日常と違和感
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「もう少し良いか? 寄りたい所がある」
帰り道、次元さんがそんな事を言い出した。
海岸線を走り、車は道路脇の小さな駐車場で停まる。
「ここは……」
林道を抜けると、海の見える見晴らし台に出る。私は(やっぱり)と思って海を見つめた。
夕闇のなか、鈍色の海は強い風にさらされて、白いさざなみが立っていた。
「ここって、退院した帰りに来ましたよね」
「退院した時に寄ったの?」
驚いたように尋ねるルパンさんに、私は小さくうなずいた。
「へぇ……」ルパンさんは口元に薄く笑みを浮かべた。その視線に気づいた次元さんが、目を細める。
「何だよ」
「別に?」ルパンが肩をすくめた。
「何でかなーって思って」
「何でって……」私は少し考えてから、あることに気がついた。
「もしかして……お医者さんが『思い出に触れろ』って言ったから……?」
次元さんに視線を向けると、彼は「別に深い意味はねぇよ」とぶっきらぼうに言って、そっぽを向いた。
彼は煙草を取り出して火をつける。ライターの小さな炎が一瞬、彼の顔を照らし出した。オレンジの光が頬に揺れ、険しい横顔を浮かび上がらせる。
何か言いたそうに、でもそれを煙と一緒に吐き出してしまうように、次元さんは長く息をついた。
「それで、綾。ここへ来て何か感じるかい?」
ルパンさんに聞かれて私は辺りを見回した。
薄暗い見晴らし台は静かで、時折風に木の葉がざわめく。空には暗闇が広がるけれど、雲に隠れて星は見えなかった。
「……」私は首を振った。
何かがすぐそこにあるのに、掴もうとすると逃げてしまうように感じた。
次元さんは何も言わなかった。彼は煙草をくゆらせながら、しばらく無言で空を見上げていた。
煙がゆっくりと夜の闇に溶けていく。何かがその先にあるように、じっと目を凝らしていた。
帰り道、次元さんがそんな事を言い出した。
海岸線を走り、車は道路脇の小さな駐車場で停まる。
「ここは……」
林道を抜けると、海の見える見晴らし台に出る。私は(やっぱり)と思って海を見つめた。
夕闇のなか、鈍色の海は強い風にさらされて、白いさざなみが立っていた。
「ここって、退院した帰りに来ましたよね」
「退院した時に寄ったの?」
驚いたように尋ねるルパンさんに、私は小さくうなずいた。
「へぇ……」ルパンさんは口元に薄く笑みを浮かべた。その視線に気づいた次元さんが、目を細める。
「何だよ」
「別に?」ルパンが肩をすくめた。
「何でかなーって思って」
「何でって……」私は少し考えてから、あることに気がついた。
「もしかして……お医者さんが『思い出に触れろ』って言ったから……?」
次元さんに視線を向けると、彼は「別に深い意味はねぇよ」とぶっきらぼうに言って、そっぽを向いた。
彼は煙草を取り出して火をつける。ライターの小さな炎が一瞬、彼の顔を照らし出した。オレンジの光が頬に揺れ、険しい横顔を浮かび上がらせる。
何か言いたそうに、でもそれを煙と一緒に吐き出してしまうように、次元さんは長く息をついた。
「それで、綾。ここへ来て何か感じるかい?」
ルパンさんに聞かれて私は辺りを見回した。
薄暗い見晴らし台は静かで、時折風に木の葉がざわめく。空には暗闇が広がるけれど、雲に隠れて星は見えなかった。
「……」私は首を振った。
何かがすぐそこにあるのに、掴もうとすると逃げてしまうように感じた。
次元さんは何も言わなかった。彼は煙草をくゆらせながら、しばらく無言で空を見上げていた。
煙がゆっくりと夜の闇に溶けていく。何かがその先にあるように、じっと目を凝らしていた。