第3話
name change
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「放して……」
私は彼から逃れようとした。しかし、強い力で腕を巻きつけられて動けなくなる。
「しー、静かに」
背後から抱きすくめられる圧迫感と耳元で囁かれる声のせいで、顔がカッと熱くなった。
私の動揺が分かったのか、ルパンはさらに強く抱きしめてくる。
「なんで、こんなこと……」
震える声で尋ねたけれど、ルパンは何も答えなかった。
沈黙が続いた。警備員たちの足音も遠くに聞こえるだけで、近づいてくる気配はない。
『ルパンがいた』『B連絡口に逃げた』という声は、もしかしたらルパン本人が仕掛けたものだったのかも知れない。
陽動作戦にまんまと引っかかったというわけだ。
やがてルパンが静かに口を開いた。
「俺と一緒に来てくれ」
「えっ……?」
ルパンがニヤリと笑った。
「お前を盗むために来たんだ」
私は目を見開いたまま動けなくなった。
彼は何を言っているの? 私を盗むって、どういうこと……?
「俺と一緒に来るよな?」
優しい口調だったけれど、目が真剣だった。
私は黙って首を横に振る。するとルパンは苦笑いを浮かべて言った。
「じゃあ、力ずくで奪うしかねぇけど」
そう言うなり、彼は私を抱き上げた。
「きゃ……
!」
「どこだ、綾!」遠くでジョンとスミスの声がする。
懐中電灯の光が私たちへ伸びてきたが、ルパンはギリギリのところで身をかがめた。
白い光が私たちの頭上を通り過ぎる。
「危ない、危ない」彼はニヤリとして腕の中の私を見た。
「じゃあ、行こうか」
彼は私を抱き上げたまま駆け出した。
「予備電源のスイッチが入った。もうすぐ照明がつく」警備員の声がした。
照明がついたら会場を出る前に見つかってしまう。
捕まってほしくない。でも、捕まえて元の世界に帰さなければこの世界が終わる。
逃げて。捕まって。相反する思いが私の胸に去来する。
私はルパンの顔を見上げた。彼は何も言わず会場を駆け抜ける。
暗闇で顔は分からないけれど、こういうピンチの時の彼の真剣な表情はテレビで何度も見た。
……あの時、バス停でも。
きっと、彼は逃げおおせるだろう。
遠くでビープ音が鳴った。
「ルパンの奴がまた歪みを……!」ジョンたちが叫んでいる。
会場を出たルパンは階段の踊り場で一度立ち止まり、追手の様子をうかがってから一気に階段を駆け下りていく。
照明はなぜか、点くことはなかった。
私は彼から逃れようとした。しかし、強い力で腕を巻きつけられて動けなくなる。
「しー、静かに」
背後から抱きすくめられる圧迫感と耳元で囁かれる声のせいで、顔がカッと熱くなった。
私の動揺が分かったのか、ルパンはさらに強く抱きしめてくる。
「なんで、こんなこと……」
震える声で尋ねたけれど、ルパンは何も答えなかった。
沈黙が続いた。警備員たちの足音も遠くに聞こえるだけで、近づいてくる気配はない。
『ルパンがいた』『B連絡口に逃げた』という声は、もしかしたらルパン本人が仕掛けたものだったのかも知れない。
陽動作戦にまんまと引っかかったというわけだ。
やがてルパンが静かに口を開いた。
「俺と一緒に来てくれ」
「えっ……?」
ルパンがニヤリと笑った。
「お前を盗むために来たんだ」
私は目を見開いたまま動けなくなった。
彼は何を言っているの? 私を盗むって、どういうこと……?
「俺と一緒に来るよな?」
優しい口調だったけれど、目が真剣だった。
私は黙って首を横に振る。するとルパンは苦笑いを浮かべて言った。
「じゃあ、力ずくで奪うしかねぇけど」
そう言うなり、彼は私を抱き上げた。
「きゃ……
!」
「どこだ、綾!」遠くでジョンとスミスの声がする。
懐中電灯の光が私たちへ伸びてきたが、ルパンはギリギリのところで身をかがめた。
白い光が私たちの頭上を通り過ぎる。
「危ない、危ない」彼はニヤリとして腕の中の私を見た。
「じゃあ、行こうか」
彼は私を抱き上げたまま駆け出した。
「予備電源のスイッチが入った。もうすぐ照明がつく」警備員の声がした。
照明がついたら会場を出る前に見つかってしまう。
捕まってほしくない。でも、捕まえて元の世界に帰さなければこの世界が終わる。
逃げて。捕まって。相反する思いが私の胸に去来する。
私はルパンの顔を見上げた。彼は何も言わず会場を駆け抜ける。
暗闇で顔は分からないけれど、こういうピンチの時の彼の真剣な表情はテレビで何度も見た。
……あの時、バス停でも。
きっと、彼は逃げおおせるだろう。
遠くでビープ音が鳴った。
「ルパンの奴がまた歪みを……!」ジョンたちが叫んでいる。
会場を出たルパンは階段の踊り場で一度立ち止まり、追手の様子をうかがってから一気に階段を駆け下りていく。
照明はなぜか、点くことはなかった。