ赤にして椅子に座り直した。
キースはシルバーを見て顔を顰めた。
彼はシルバーに面倒な事態を引き起こしている事を言うべきか迷ったが、そもそも最初に忠告はしたのだ。もう自分がどうこう言うこともない。
「何だキース。何か言いたそうだな」
「いえ、何でもありません」
シルバーはため息をついた。キースにしてみれば、両方というのは考えられないのだろう。そんなに食べられないのだから勿体無い、というのも分かる。
「失礼します!」ノックとともにフェイスが入ってきた。
「船長、早く決めてくれと料理長が言ってます」
「何で君が伝令に来るんだ、ミスタ・エドキンス?」
「聞いてきてくれたら酒を一杯くれるってんで、二つ返事で引き受けました」
フェイスはニシシと笑ってシルバーの答えを待っている。
「実はまだ迷ってるんだよ」
「船長が迷うなんて、珍しいですね。迷うくらいなら両方食べたら良いんじゃないですか?」
「フェイス!」綾が声を上げた。
「た、食べるなんて言い方やめてよ! フローラ様とキャプテン・アランの前よ⁉︎」
「え、じゃあ……両方美味しくいただけば良いんじゃないですか、船長」
フローラはほっそりした手で顔を覆って身を捩った。
さすがに彼女にケーキ二つはきついのだろうとシルバーは察した。
「フェイス。俺にも両方は……」
「何言ってんですか。船長なら一度に両方いけるでしょ」
アランが大きな咳払いをした。
「ミスタ・エドキンス、いい加減にしたまえ。黙って聞いていれば……」
「え、何か怒ってます……?」フェイスは戸惑い、これ以上の長居は無用と慌てて出ていった。
会話が止まり、何とも言えない空気が漂う。
真っ赤になって黙り込む綾とフローラ、そしてアラン。淡々と食事を続けるキース。
(なんだ、この空気は……)
シルバーは訝しげに一同を眺めた。
彼は、フローラと綾が『綺麗』と『可愛い』を自分の事だと思っているなどとは露ほども思っていないのである。
そこへ、「お待たせしました!」と料理長がフルーツタルトとショートケーキを持って現れた。痺れを切らして両方出すことにしたのだ。
「綺麗!」「可愛い!」
フローラと綾は目を輝かせる。
「…………あれ?」綾はようやく気づいた。
「船長。もしかして、ケーキの話をしてました……?」
「そうだが?」結局タルトとケーキを両方食べることにしたシルバーは、怪訝な顔をした。
「何だと思ったんだ……?」
「馴染みのないタイプだし、触れたら崩れそうなんだが、キラキラしていて綺麗で、つい目がいっちゃうんだよ」
「まぁ、そんな……」
フローラが頬を赤らめた。
そう、それ程までに美味しいんだよ、とシルバーは思う。
「でもミスタ・ゴールディ」
「何でしょう、フローラ?」
「見た目だけじゃなくて、その、中身も知っていただけたら嬉しいのですけれど」
「えぇ、ですからそれは、食べてみれば分かるでしょう」
「!」
アランが飲みかけたワインを誤飲し、咳き込んだ。
フローラだけでなく、綾までが真っ赤になって目を泳がせている。
そんなに楽しみなら、とシルバーは心を決めた。
「それじゃ決ま……」
「ち、ちょっと待ってください!」
綾が勢いよく立ち上がった。
綾にしてみれば、ここでフローラを選ぶのは意味が分からない。何のために恋人のフリなどさせられたのか。
「それじゃ『可愛いの』は諦めるんですか⁉︎」
「うーん……」シルバーは唸った。
リョウも毎回デザートを楽しみにしている。あわよくば両方、とでも思っているのかもしれない。
『可愛いの』はショートケーキだ。料理長にしても、手に入れた生クリームを早めに使い切りたいところだろう。
「諦めるわけないだろう」
「でも、こっちはどうでもいいって口ぶりでしたよ」
「どうでもいいと思っていたら、こんなに悩まないさ」シルバーは綾を見つめた。
「俺にとっては身近な存在で、気負わずに向き合える存在だ。それに可愛いしな」
「そ……そうです、か……」
綾は顔を真っ赤にして椅子に座り直した。
キースはシルバーを見て顔を顰めた。
彼はシルバーに面倒な事態を引き起こしている事を言うべきか迷ったが、そもそも最初に忠告はしたのだ。もう自分がどうこう言うこともない。
「何だキース。何か言いたそうだな」
「いえ、何でもありません」
シルバーはため息をついた。キースにしてみれば、両方というのは考えられないのだろう。そんなに食べられないのだから勿体無い、というのも分かる。
「失礼します!」ノックとともにフェイスが入ってきた。
「船長、早く決めてくれと料理長が言ってます」
「何で君が伝令に来るんだ、ミスタ・エドキンス?」
「聞いてきてくれたら酒を一杯くれるってんで、二つ返事で引き受けました」
フェイスはニシシと笑ってシルバーの答えを待っている。
「実はまだ迷ってるんだよ」
「船長が迷うなんて、珍しいですね。迷うくらいなら両方食べたら良いんじゃないですか?」
「フェイス!」綾が声を上げた。
「た、食べるなんて言い方やめてよ! フローラ様とキャプテン・アランの前よ⁉︎」
「え、じゃあ……両方美味しくいただけば良いんじゃないですか、船長」
フローラはほっそりした手で顔を覆って身を捩った。
さすがに彼女にケーキ二つはきついのだろうとシルバーは察した。
「フェイス。俺にも両方は……」
「何言ってんですか。船長なら一度に両方いけるでしょ」
アランが大きな咳払いをした。
「ミスタ・エドキンス、いい加減にしたまえ。黙って聞いていれば……」
「え、何か怒ってます……?」フェイスは戸惑い、これ以上の長居は無用と慌てて出ていった。
会話が止まり、何とも言えない空気が漂う。
真っ赤になって黙り込む綾とフローラ、そしてアラン。淡々と食事を続けるキース。
(なんだ、この空気は……)
シルバーは訝しげに一同を眺めた。
彼は、フローラと綾が『綺麗』と『可愛い』を自分の事だと思っているなどとは露ほども思っていないのである。
そこへ、「お待たせしました!」と料理長がフルーツタルトとショートケーキを持って現れた。痺れを切らして両方出すことにしたのだ。
「綺麗!」「可愛い!」
フローラと綾は目を輝かせる。
「…………あれ?」綾はようやく気づいた。
「船長。もしかして、ケーキの話をしてました……?」
「そうだが?」結局タルトとケーキを両方食べることにしたシルバーは、怪訝な顔をした。
「何だと思ったんだ……?」