第4話
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(大事な……)
彼の言葉に胸がしめつけられる。真剣な眼差しから目を逸らすことができない。
私は息をするのも忘れて、ただ彼を見つめ返していた。
(どうしたらいいの)
ルパンを元の世界に帰さなければと思う一方で、どうしようもなく彼に魅かれ、離れがたく思う自分がいた。
彼の視線を受け止めるほどに、息が苦しくなり身動きがとれなくなっていくような気がした。
「綾」ジョンが肩越しに振り向いて囁いた。
弾かれたように我に返る。
「綾、何とかルパンを説得してくれ」
私は言われるままにルパンの前へ進み出た。
でも、なんと言ったらいいか分からない。
喜びと不安がないまぜになったような、そんな言いようのない感情に心の柔らかい部分をわしづかみにされたままで、何が言えるだろう。
うっかり真逆の事を口走ってしまうかもしれない。
私は考えるのを止め、機械的にまくしたてた。
「信じられないかもしれないけど、ルパンはこの世界の人じゃないの。ここには次元も五エ門も、不二子も銭形警部もいない。貴方だけが何かの間違いでここへ紛れ込んでしまったの。ジョンの言う事を聞いて。彼は元の世界に帰してくれるから」
「…………」
ルパンは黙って私を見つめていた。
その沈黙が怖くて私が再度口を開きかけた時、ルパンは肩をすくめてため息をついた。
「綾が隠していたのは、それだったのか」不機嫌そうに唇を歪める。
「帰れ、か。せっかく知り合えたのにつれないね。そんなに俺が嫌い?」
「そんなことは!」思わず否定してしまった。
ルパンはニヤリと笑った。
「綾は俺より、そいつの言う事を信じるんだ?」
「えっ?」
一瞬、思考が止まる。
今の今までジョン達の言う事を信じて疑わなかった。
だって、彼らはあの時バス停で、あの『手がもげる』危険なヴェールのような壁で『空間を遮断』して。腕時計のような端末で『空間の歪みをキャッチ』して。
でもそれは、プロジェクションマッピングとかウェアラブルデバイスとか、そんなもので簡単に誤魔化せるかもしれない。
ジョン達に嘘を言う動機はないと思う。でもそれが本当の事を言っている証明にはならない。
「綾、騙されるな」
私の動揺を見透かしたようにジョンが厳しい口調で言った。
「言ってくれるじゃねぇの」ルパンはジョンをじろりと睨んだ。「ま、綾がどっちを信じるかなんて分かりきってるけどな」
ルパンが私に向かって一歩踏み出してくる。
「仕方ない……」ジョンが小さく呟くのが聞こえた。
「ルパン、取引といこう」
言うが早いか、ジョンが私の腕を引いた。私の身体はやすやすと彼の腕の中に納まった。頭に何か硬いものが押し当てられる。視界の端で、ジョンが何か黒光りするものを構えているのが見えた。
「『大事な女』を失いたくはないだろう。おとなしく投降するんだ」
ジョンの言葉にルパンは軽く眉を吊り上げた。
「それは取引じゃねぇ。脅しっつーんだ」
「解釈は自由だ」
ジョンは私が彼の手をどかそうともがくのを意に介さなかった。右手に構えた物を、更に強く押し付けてくる。痛いくらいの力だった。
「ちょっとジョンさん……」
「話を合わせてくれ。大丈夫だから」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったが、ジョンが素早くそう囁いた。
私は言葉を飲み込んでルパンを見た。
「……分かったよ」渋々といった様子でルパンはネクタイを緩め、降参するように軽く両手を上げた。
「綾。怪我するから動くな」ルパンが優しく言った。
私を見つめる彼はどこか悲しげな顔で微笑んでいた。
まるで愛しい人に向けるようなその顔に、また胸がしめつけられる。
「おい、もういいだろう。綾を離してやれ。泣きそうな顔してるじゃねーか」
言いながらルパンがゆっくり近づいてくる。
「……げて……」
ダメ。駄目。
そう思った時にはもう叫んでいた。
「ルパン、逃げて!」
ジョンが何かを叫んだが、よく聞こえなかった。
鋭いビープ音が鳴り響いたのだ。
ジョンがハッとして腕時計を見、私を見た。信じられないと言いたげに目を見開いている。
「君だったのか……!」
私は呆然とジョンを見つめ返した。
彼の言葉に胸がしめつけられる。真剣な眼差しから目を逸らすことができない。
私は息をするのも忘れて、ただ彼を見つめ返していた。
(どうしたらいいの)
ルパンを元の世界に帰さなければと思う一方で、どうしようもなく彼に魅かれ、離れがたく思う自分がいた。
彼の視線を受け止めるほどに、息が苦しくなり身動きがとれなくなっていくような気がした。
「綾」ジョンが肩越しに振り向いて囁いた。
弾かれたように我に返る。
「綾、何とかルパンを説得してくれ」
私は言われるままにルパンの前へ進み出た。
でも、なんと言ったらいいか分からない。
喜びと不安がないまぜになったような、そんな言いようのない感情に心の柔らかい部分をわしづかみにされたままで、何が言えるだろう。
うっかり真逆の事を口走ってしまうかもしれない。
私は考えるのを止め、機械的にまくしたてた。
「信じられないかもしれないけど、ルパンはこの世界の人じゃないの。ここには次元も五エ門も、不二子も銭形警部もいない。貴方だけが何かの間違いでここへ紛れ込んでしまったの。ジョンの言う事を聞いて。彼は元の世界に帰してくれるから」
「…………」
ルパンは黙って私を見つめていた。
その沈黙が怖くて私が再度口を開きかけた時、ルパンは肩をすくめてため息をついた。
「綾が隠していたのは、それだったのか」不機嫌そうに唇を歪める。
「帰れ、か。せっかく知り合えたのにつれないね。そんなに俺が嫌い?」
「そんなことは!」思わず否定してしまった。
ルパンはニヤリと笑った。
「綾は俺より、そいつの言う事を信じるんだ?」
「えっ?」
一瞬、思考が止まる。
今の今までジョン達の言う事を信じて疑わなかった。
だって、彼らはあの時バス停で、あの『手がもげる』危険なヴェールのような壁で『空間を遮断』して。腕時計のような端末で『空間の歪みをキャッチ』して。
でもそれは、プロジェクションマッピングとかウェアラブルデバイスとか、そんなもので簡単に誤魔化せるかもしれない。
ジョン達に嘘を言う動機はないと思う。でもそれが本当の事を言っている証明にはならない。
「綾、騙されるな」
私の動揺を見透かしたようにジョンが厳しい口調で言った。
「言ってくれるじゃねぇの」ルパンはジョンをじろりと睨んだ。「ま、綾がどっちを信じるかなんて分かりきってるけどな」
ルパンが私に向かって一歩踏み出してくる。
「仕方ない……」ジョンが小さく呟くのが聞こえた。
「ルパン、取引といこう」
言うが早いか、ジョンが私の腕を引いた。私の身体はやすやすと彼の腕の中に納まった。頭に何か硬いものが押し当てられる。視界の端で、ジョンが何か黒光りするものを構えているのが見えた。
「『大事な女』を失いたくはないだろう。おとなしく投降するんだ」
ジョンの言葉にルパンは軽く眉を吊り上げた。
「それは取引じゃねぇ。脅しっつーんだ」
「解釈は自由だ」
ジョンは私が彼の手をどかそうともがくのを意に介さなかった。右手に構えた物を、更に強く押し付けてくる。痛いくらいの力だった。
「ちょっとジョンさん……」
「話を合わせてくれ。大丈夫だから」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声だったが、ジョンが素早くそう囁いた。
私は言葉を飲み込んでルパンを見た。
「……分かったよ」渋々といった様子でルパンはネクタイを緩め、降参するように軽く両手を上げた。
「綾。怪我するから動くな」ルパンが優しく言った。
私を見つめる彼はどこか悲しげな顔で微笑んでいた。
まるで愛しい人に向けるようなその顔に、また胸がしめつけられる。
「おい、もういいだろう。綾を離してやれ。泣きそうな顔してるじゃねーか」
言いながらルパンがゆっくり近づいてくる。
「……げて……」
ダメ。駄目。
そう思った時にはもう叫んでいた。
「ルパン、逃げて!」
ジョンが何かを叫んだが、よく聞こえなかった。
鋭いビープ音が鳴り響いたのだ。
ジョンがハッとして腕時計を見、私を見た。信じられないと言いたげに目を見開いている。
「君だったのか……!」
私は呆然とジョンを見つめ返した。