『Rare stone Museum』は評判を呼び、大勢の客で賑わった。


夜になると、客に代わって大勢の警備員がショーケースの前に立った。ほんの少しの変化も見逃すまいと目を光らせている。


私はジョンとスミスの黒ずくめコンビと一緒に、警備員や企画展の関係者に交じってルパンを待っていた。


時計の針が重なり、予告時間を告げた。


一瞬の間をおいて、照明が一斉に落ちる。


暗闇に包まれた会場は騒然となったが、警備員たちはすぐに冷静になった。


懐中電灯の明かりを頼りに私たちは周囲を警戒する。


「いたぞ、ルパンだ！」


どこからか声が上がり、駆け出す足音がした。


「どこだ、どこにいる？」


警備員たちは懐中電灯を振り回し、辺りを見回す。


私も彼らの明かりを目で追ってルパンを探したが、どこにも見つからなかった。


「B連絡口の方へ逃げたぞ！」警備員が叫んでいる。


「逃がすな、追え！」


警備員たちが駆けていく。暗闇での追いかけっこが始まった。


「綾はそこを動くな！」どこからかジョンの声がした。


「はい！」


警備員たちの怒号と乱れた靴音が飛び交うなか、負けじと声を張る。


すると、背後から足音が近づいてきた。


「ジョン、ルパンは……」


振り返ろうとしたとたん、闇から伸びてきた手が私の腰に回った。そっと引き寄せられ、誰かの胸に抱きこまれた。


ジョンではない。


私は身を強張らせた。


「だ、誰……？」


「『また今度』って約束したろ？」耳元で声がした。


私は目を見開いた。この声……。


「ルパン！」


「綾！」私の声を拾ったスミスが素早く反応した。駆けてくる足音。


「おっと、危ねぇ」


ルパンが私を引き寄せたまま後ろに飛び退いた。次の瞬間、スミスの拳が空を切る。


彼は勢いのまま回転し、今度は回し蹴りを放った。しかし、それもむなしく宙を切っただけだった。


ルパンは私から手を放し、再度向かってくるスミスの足を払った。バランスを崩したスミスの体は勢いよく床にたたきつけられた。


「こっち！」ルパンが私の手を掴んでその場から移動する。