目覚め
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次元さんの後に続いて、部屋に足を踏み入れる。
質素な部屋だった。
窓際にベッドとナイトテーブル。小さなカフェテーブルと椅子。クローゼット。
あるのはそれだけだった。
カーテンこそウォームカラーだが、この部屋は実用性重視でとても女の子のものとは思えない。
次元さんは無言で上着を脱いでベッドの足もとに放ると、ため息をつきながらベッドに腰かけた。
「…………」無言で私を見上げる。
「あの」私は思い切って口を開いた。
「部屋から出て行ってもらえますか? 少し休みたいので」
ベッドに歩み寄り、彼の上着を二つに折りたたんで差し出した。ほんのり煙草の匂いがした。
「ここは俺の部屋だ」次元さんが言った。
その言葉がやけに冷たく響いて、私は思わず息を呑んだ。
彼はすこし間を置いてから、こう付け足した。
「お前の部屋でもあるが」
「それは……」
一瞬考えてから、私は彼の言葉を再確認する。
「つまり、私はあなたと相部屋……ってことですか?」
「それ以外にあるか?」
私は改めて部屋を見回した。自分の痕跡が何か残っているのではないかと、そんな期待がどこかにあった。
でもそんなものはどこにもなかった。
見覚えのない部屋に排他的な感じさえ受けて、私はただ茫然と立ち尽くす。涙がこぼれそうになった。
「おい、どうした」
少し狼狽えたような声がして、次元さんが歩み寄ってきた。
「なんだか、このまま何も思い出せないんじゃないかって気がして……」
毎日生活していたはずの部屋を見ても何も思い出せず、記憶の断片が脳裏をかすめもしない。何かひっかかる、という事もない。
気持のよりどころもなく、自分がひどく無防備になった気がして怖かった。
「……疲れてるんだろう。今日はもう休め」
次元さんが言った。
「でも」と私はベッドを見やった。
「ベッドは一つしかないですよね。私がここで寝ちゃったらノワールさんは、」
「次元」
「次元さんは、どうするんですか?」
彼を見上げると、彼もベッドから私へと視線を移した。彼は黙って私を見つめ、それから小さく息を吐いて視線を逸らした。
「俺は床でも寝られる」
「そんなの、申し訳ないです! それなら私が……」
「女を床に寝かせる趣味はねぇ」
話は終わりだとばかりに、次元さんは背中を向けて部屋を出て行こうとする。
「でも! そこまでしていただくわけには、」
「うるせぇな。夜なんだから静かにしろ」
次元さんが私の言葉を遮った。低く響いた声に思わず首をすくめ、動きが止まる。
「ごめんなさい……」消え入りそうな声で謝り、俯いた。重い沈黙。
「ったく……」小さな舌打ちとともに、靴音がこちらに戻ってくる。
身構えて顔を上げたとたん、体が宙に浮いた。
次元さんが私を抱き上げたのだ。
「⁉︎」私は声にならない声をあげ、彼の腕から逃れようと手足をばたつかせた。
「ちょっ、ちょっと!」
「暴れるな。落とすぞ」
慌てて次元さんの首に腕を回した。
言葉は乱暴なのにその口調はどこか暖かさが滲んでいて、私は戸惑う。
次元さんは私をそっとベッドに下ろしてくれた。
私は黙って彼を見上げた。どこか冷たく無表情なその顔に、心が引っかかるような感じがした。
じっと見ていたら彼は無表情のまま、「寝ろ」とだけ言った。その声にはやっぱり、どこか優しさが滲んでいた。
怖いのに優しいなんて、訳がわからない。
この人は一体……。
シーツの間に潜り込むと、途端に睡魔が訪れる。
「綾……」
次元さんが何かを言っているが、もう目を開けることができなかった。
質素な部屋だった。
窓際にベッドとナイトテーブル。小さなカフェテーブルと椅子。クローゼット。
あるのはそれだけだった。
カーテンこそウォームカラーだが、この部屋は実用性重視でとても女の子のものとは思えない。
次元さんは無言で上着を脱いでベッドの足もとに放ると、ため息をつきながらベッドに腰かけた。
「…………」無言で私を見上げる。
「あの」私は思い切って口を開いた。
「部屋から出て行ってもらえますか? 少し休みたいので」
ベッドに歩み寄り、彼の上着を二つに折りたたんで差し出した。ほんのり煙草の匂いがした。
「ここは俺の部屋だ」次元さんが言った。
その言葉がやけに冷たく響いて、私は思わず息を呑んだ。
彼はすこし間を置いてから、こう付け足した。
「お前の部屋でもあるが」
「それは……」
一瞬考えてから、私は彼の言葉を再確認する。
「つまり、私はあなたと相部屋……ってことですか?」
「それ以外にあるか?」
私は改めて部屋を見回した。自分の痕跡が何か残っているのではないかと、そんな期待がどこかにあった。
でもそんなものはどこにもなかった。
見覚えのない部屋に排他的な感じさえ受けて、私はただ茫然と立ち尽くす。涙がこぼれそうになった。
「おい、どうした」
少し狼狽えたような声がして、次元さんが歩み寄ってきた。
「なんだか、このまま何も思い出せないんじゃないかって気がして……」
毎日生活していたはずの部屋を見ても何も思い出せず、記憶の断片が脳裏をかすめもしない。何かひっかかる、という事もない。
気持のよりどころもなく、自分がひどく無防備になった気がして怖かった。
「……疲れてるんだろう。今日はもう休め」
次元さんが言った。
「でも」と私はベッドを見やった。
「ベッドは一つしかないですよね。私がここで寝ちゃったらノワールさんは、」
「次元」
「次元さんは、どうするんですか?」
彼を見上げると、彼もベッドから私へと視線を移した。彼は黙って私を見つめ、それから小さく息を吐いて視線を逸らした。
「俺は床でも寝られる」
「そんなの、申し訳ないです! それなら私が……」
「女を床に寝かせる趣味はねぇ」
話は終わりだとばかりに、次元さんは背中を向けて部屋を出て行こうとする。
「でも! そこまでしていただくわけには、」
「うるせぇな。夜なんだから静かにしろ」
次元さんが私の言葉を遮った。低く響いた声に思わず首をすくめ、動きが止まる。
「ごめんなさい……」消え入りそうな声で謝り、俯いた。重い沈黙。
「ったく……」小さな舌打ちとともに、靴音がこちらに戻ってくる。
身構えて顔を上げたとたん、体が宙に浮いた。
次元さんが私を抱き上げたのだ。
「⁉︎」私は声にならない声をあげ、彼の腕から逃れようと手足をばたつかせた。
「ちょっ、ちょっと!」
「暴れるな。落とすぞ」
慌てて次元さんの首に腕を回した。
言葉は乱暴なのにその口調はどこか暖かさが滲んでいて、私は戸惑う。
次元さんは私をそっとベッドに下ろしてくれた。
私は黙って彼を見上げた。どこか冷たく無表情なその顔に、心が引っかかるような感じがした。
じっと見ていたら彼は無表情のまま、「寝ろ」とだけ言った。その声にはやっぱり、どこか優しさが滲んでいた。
怖いのに優しいなんて、訳がわからない。
この人は一体……。
シーツの間に潜り込むと、途端に睡魔が訪れる。
「綾……」
次元さんが何かを言っているが、もう目を開けることができなかった。