第2話
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「綾。さっきから携帯ばっかり見てるね」
マキに指摘され、慌てて携帯をデスクに戻す。
「そ、そうかな」
「あやしいなー。彼氏?」
「いや、そういうのじゃなくて」
あの怪しい風貌の男ふたりを、なんて説明すればいいのだろう。
『時空管理局のエージェントです』なんて言ったら、中二病の後遺症かと生ぬるい目で見られてしまう。
誤魔化さなければと思ったその時、入口付近がなにやら騒がしくなった。
うちの会社は小さなオフィスビルの2階のワンフロア。
パーテーションで区画されてはいるが、パーテーションが低いので少し背伸びをすれば社内全体が見渡せる。
入口には受付係はもちろん、入口付近にいた女子社員が詰めかけて、ちょっとした人だかりになっていた。
きゃーという黄色い声も聞こえる。
何事かと見守っていると、その全員が一斉にこちらを振り返った。
「えっ? えっ?」
自分の背後を振り返るが私のデスクは壁際だ。壁以外、何もない。
「早く来て! お客様よ!」
「わ、私?」
手招きされて、思わず自分を指さして確認してしまった。
うっとりしたため息を漏らす女子社員をかきわけて受付にたどり着く。
立っていたのは見知らぬ外国人男性だった。
身に纏っているのは仕立てのよさそうなダークブラウンのスリーピース。
「やぁ」と軽く上げた片腕からチラリと覗くのは、ブランドに疎い私にも高級そうなことだけは分かる大判フェイスの立派な腕時計。
涼しげな目もとにスッと通った鼻筋、薄い唇。
襟足長めの髪はすっきり後ろに流していて清潔感がある。
背丈はここにいる男性社員たちより頭ひとつ分は高い。
誰デスカ、コノヒト……?
まるで二次元から飛び出してきたみたいなイケオジに、私の思考は完全にストップした。
「誰だ、って顔をしているね」
男はクスリと笑った。周りの女子社員からため息が漏れる。
「さっき電話をくれただろう。待ちきれなくて迎えに来てしまったんだが、迷惑だっただろうか」
まさか。噓でしょ?
驚きすぎて言葉も出ない。ただ金魚のように口をパクパクさせるだけ。
「スミスが外で待っているから、行こう」
ジョンの言動をひとつも漏らすまいと固唾を呑んで見守っていた女子社員が一斉に窓の方へ向かった。
まるでアイドルを追いかけるパパラッチだ。
その波に呑まれ、私も一緒に窓際へ追いやられる。
オフィスの窓は表通りに面している。
お昼にはお弁当屋さんが来ていて、わざわざ出ていかなくても上から日替わりランチのメニューが分って便利だ。
窓からちょうど正面に見える街灯のあたりに、男性が立っていた。
ダークブロンドのソフト七三。
ラペルの細いシンプルなダークスーツはきちんとした素材のおかげで体にぴったりと沿っている。
厚い胸板。服の上からでも分かるマッチョ体型。
少し奥目のブルーアイに下がり気味の眉毛が少し寂し気な印象を与える。
薄い唇、頑丈そうな顎。
「なんっ……」
声にならない声。
もちろん大声で何かを言ったとしても聞こえるはずもないのに、彼はこちらを見上げて私に片手をあげて見せた。
「ジェームズ・ボンド……」マキが呟いた。
「綾、急いでくれないか」入口からジョンが私を呼んだ。
「お、お先に失礼します……」
全社員の視線を浴びながら、私は慌てて鞄を手に会社を出た。
マキに指摘され、慌てて携帯をデスクに戻す。
「そ、そうかな」
「あやしいなー。彼氏?」
「いや、そういうのじゃなくて」
あの怪しい風貌の男ふたりを、なんて説明すればいいのだろう。
『時空管理局のエージェントです』なんて言ったら、中二病の後遺症かと生ぬるい目で見られてしまう。
誤魔化さなければと思ったその時、入口付近がなにやら騒がしくなった。
うちの会社は小さなオフィスビルの2階のワンフロア。
パーテーションで区画されてはいるが、パーテーションが低いので少し背伸びをすれば社内全体が見渡せる。
入口には受付係はもちろん、入口付近にいた女子社員が詰めかけて、ちょっとした人だかりになっていた。
きゃーという黄色い声も聞こえる。
何事かと見守っていると、その全員が一斉にこちらを振り返った。
「えっ? えっ?」
自分の背後を振り返るが私のデスクは壁際だ。壁以外、何もない。
「早く来て! お客様よ!」
「わ、私?」
手招きされて、思わず自分を指さして確認してしまった。
うっとりしたため息を漏らす女子社員をかきわけて受付にたどり着く。
立っていたのは見知らぬ外国人男性だった。
身に纏っているのは仕立てのよさそうなダークブラウンのスリーピース。
「やぁ」と軽く上げた片腕からチラリと覗くのは、ブランドに疎い私にも高級そうなことだけは分かる大判フェイスの立派な腕時計。
涼しげな目もとにスッと通った鼻筋、薄い唇。
襟足長めの髪はすっきり後ろに流していて清潔感がある。
背丈はここにいる男性社員たちより頭ひとつ分は高い。
誰デスカ、コノヒト……?
まるで二次元から飛び出してきたみたいなイケオジに、私の思考は完全にストップした。
「誰だ、って顔をしているね」
男はクスリと笑った。周りの女子社員からため息が漏れる。
「さっき電話をくれただろう。待ちきれなくて迎えに来てしまったんだが、迷惑だっただろうか」
まさか。噓でしょ?
驚きすぎて言葉も出ない。ただ金魚のように口をパクパクさせるだけ。
「スミスが外で待っているから、行こう」
ジョンの言動をひとつも漏らすまいと固唾を呑んで見守っていた女子社員が一斉に窓の方へ向かった。
まるでアイドルを追いかけるパパラッチだ。
その波に呑まれ、私も一緒に窓際へ追いやられる。
オフィスの窓は表通りに面している。
お昼にはお弁当屋さんが来ていて、わざわざ出ていかなくても上から日替わりランチのメニューが分って便利だ。
窓からちょうど正面に見える街灯のあたりに、男性が立っていた。
ダークブロンドのソフト七三。
ラペルの細いシンプルなダークスーツはきちんとした素材のおかげで体にぴったりと沿っている。
厚い胸板。服の上からでも分かるマッチョ体型。
少し奥目のブルーアイに下がり気味の眉毛が少し寂し気な印象を与える。
薄い唇、頑丈そうな顎。
「なんっ……」
声にならない声。
もちろん大声で何かを言ったとしても聞こえるはずもないのに、彼はこちらを見上げて私に片手をあげて見せた。
「ジェームズ・ボンド……」マキが呟いた。
「綾、急いでくれないか」入口からジョンが私を呼んだ。
「お、お先に失礼します……」
全社員の視線を浴びながら、私は慌てて鞄を手に会社を出た。