第2話
name change
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とんでもない出来事から一夜明け、私は少し早く出社した。
今日の仕事を早々に片付け、例のふたり組に頼まれたルパンに関する資料作りに取りかかるためだ。
黒ずくめ曰く『ルパンが架空の人物であるという事実が消えた』ために、大事にしていたDVDもこつこつ集めた本も全て消えてしまった。自分の記憶に頼るしかない。
身長、体重、IQ、特技、愛用品、弱点。次元たちルパンファミリーや銭形警部のこと。
覚えている限りを片っぱしから盛り込んだ。
オタクの本領発揮である。
「今日はやけに気合い入ってるね。何の資料?」
同僚のマキが横から顔を覗かせた。
「ちょっとね。それより聞きたいんだけど、ルパンって知ってる?」
「ルパン? あぁ、小説? 美女に助けられる話なら、私は007の方が良いかな。ダニエル・クレイグ好きだし」
『ルパン三世はアニメでしょ』という言葉は、やはり返ってこなかった。
日ごろ私がさんざん喋っていたから、彼女がルパンを知らないはずはない。
あの黒ずくめが言った通り、想像上のキャラクターという事実は消されてしまったのだ。
お昼の休憩時間に私は携帯の連絡先に新しく追加された『TR』をタップする。
「ルパンの情報か?」
コール音が鳴るか鳴らないかのタイミングで相手が出た。
「知っている限りを資料にまとめました。終業後にお渡しできればと」
黒ずくめは目立つから、できれば普通の格好をしてきてくれないだろうか。
とは言えなかった。
「分かった。また連絡する」
「あ、ちょっと!」通話が切れる寸前で慌てて呼び止める。
「まだ名前をお聞きしてないですよね。おふたりをなんて呼んだら良いんです?」
「ふむ」男は少し考えるような間をおいた。
「それはルパン追跡に必要なのか?」
「そりゃあ、まぁ。いちいち『あの、すみません』とか、まどろっこしいでしょ」
「では……スターバックスとCoCo壱番屋で」
「……目についた看板読んだだけですよね、それ。そうじゃなくて、偽名にしてももっとこう、あるでしょう? ジョンとかスミスとか、名前っぽいの!」
『スタバさん』『ココイチさん』なんて街中で呼びたくない。何の罰ゲームよ。
「じゃあ、それで」と男は言い、電話は切れた。
携帯を握りしめたまま私は唖然とする。
『じゃあそれで』って、店員に勧められるまま注文する客かなにかですか。
なんなのよ、もう……
私は同僚の仕事を手伝いつつ、彼らからの連絡を待つことにした。
ところが、『また連絡する』の『また』は、訪れなかったのである。
今日の仕事を早々に片付け、例のふたり組に頼まれたルパンに関する資料作りに取りかかるためだ。
黒ずくめ曰く『ルパンが架空の人物であるという事実が消えた』ために、大事にしていたDVDもこつこつ集めた本も全て消えてしまった。自分の記憶に頼るしかない。
身長、体重、IQ、特技、愛用品、弱点。次元たちルパンファミリーや銭形警部のこと。
覚えている限りを片っぱしから盛り込んだ。
オタクの本領発揮である。
「今日はやけに気合い入ってるね。何の資料?」
同僚のマキが横から顔を覗かせた。
「ちょっとね。それより聞きたいんだけど、ルパンって知ってる?」
「ルパン? あぁ、小説? 美女に助けられる話なら、私は007の方が良いかな。ダニエル・クレイグ好きだし」
『ルパン三世はアニメでしょ』という言葉は、やはり返ってこなかった。
日ごろ私がさんざん喋っていたから、彼女がルパンを知らないはずはない。
あの黒ずくめが言った通り、想像上のキャラクターという事実は消されてしまったのだ。
お昼の休憩時間に私は携帯の連絡先に新しく追加された『TR』をタップする。
「ルパンの情報か?」
コール音が鳴るか鳴らないかのタイミングで相手が出た。
「知っている限りを資料にまとめました。終業後にお渡しできればと」
黒ずくめは目立つから、できれば普通の格好をしてきてくれないだろうか。
とは言えなかった。
「分かった。また連絡する」
「あ、ちょっと!」通話が切れる寸前で慌てて呼び止める。
「まだ名前をお聞きしてないですよね。おふたりをなんて呼んだら良いんです?」
「ふむ」男は少し考えるような間をおいた。
「それはルパン追跡に必要なのか?」
「そりゃあ、まぁ。いちいち『あの、すみません』とか、まどろっこしいでしょ」
「では……スターバックスとCoCo壱番屋で」
「……目についた看板読んだだけですよね、それ。そうじゃなくて、偽名にしてももっとこう、あるでしょう? ジョンとかスミスとか、名前っぽいの!」
『スタバさん』『ココイチさん』なんて街中で呼びたくない。何の罰ゲームよ。
「じゃあ、それで」と男は言い、電話は切れた。
携帯を握りしめたまま私は唖然とする。
『じゃあそれで』って、店員に勧められるまま注文する客かなにかですか。
なんなのよ、もう……
私は同僚の仕事を手伝いつつ、彼らからの連絡を待つことにした。
ところが、『また連絡する』の『また』は、訪れなかったのである。