日常と違和感
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
着いたのはあの見晴し台だった。
次元さんは海の方を向いたまま、煙草をくわえた。帽子のつばを指先で持ち上げる。
「……良い天気だな」
「……そうですね」
それっきり会話は途切れる。
横目で次元さんを窺う。
───怖い。
いつもぶっきらぼうで、飄々としていて。何を考えているのか全く読めない。
「最近、眠れてるか?」
唐突に、そんなことを聞かれた。
「え?」
思わず彼の顔を見る。次元さんは特にこちらを見ようともせず、煙を吐いた。
「……いや、なんでもねぇ」
眠れているかどうかなんて。
どうしてそんなことを聞くの?
私は視線を落とし、砂利をつま先でそっと転がした。
「……お前さ」
不意に呼ばれて顔を上げた瞬間、ふわりと視界が揺らいだ。
次元さんがすぐ目の前に立っていた。
風が私の髪を靡かせ、彼の上着の裾を翻す。
潮風とともに煙草の匂いが鼻をかすめた。
「なんかあったのか」
低く落ち着いた声。
その響きが妙に耳に残る。
「な、何も……ないです」
答えながら、自分の鼓動が速くなっているのに気づいた。
彼の視線が射抜くように私を見つめている。
怖い────
怖いのに、目を逸らすことができない。
私はそのまま、じっと彼を見つめ返していた。
帰りの車内も、二人ともずっと黙ったままだった。エンジン音と風の音だけが静かに響く。
私は窓の外をぼんやり眺めていた。
心の中がぐちゃぐちゃだった。
不安と焦り、恐怖。それから、言い様のない苦しさ。次元さんを見るたびに、それらがないまぜになって胸を締め付けた。
家の前で車が停まる。
エンジンを止めた次元さんはため息をついた。
「結局、お前がお前が思い出せば済むことだ」
「えっ」
私は混乱した。
『コッチのことはバレるわけにはいかねぇんだから』
思い出して欲しいのか、そうでないのか、全く分からなくなる。
「その不安も、焦りも、思い出せば全部解決する」次元さんが言った。
思い出したら『消される』のに?
それが次元さんの言う『解決』なの?
「か、簡単に言わないで……!」思わず声が大きくなる。
次元さんは驚いたように一瞬目を見開いたが、すぐに表情を戻した。
「簡単に、か……」
「だって、そうでしょう⁉︎ 私がどんな気持ちで……」
胸の中でずっと燻っていたものが一気に溢れ出す。
次元さんはため息をついた。その態度がさらに私を苛立たせる。
「人の気も知らないで!」
「そりゃ知らねぇよ。お前が言わねぇんだから」
「ひどい……!」
次元さんはそれ以上何も言わず、車から降りた。ドアが乱暴に閉められる。
私はひとり車の中に残された。
次元さんは海の方を向いたまま、煙草をくわえた。帽子のつばを指先で持ち上げる。
「……良い天気だな」
「……そうですね」
それっきり会話は途切れる。
横目で次元さんを窺う。
───怖い。
いつもぶっきらぼうで、飄々としていて。何を考えているのか全く読めない。
「最近、眠れてるか?」
唐突に、そんなことを聞かれた。
「え?」
思わず彼の顔を見る。次元さんは特にこちらを見ようともせず、煙を吐いた。
「……いや、なんでもねぇ」
眠れているかどうかなんて。
どうしてそんなことを聞くの?
私は視線を落とし、砂利をつま先でそっと転がした。
「……お前さ」
不意に呼ばれて顔を上げた瞬間、ふわりと視界が揺らいだ。
次元さんがすぐ目の前に立っていた。
風が私の髪を靡かせ、彼の上着の裾を翻す。
潮風とともに煙草の匂いが鼻をかすめた。
「なんかあったのか」
低く落ち着いた声。
その響きが妙に耳に残る。
「な、何も……ないです」
答えながら、自分の鼓動が速くなっているのに気づいた。
彼の視線が射抜くように私を見つめている。
怖い────
怖いのに、目を逸らすことができない。
私はそのまま、じっと彼を見つめ返していた。
帰りの車内も、二人ともずっと黙ったままだった。エンジン音と風の音だけが静かに響く。
私は窓の外をぼんやり眺めていた。
心の中がぐちゃぐちゃだった。
不安と焦り、恐怖。それから、言い様のない苦しさ。次元さんを見るたびに、それらがないまぜになって胸を締め付けた。
家の前で車が停まる。
エンジンを止めた次元さんはため息をついた。
「結局、お前がお前が思い出せば済むことだ」
「えっ」
私は混乱した。
『コッチのことはバレるわけにはいかねぇんだから』
思い出して欲しいのか、そうでないのか、全く分からなくなる。
「その不安も、焦りも、思い出せば全部解決する」次元さんが言った。
思い出したら『消される』のに?
それが次元さんの言う『解決』なの?
「か、簡単に言わないで……!」思わず声が大きくなる。
次元さんは驚いたように一瞬目を見開いたが、すぐに表情を戻した。
「簡単に、か……」
「だって、そうでしょう⁉︎ 私がどんな気持ちで……」
胸の中でずっと燻っていたものが一気に溢れ出す。
次元さんはため息をついた。その態度がさらに私を苛立たせる。
「人の気も知らないで!」
「そりゃ知らねぇよ。お前が言わねぇんだから」
「ひどい……!」
次元さんはそれ以上何も言わず、車から降りた。ドアが乱暴に閉められる。
私はひとり車の中に残された。