目覚め
name change
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翌日。退院の数時間前になると、ノワールさんがやって来た。
ポケットに手を突っ込み、やや背中を丸めながら、のそりと病室に入ってくる。
「相棒は仕事でな」とのことで、彼一人だった。
(名前、まだ聞いてなかったな……)
私はノワールさんを見上げた。視線に気づいた彼と目が合う。
「何だ」
「いえ、なんでもないです」
鋭い眼差しにドキッとして、慌てて目をそらした。
彼は名前を名乗ることに思いが至らない様子だった。
気軽に聞ける雰囲気でもなく、仕方なく私はこのまま『ノワールさん』と呼ぶことにした。もちろん、脳内で。
彼と私を前に医師は、「記憶はいずれ戻るだろうが時期は分からない」と言った。
すぐに思い出すかもしれないし、何年もかかってやっと、という事もあるらしい。
そして、思い出すために、過去の思い出につながる人や物や場所に触れることを勧められた。
(そうは言っても……)
病院の通路を歩きながら、私は考える。
大切な人。宝物。思い出の場所。
そんなもの何ひとつ覚えていないのに、どうやって探せというのだろう。
ポケットに手を突っ込み、やや背中を丸めながら、のそりと病室に入ってくる。
「相棒は仕事でな」とのことで、彼一人だった。
(名前、まだ聞いてなかったな……)
私はノワールさんを見上げた。視線に気づいた彼と目が合う。
「何だ」
「いえ、なんでもないです」
鋭い眼差しにドキッとして、慌てて目をそらした。
彼は名前を名乗ることに思いが至らない様子だった。
気軽に聞ける雰囲気でもなく、仕方なく私はこのまま『ノワールさん』と呼ぶことにした。もちろん、脳内で。
彼と私を前に医師は、「記憶はいずれ戻るだろうが時期は分からない」と言った。
すぐに思い出すかもしれないし、何年もかかってやっと、という事もあるらしい。
そして、思い出すために、過去の思い出につながる人や物や場所に触れることを勧められた。
(そうは言っても……)
病院の通路を歩きながら、私は考える。
大切な人。宝物。思い出の場所。
そんなもの何ひとつ覚えていないのに、どうやって探せというのだろう。