「私、いつかあの組織を……」


彼女が呻くように低く呟いた。



「おいおい、かたきを討つつもりか。それはお前のすべきことじゃないだろう」


「分かってる。何も敵陣に乗り込んでいって、ランボーよろしく派手に撃ちあおうってんじゃないわ。どこの誰だかを調べて、確実に追い詰める方法を考える」


「やめた方が良い。女の身で、危険すぎる」


それを聞いて綾は苦笑した。


「この商売を始めた時から危険は覚悟の上よ。それに……こうでもしないと私、自分で自分が許せないの」


迷いのない瞳で次元をじっと見つめる。


「私が撃たれて倒れた後、連中はすぐに去って行った。きっと死んだと思ってるわ。好都合よ。焦ったりしない。修理屋をしながら、少しずつ情報を集めるわ」


「手がかりはあるのか」


「意識を失う直前に、私見たの。彼らの手首にみんな同じ蛇の入れ墨があったわ。そこから調べれば何かわかるかもしれない」


次元は渋い顔をして黙り込んだ。


彼女がまっとうな商売をしている身だとは言わないが、それでも戦闘に長けた連中と渡り合えるほど “こっち側の人間” って訳でもない。


ましてや女1人。無謀すぎる。