記憶のかけら
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見晴し台からは、藍鉄色の夜の海が遠くに広がっているのが見えた。時折風が木々を揺らす他は、辺りはしんと静まり返っている。
私たちも、それまでの賑やかさが嘘みたいに黙り込んでいた。
(楽しかったな……)
ロッカーに残されていた物のことも、自分が何者なのかという不安も、次元さんと一緒にいるうちにすっかり忘れていた。ふざけたり、ムキになったり、笑ったり。ずっとこんな風に過ごしてきたみたいに、ごく自然に振る舞う自分が不思議なくらいだった。
少し冷たくなった夜風が私の肩を撫で、スカートを翻していく。
(何か羽織ってくればよかったかな……)
そう思った瞬間、次元さんが無言でジャケットを脱いで肩にかけてくれた。
煙草の匂いと肌に触れる温もりが、どこか懐かしい。
次元さんの手が肩から離れ、その指が私の髪に触れて────ほんのわずかに、止まる。
「……っ」私は息を呑んだ。
次元さんの顔がすぐ目の前にある。頬の無精髭、風に揺れる前髪、そして……目。その目を見た瞬間、もうだめだった。
優しい目だった。
真っ直ぐで、でもどこか寂しげで。
(こんな目をする人が、あの銃を持つ人だなんて)
時折見せた、あの鋭い目つき。
ルパンさんとの怪しげな会話。
この人にはきっと、危険な一面がある。
それなのに。私が何か気付いていると、きっと分かっている筈なのに。
いま目の前の次元さんは、どこまでも優しく、静かに私を見つめている。
胸が痛いほど締め付けられる。
喉の奥が熱くなった。
涙が出そうになった。
「次元さん……」
呼びかけた途端、彼はそっと視線を外し、僅かに距離をとった。
「冷えてきたな。帰るか」
そう言って歩き出した彼の背中を、私はただ見つめることしかできなかった。
私たちも、それまでの賑やかさが嘘みたいに黙り込んでいた。
(楽しかったな……)
ロッカーに残されていた物のことも、自分が何者なのかという不安も、次元さんと一緒にいるうちにすっかり忘れていた。ふざけたり、ムキになったり、笑ったり。ずっとこんな風に過ごしてきたみたいに、ごく自然に振る舞う自分が不思議なくらいだった。
少し冷たくなった夜風が私の肩を撫で、スカートを翻していく。
(何か羽織ってくればよかったかな……)
そう思った瞬間、次元さんが無言でジャケットを脱いで肩にかけてくれた。
煙草の匂いと肌に触れる温もりが、どこか懐かしい。
次元さんの手が肩から離れ、その指が私の髪に触れて────ほんのわずかに、止まる。
「……っ」私は息を呑んだ。
次元さんの顔がすぐ目の前にある。頬の無精髭、風に揺れる前髪、そして……目。その目を見た瞬間、もうだめだった。
優しい目だった。
真っ直ぐで、でもどこか寂しげで。
(こんな目をする人が、あの銃を持つ人だなんて)
時折見せた、あの鋭い目つき。
ルパンさんとの怪しげな会話。
この人にはきっと、危険な一面がある。
それなのに。私が何か気付いていると、きっと分かっている筈なのに。
いま目の前の次元さんは、どこまでも優しく、静かに私を見つめている。
胸が痛いほど締め付けられる。
喉の奥が熱くなった。
涙が出そうになった。
「次元さん……」
呼びかけた途端、彼はそっと視線を外し、僅かに距離をとった。
「冷えてきたな。帰るか」
そう言って歩き出した彼の背中を、私はただ見つめることしかできなかった。