第2話
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「今日は黒ずくめじゃないんですね」
エレベーターを降りる頃には驚きもだいぶおさまって、私はようやく口を開いた。
「こうした方が良いという気持ちになったんだ。スミスもね」
ジョンは私のためにさりげなくエレベーターのドアを抑えながら答えた。
「まぁ、いつもの服装よりは目立たないし、かえって良いのかもしれないな」
いや、これはこれでものすごく目立ってますけど。
すれ違う人たちの視線を浴びながら、私はなるべく小さくなって歩くのだった。
連れてこられたのは高層ビルの最上階にあるバーだった。
慣れない雰囲気に怖気づきながら、勧められるままにカウンターの椅子に腰かける。
「私、お酒はあまり……」
ジョンは笑って、モクテルを頼んでくれた。
私がそれを飲んでいる間に、ジョンとスミスは私の作ったルパンの資料に目を通した。
「昨日の今日で、よくこれだけ詳細な資料を作ってくれたな。助かる」
「いえ、そんな。好きなものにかける情熱は誰でもこんなものでしょう」
「それじゃ綾」ジョンは椅子を回転させて体ごと私の方を向き、カウンターに片肘をついて頬杖をした。
イケメンは何をしても様になる。
「これを踏まえて、ルパンは次にどんな行動に出ると思う?」
ルパンがどこに現れるのかを予測するためだろう。
私は視線を手もとのグラスに落とした。
ルパンは身ひとつでこの世界にやってきた。つまり、お金がない。
「やっぱり、お金じゃないですか?」私は顔を上げた。
「この世界で生きていくのにお金が必要でしょ」
マンハッタン銀行、スイス銀行、マイアミにストックホルム。ルパンが狙った銀行を思い出す。
「日本の銀行なんて、ルパンにとってチョロいもんだわ」
「本当にそう思うか?」スミスが言った。
「銀行はかなりセキュリティが高い。ルパンの世界より、かなりな。ルパンがいつものように銀行に侵入したとしても、金庫は破れないだろう。現実はそう甘くはない」
心臓がドクンと跳ねた。
「駅前に銀行があったのはルパンも見たはずだ。狙うならあそこか」
「捕まるのは時間の問題だな」
ジョンとスミスはそう話し合っている。
私にしてみれば、ルパンが捕まるなんてあり得ない。
そう、何らかの目的のために自ら捕まるのでなければあり得ないのだ。
たとえ金庫破りが不可能だとしても、きっと彼は何とかするだろう。
転んでもただでは起きない男、それがルパン三世だ。
「ルパンを捕まえたとして、彼をどうするんですか?」私は尋ねた。
「早急に捕らえて元の世界に返さなければならない。グズグズしていると、この世界を歪ませることになりかねない」
歪む。言っていることがよく分からない。
「歪むと、どうなるんですか?」
「それは……」
スミスが言いかけた時。
大きなビープ音が鳴った。
ジョンが手もとの時計を見る。
ついさっき会社で見たときは普通の文字盤だったそれが、今は何かデジタル文字が流れては消えていく。
「ルパンが駅前の銀行に現れたようだ。スミス!」
ジョンがスミスを振り返った。スミスは軽くうなずくと、サッと姿を消した。
何が起きたのだろう。
「この警告音は歪みを探知した音だ」
「……ルパンが原因なんですか?」
「このタイミングだ、まず間違い無い。この世界の人間が歪みを生み出すことはないからな」
ジョンは厳しい顔をして、それきり黙り込んでしまった。
エレベーターを降りる頃には驚きもだいぶおさまって、私はようやく口を開いた。
「こうした方が良いという気持ちになったんだ。スミスもね」
ジョンは私のためにさりげなくエレベーターのドアを抑えながら答えた。
「まぁ、いつもの服装よりは目立たないし、かえって良いのかもしれないな」
いや、これはこれでものすごく目立ってますけど。
すれ違う人たちの視線を浴びながら、私はなるべく小さくなって歩くのだった。
連れてこられたのは高層ビルの最上階にあるバーだった。
慣れない雰囲気に怖気づきながら、勧められるままにカウンターの椅子に腰かける。
「私、お酒はあまり……」
ジョンは笑って、モクテルを頼んでくれた。
私がそれを飲んでいる間に、ジョンとスミスは私の作ったルパンの資料に目を通した。
「昨日の今日で、よくこれだけ詳細な資料を作ってくれたな。助かる」
「いえ、そんな。好きなものにかける情熱は誰でもこんなものでしょう」
「それじゃ綾」ジョンは椅子を回転させて体ごと私の方を向き、カウンターに片肘をついて頬杖をした。
イケメンは何をしても様になる。
「これを踏まえて、ルパンは次にどんな行動に出ると思う?」
ルパンがどこに現れるのかを予測するためだろう。
私は視線を手もとのグラスに落とした。
ルパンは身ひとつでこの世界にやってきた。つまり、お金がない。
「やっぱり、お金じゃないですか?」私は顔を上げた。
「この世界で生きていくのにお金が必要でしょ」
マンハッタン銀行、スイス銀行、マイアミにストックホルム。ルパンが狙った銀行を思い出す。
「日本の銀行なんて、ルパンにとってチョロいもんだわ」
「本当にそう思うか?」スミスが言った。
「銀行はかなりセキュリティが高い。ルパンの世界より、かなりな。ルパンがいつものように銀行に侵入したとしても、金庫は破れないだろう。現実はそう甘くはない」
心臓がドクンと跳ねた。
「駅前に銀行があったのはルパンも見たはずだ。狙うならあそこか」
「捕まるのは時間の問題だな」
ジョンとスミスはそう話し合っている。
私にしてみれば、ルパンが捕まるなんてあり得ない。
そう、何らかの目的のために自ら捕まるのでなければあり得ないのだ。
たとえ金庫破りが不可能だとしても、きっと彼は何とかするだろう。
転んでもただでは起きない男、それがルパン三世だ。
「ルパンを捕まえたとして、彼をどうするんですか?」私は尋ねた。
「早急に捕らえて元の世界に返さなければならない。グズグズしていると、この世界を歪ませることになりかねない」
歪む。言っていることがよく分からない。
「歪むと、どうなるんですか?」
「それは……」
スミスが言いかけた時。
大きなビープ音が鳴った。
ジョンが手もとの時計を見る。
ついさっき会社で見たときは普通の文字盤だったそれが、今は何かデジタル文字が流れては消えていく。
「ルパンが駅前の銀行に現れたようだ。スミス!」
ジョンがスミスを振り返った。スミスは軽くうなずくと、サッと姿を消した。
何が起きたのだろう。
「この警告音は歪みを探知した音だ」
「……ルパンが原因なんですか?」
「このタイミングだ、まず間違い無い。この世界の人間が歪みを生み出すことはないからな」
ジョンは厳しい顔をして、それきり黙り込んでしまった。