記憶のかけら
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私は静かにソファに座り直した。
頭の中でさっきの出来事を反芻する。
何かを思い出しかけたんだろうか。
ほんの一瞬で、靄がかかったように不鮮明だったけれど……
「綾」
次元さんの声で私は顔を上げた。
彼はじっと私を見ていた。一瞬垣間見えた心配そうな表情が、すぐに帽子の陰に消える。
「今日、一日付き合え」
「え……?」
目を瞬かせる私に、次元さんは少し語気を落とす。
「……気分転換でもどうかって言ってんだよ」
私のため、ってこと?
「どこか行きたい場所はあるか?」
「思い出の場所……」
「うん?」
「病院の先生が言ってました。思い出に触れなさいって。知ることと思い出すことは違うっていう次元さんの考えは分かりますけど、でも……」
声が自然と小さくなる。
「連れて行ってほしいんです……」
沈黙。
次元さんはすぐには答えなかった。
ただ、じっと私を見つめる。その目がやけに真剣で────逃げたくなるくらいだった。
「……ああ」
やがて彼は短くそう言って、帽子を目深にかぶり直した。そして、静かに視線を逸らす。
「支度しろ」
それだけ言い残して、彼は背を向けた。
モールでルパンさんが選んでくれたワンピースは、クローゼットの中でずっとタグが付いたままだった。
(いつものシャツとジーンズじゃ、ちょっと……)
そんな気持ちで袖を通したけれど、何だか落ち着かない。
「……変じゃないかな」
鏡の前で何度も回転する。その度に、シフォンのスカートがふわふわと揺れた。
ドアがノックされ、「行くぞ」と次元さんの声がした。
ゆっくりドアを開けて廊下に出る。次元さんの目が私を見た瞬間、ふっと細められた。
「どう、です、か……?」
次元さんは少し視線を逸らすと、帽子のつばをいじりながら、ぼそっと言った。
「……似合ってるよ」
その声は小さくて、でも、ちゃんと聞こえた。
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じながら、彼の後ろをついて階段を下りる。
車に乗り込むと、次元さんはいつものように無言で海岸線を走っていく。
何を話せば良いか分からない。緊張という程ではないが、まだ胸の奥がざわついている。
私は窓の外へ視線を向けた。朝の光を受けてきらきら光る海が広がっている。
「……いい天気ですね」
「そうだな」
短い返事。でもその声は、どこかやわらかかった。
頭の中でさっきの出来事を反芻する。
何かを思い出しかけたんだろうか。
ほんの一瞬で、靄がかかったように不鮮明だったけれど……
「綾」
次元さんの声で私は顔を上げた。
彼はじっと私を見ていた。一瞬垣間見えた心配そうな表情が、すぐに帽子の陰に消える。
「今日、一日付き合え」
「え……?」
目を瞬かせる私に、次元さんは少し語気を落とす。
「……気分転換でもどうかって言ってんだよ」
私のため、ってこと?
「どこか行きたい場所はあるか?」
「思い出の場所……」
「うん?」
「病院の先生が言ってました。思い出に触れなさいって。知ることと思い出すことは違うっていう次元さんの考えは分かりますけど、でも……」
声が自然と小さくなる。
「連れて行ってほしいんです……」
沈黙。
次元さんはすぐには答えなかった。
ただ、じっと私を見つめる。その目がやけに真剣で────逃げたくなるくらいだった。
「……ああ」
やがて彼は短くそう言って、帽子を目深にかぶり直した。そして、静かに視線を逸らす。
「支度しろ」
それだけ言い残して、彼は背を向けた。
モールでルパンさんが選んでくれたワンピースは、クローゼットの中でずっとタグが付いたままだった。
(いつものシャツとジーンズじゃ、ちょっと……)
そんな気持ちで袖を通したけれど、何だか落ち着かない。
「……変じゃないかな」
鏡の前で何度も回転する。その度に、シフォンのスカートがふわふわと揺れた。
ドアがノックされ、「行くぞ」と次元さんの声がした。
ゆっくりドアを開けて廊下に出る。次元さんの目が私を見た瞬間、ふっと細められた。
「どう、です、か……?」
次元さんは少し視線を逸らすと、帽子のつばをいじりながら、ぼそっと言った。
「……似合ってるよ」
その声は小さくて、でも、ちゃんと聞こえた。
胸の奥がじんわり熱くなるのを感じながら、彼の後ろをついて階段を下りる。
車に乗り込むと、次元さんはいつものように無言で海岸線を走っていく。
何を話せば良いか分からない。緊張という程ではないが、まだ胸の奥がざわついている。
私は窓の外へ視線を向けた。朝の光を受けてきらきら光る海が広がっている。
「……いい天気ですね」
「そうだな」
短い返事。でもその声は、どこかやわらかかった。