第3話
name change
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私はただ茫然と立ち尽くしていた。
額が熱い。心臓がドキドキいっている。
まだキスの感触が鮮明に残っていて、思わずルパンに抱き寄せられた時のことを反芻してしまった。
どうしよう、変な顔してなかっただろうか。
地面を蹴る音がこちらへ向かってくるのが聴こえて、私は反射的にそちらを向いた。
「スミスさん。ルパンは」
「逃げられた」息を切らしながら彼はそう言って額の汗を拭った。
「怪我はないか?」
「あ……はい……」と私は曖昧に返事をする。
とにかく家に帰ろう。ここにいると何度も反芻してしまいそうだ。
私は鍵を出そうとカバンを探った。
「スミスさん。これ……」
カバンに入っていた、見覚えのない紙を引っ張り出す。
名刺大のそれはルパン三世のロゴマークが描かれた厚手の紙で出来ており、真ん中には次の週末の日時と、『Rare stone Museumにて一番希少なお宝を頂戴する』という一文が記されていた。
予告状だった。
「まずいな。早く捕えなければ……」
スミスは携帯様の端末を取り出した。ジョンに連絡するのだろう。
「なぜそんなに焦ってるんですか?」私は訊ねた。
「この世界に彼が存在することがそんなにまずいことなんですか?」
「他の世界からどうやって来たのかを考えろ。時空をねじ曲げて、本来なら行き来できない世界を行き来できるようにしたんだぞ」
「……ルパンが?」
「ルパンが」
スミスが説明する。
「メカニズムは解明されていないが、ごく稀に発生する事例だ。強い願いが時空を歪ませて他の世界にトリップしたり、欲しい物を手に入れたり」
「つまりルパンは、逃げ出したいと強く願うあまりこの世界にやってきた、と」
「端的に言えばそうだ。本人に自覚はないだろうがね」
「彼を受け入れた世界が辻褄を合わせようとするとそれが歪みになるんでしたよね。歪みが起こるとどうなるんですか?」
「世界が終わる」
「えっ……」
「世界が辻褄を合わせられなくなったら、その世界は壊れてしまう」
世界が、壊れる ────
思わず息を飲んだ。スミスの声色には哀愁が滲んでいた。昔何かがあったのかもしれない。
「歪みが続けば、いずれその影響を抑えきれなくなる」
それはつまり、破滅へのカウントダウンだ。
「ルパンはそのことを知ってるんですか?」
「知らんだろうな。知っていれば好き放題やるだろう。世界が崩壊したって、自分は元の世界に帰ればいいんだからな」
どこから現れたのか、いつの間にか背後に立っていたジョンが言った。
「……だから、ルパンには知られる訳にはいかないんだ」
彼はスミスからルパンの予告状を受け取り、一読すると胸ポケットに納めた。
「こちらの読み通り、ルパンは宝石展を狙うつもりだ。そこで彼を捕まえるとしよう」
額が熱い。心臓がドキドキいっている。
まだキスの感触が鮮明に残っていて、思わずルパンに抱き寄せられた時のことを反芻してしまった。
どうしよう、変な顔してなかっただろうか。
地面を蹴る音がこちらへ向かってくるのが聴こえて、私は反射的にそちらを向いた。
「スミスさん。ルパンは」
「逃げられた」息を切らしながら彼はそう言って額の汗を拭った。
「怪我はないか?」
「あ……はい……」と私は曖昧に返事をする。
とにかく家に帰ろう。ここにいると何度も反芻してしまいそうだ。
私は鍵を出そうとカバンを探った。
「スミスさん。これ……」
カバンに入っていた、見覚えのない紙を引っ張り出す。
名刺大のそれはルパン三世のロゴマークが描かれた厚手の紙で出来ており、真ん中には次の週末の日時と、『Rare stone Museumにて一番希少なお宝を頂戴する』という一文が記されていた。
予告状だった。
「まずいな。早く捕えなければ……」
スミスは携帯様の端末を取り出した。ジョンに連絡するのだろう。
「なぜそんなに焦ってるんですか?」私は訊ねた。
「この世界に彼が存在することがそんなにまずいことなんですか?」
「他の世界からどうやって来たのかを考えろ。時空をねじ曲げて、本来なら行き来できない世界を行き来できるようにしたんだぞ」
「……ルパンが?」
「ルパンが」
スミスが説明する。
「メカニズムは解明されていないが、ごく稀に発生する事例だ。強い願いが時空を歪ませて他の世界にトリップしたり、欲しい物を手に入れたり」
「つまりルパンは、逃げ出したいと強く願うあまりこの世界にやってきた、と」
「端的に言えばそうだ。本人に自覚はないだろうがね」
「彼を受け入れた世界が辻褄を合わせようとするとそれが歪みになるんでしたよね。歪みが起こるとどうなるんですか?」
「世界が終わる」
「えっ……」
「世界が辻褄を合わせられなくなったら、その世界は壊れてしまう」
世界が、壊れる ────
思わず息を飲んだ。スミスの声色には哀愁が滲んでいた。昔何かがあったのかもしれない。
「歪みが続けば、いずれその影響を抑えきれなくなる」
それはつまり、破滅へのカウントダウンだ。
「ルパンはそのことを知ってるんですか?」
「知らんだろうな。知っていれば好き放題やるだろう。世界が崩壊したって、自分は元の世界に帰ればいいんだからな」
どこから現れたのか、いつの間にか背後に立っていたジョンが言った。
「……だから、ルパンには知られる訳にはいかないんだ」
彼はスミスからルパンの予告状を受け取り、一読すると胸ポケットに納めた。
「こちらの読み通り、ルパンは宝石展を狙うつもりだ。そこで彼を捕まえるとしよう」