記憶のかけら
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数分後、私たちはシアターの前に立っていた。
「……で、何を見るんだ?」
次元さんが映画のポスターを見ながら言った。その横で、私もラインナップを眺める。
「えぇと……あの『今世紀最大のアクション超大作』ってやつはどうですか」
次元さんは呆れたように眉を上げる。
「お前、『全米が泣いた』大ヒット作を差し置いて、それ選ぶか?」
「スカッとしますよ。世界も救われるし」
「……お前らしいな」
「えっ」
私らしい……記憶喪失になる前の私ってこと?
次元さんを見上げる。彼はポスターに視線を向けたままだ。
「普通、こういう時は『運命に引き裂かれる二人』とか観んだろ……」
「他人の恋愛を覗き見る趣味はありません」
「おい、言い方……」
そのツッコミが妙に可笑しくて、思わず笑ってしまった。
「じゃあ折衷案で、この『世界を震撼させた』っていうホラーはどうです?」
「却下だ、そんなもん!」
即答だった。
「怖かった……」
まだバクバクしている胸を押さえながら私は呟いた。
「ほらみろ、言わんこっちゃねぇ。お前の折衷案なんか、二度と聞かないからな」
そう言う次元さんも、見終わってから妙に落ち着きがない。
私はクスッと笑った。
「そんなこと言うと、夜怖くてもトイレについて行ってあげませんよ」
「怖くねぇよ!」
そんなやりとりをしながら、私達はシアターに併設されたショッピングセンターを歩いていた。
流れてくる明るい音楽に、心なしか足取りも軽くなる。
「あっ」
気になるものを見つけた私は、駆けていって店の入口から次元さんを手招きした。次元さんはポケットに両手を突っ込んだまま、ゆっくり近づいてくる。
「何だ」
「あの帽子。絶対、次元さんに似合いますよ」
マネキンがかぶっているグレーのハンチングを指差すと、次元さんはため息をついた。
「帽子なら間に合ってる」
「そう言わずに、試してみるだけ」
私は背伸びをして次元さんの帽子を取り、マネキンの帽子と取り替えた。
「うーん……イマイチ……?」
「お前な……」次元さんは苦笑いした。
「俺だって色々試したことぐらいある。その上で、これに決まってんだ」
「へぇ……」私は頷く。
「まぁ、昔の話さ」次元さんはそう言って、自分の帽子を被ろうとした。
そこへ私は、後ろ手に隠し持っていた帽子を素早く被せた。
ルパンさんを思わせる、真っ赤なニット帽。
「似合ってますよ、次元さん!」
私は手を叩いて笑った。
「俺で遊ぶな!」
「ふふ、鏡を見てください、ほら」
「笑いすぎだ、お前……」
次元さんも笑う。
ふと、胸の奥にやわらかい波紋のような感覚が広がった。
(前にも、こんな風に笑い合ったことがあるような気がする……)
思い出せそうで、思い出せない。
でも確かに、その笑顔には、どこか懐かしさがあった。
「……で、何を見るんだ?」
次元さんが映画のポスターを見ながら言った。その横で、私もラインナップを眺める。
「えぇと……あの『今世紀最大のアクション超大作』ってやつはどうですか」
次元さんは呆れたように眉を上げる。
「お前、『全米が泣いた』大ヒット作を差し置いて、それ選ぶか?」
「スカッとしますよ。世界も救われるし」
「……お前らしいな」
「えっ」
私らしい……記憶喪失になる前の私ってこと?
次元さんを見上げる。彼はポスターに視線を向けたままだ。
「普通、こういう時は『運命に引き裂かれる二人』とか観んだろ……」
「他人の恋愛を覗き見る趣味はありません」
「おい、言い方……」
そのツッコミが妙に可笑しくて、思わず笑ってしまった。
「じゃあ折衷案で、この『世界を震撼させた』っていうホラーはどうです?」
「却下だ、そんなもん!」
即答だった。
「怖かった……」
まだバクバクしている胸を押さえながら私は呟いた。
「ほらみろ、言わんこっちゃねぇ。お前の折衷案なんか、二度と聞かないからな」
そう言う次元さんも、見終わってから妙に落ち着きがない。
私はクスッと笑った。
「そんなこと言うと、夜怖くてもトイレについて行ってあげませんよ」
「怖くねぇよ!」
そんなやりとりをしながら、私達はシアターに併設されたショッピングセンターを歩いていた。
流れてくる明るい音楽に、心なしか足取りも軽くなる。
「あっ」
気になるものを見つけた私は、駆けていって店の入口から次元さんを手招きした。次元さんはポケットに両手を突っ込んだまま、ゆっくり近づいてくる。
「何だ」
「あの帽子。絶対、次元さんに似合いますよ」
マネキンがかぶっているグレーのハンチングを指差すと、次元さんはため息をついた。
「帽子なら間に合ってる」
「そう言わずに、試してみるだけ」
私は背伸びをして次元さんの帽子を取り、マネキンの帽子と取り替えた。
「うーん……イマイチ……?」
「お前な……」次元さんは苦笑いした。
「俺だって色々試したことぐらいある。その上で、これに決まってんだ」
「へぇ……」私は頷く。
「まぁ、昔の話さ」次元さんはそう言って、自分の帽子を被ろうとした。
そこへ私は、後ろ手に隠し持っていた帽子を素早く被せた。
ルパンさんを思わせる、真っ赤なニット帽。
「似合ってますよ、次元さん!」
私は手を叩いて笑った。
「俺で遊ぶな!」
「ふふ、鏡を見てください、ほら」
「笑いすぎだ、お前……」
次元さんも笑う。
ふと、胸の奥にやわらかい波紋のような感覚が広がった。
(前にも、こんな風に笑い合ったことがあるような気がする……)
思い出せそうで、思い出せない。
でも確かに、その笑顔には、どこか懐かしさがあった。