学パロ


「ん〜……んん……はぁっ……ダメだぁ…届かないー!」

 台に登り、一生懸命手を伸ばす姿は傍から見たら滑稽に見えるだろう。だが、仕方ないのだ。今は頼れる人は近くにいないし、自分が欲しい本は一番上の棚にあるのだから。

(ぐ、クソッ……!!なんで、あんなとこに…あるんだよぉ……!!幕末史の本んん…ッ!!)

 無様な姿を晒しているのは、土暮紡希だ。高所恐怖症という訳ではないが、小さな台に登って何かをするというのが非常に苦手で、今も現在進行形で血の気がとんでもなく引いている最中だ。有り得ないほど高いところは落ちてもすぐに死ぬだろうな〜くらいの感覚で居られるが、ある程度の高さでは落ちた時の痛みを想像できてしまう。

(ここから落ちたら普通に痛い…だろうし…落ちたくない……怪我したくない…!!痛いのは嫌だ…!!)

 だが、ここで誰かを頼るのも正直面倒臭い。自分で片付けられる問題は自分で解決しておきたい。誰かに貸しを作るのも嫌だし、変なトラブルでも起きたらそれこそ面倒になるからだ。

 とはいえ、自分の背が劇的に伸びる訳もなく……こうして無様に必死に背伸びをして手を伸ばすのだが……一向に届く気配がない。諦めようかと腕を下ろしたその時、横から人影がぬぅっと現れ、目を丸くさせた。

「ほらよ、コイツが欲しかったんだろ?」
「あ、ぇ…!?ひ、土方先輩…!?」

 目の前に現れたのは、今まで全く接点のなかった土方歳三だ。学年は一つ上で、同じクラスメイトの近藤勇や山南敬助と仲が良く、そして紡希が心の底から尊敬している伊東甲子太郎と度々衝突している男だ。

 そんな彼が何故このタイミングで…?そもそも図書館に立ち寄っているイメージが全くない。どうしてこんなところに?などと考えながら、彼の手から目的の本を受け取り、頭を下げた。

「こ、この度は誠にありがとうございました!おかげさまで、こちらの本を読むことができます…!」
「そんな礼を言われるほどのことはしてねぇよ。……次はもう少し身の丈に合った本を選ぶんだな?」

 足、震えてんぞ。と軽く指摘をしてから彼はそのままどこかに行ってしまった。見た目通り、かなりクールな人物らしい。学校の女子生徒たちが黄色い悲鳴を上げてファンになるのも頷けるかもしれない。なによりかなりの美形だし、声帯も良い。あんな声で囁かれたりでもしたら、耳が妊娠する〜みたいなこともありうるかもしれない。……いや、勿論自分はそんなのとは無縁だが。というか願い下げだが。

「土方先輩に貸しを作っちゃったなぁ……なんとかしてお礼しないと……」
「土方君が、なに?」
「えぇ〜?なにって言われても〜………って……え…?」

 台から降りて、自分の背を少しでも高くしてくれたソレを元の場所に戻そうとしていると背後から声をかけられた。その声の主に気づいた時には、彼の影に覆われて視界が少しだけ薄暗くなったような気がする。

「ねぇ、貸しってなぁに?君、土方君と接点あるの?」
「ビェッ…!?い、いいい伊東先輩…っ!?」
「ビビってないで答えなよ。それとも何?遂に僕に飽きて向こうに乗り換えようとか思ってる?それはそれで良いけどさぁ〜……せめて僕に一言か二言くらい報告するなりしてくれないかなぁ。こっちはいつも君がアプローチしてくるのを必死にかわしてあげてるのに、急に鞍替えされても感情の整理が追いつかないっていうかさ」

 物凄い早口で言葉を羅列してくる先輩の姿に、紡希は恐ろしくて振り返ることもできなかった。分厚い本を抱いて、間近で感じる伊東の匂いや僅かに感じる体温に思考回路はショートしかけていた。彼が、自分から進んでこちらに話しかけてくることはない。基本的にいつも自分から話しかけたり挨拶をするくらいで、全く相手にされないことの方が多い。同級生で隣の席の藤堂平助からは「相手にされないのによくもまあ、あんなにアタックできるよな。土暮ってほんとに神経が図太いんだ。ああ、それとも鈍感なだけか?どちらにせよ、ちょっと異常だと思うぞ」と半笑いで言われるほどだ。彼なりに気を使ってくれているのは分かっているが、自分はあくまでも伊東のことを心の底から「敬愛」していることを本人に伝えたいだけだし、それが本人に伝わっていなくても別に構わないのだ。挨拶を返してくれるだけでも嬉しい。いや、寧ろそれ以上は望みたくない。過剰摂取で死んでしまいそうになるからだ。

「考え事なんて余裕じゃん。僕との会話で余裕だったことある?今が初めてだよね?やっぱり土方君に脳でも焼かれた?ちょっと優しくされたくらいで揺らぐの?浅はかだなぁ〜。現実見なよ。あんな頭バーサーカーで向こう見ずで近藤さんのことしか考えてないような人間なんて、先がないんだから」
「ひ、土方先輩のことほんとに嫌ってるんですね…?いやでも、私は別にそこまで嫌ってるわけでは……カッコイイですし、さっきも助けてくれましたし……」
「僕が手伝ってあげようとしたらアッチが勝手に横から入って自分の手柄にしただけのヤツ?あんなのやめた方がいいって。敬愛してるのは僕なんでしょ?せめて鞍替えするなら山南君とか服部君とか藤堂君にしてよ。じゃないと僕も安心できないんだから」
「なんかめちゃくちゃなこと言われてますか私?」
「正当な要求だと思うけど?」

 今顔を合わせたら絶対に変なことを口走りそうで怖い。カタカタと震える身体を押さえつけるように、大事な本を落とさないように腕に力を入れていると、自分よりも大きな手が肩に触れてくる。かと思えばぐるんと視界が回り、目の前に敬愛してやまない伊東の顔が迫ってきていた。目を見開いて仰け反るが、背中は本棚に当たってしまいこれ以上逃げられない。オマケに今いる位置は死角になりやすい場所のため、人目にもあまりつかないだろう。こんな光景を見られないことはいい事かもしれないが、それでも心拍数は跳ね上がる。顔が近づいただけでこんな風になってしまうなんて、自分のメンタルケアもしっかりしてあげないと。なんて考えていると、伊東の細長い指に頬を掴まれる。目を丸くさせると、彼は眉間に皺を寄せながら、深くため息を吐いた。

「君は……僕のことが好きなんでしょ?」
「……へ?」
「尊敬してる?憧れ?そんなの違うでしょ。今まで気づかないフリをしてあげてたけど、あんなのに目移りするくらいならちゃんと言ってあげるよ」
「え、……えっ…?」

 鼻と鼻がぶつかり合いそうな距離まで近づいて、伊東は真っ直ぐにコチラを見つめてくる。その真剣な顔に羞恥心よりも困惑の感情の方が強くなった。

「……君は、僕に惚れてる。恋愛的な意味で、僕のことが好き。そうなんでしょ?」
「……はい?」
「とぼけたって無駄だよ。君から向けられる熱視線も、時々聞こえてくる恍惚とした声も、全部全部僕が好きだからやってるんでしょ?じゃなかったら、辻褄が合わないっていうか…納得できないし」
「…………エッ!?そ、そうなんで…」
「しーっ…!!声が大きいよ…!!」

 口を片手で塞がれ、更に距離を詰められる。あの紳士的な彼が、こんなにも無遠慮に近づいてくるなんて考えられない。これはきっと自分にとって都合のいい夢なんだ。そんなことを考えていると、咎めるような目で睨まれる。

「……僕のことが好きなのに、なんで…土方君にもあんな顔を…してさぁ……ほんとに、なに?君には、僕がいればそれでいいって…いっつも…言ってたくせに…」
(あれ…?私そんなこと言ってたっけ…?)
「無責任すぎない…?人の心をここまで弄んで……僕が、少しは心を砕いてもいいかなって思ったら、そっぽを向くなんてさぁ……」
(エッ!?そうだったんですか!?)
「…………ほんとに、これだから…これだから、色恋沙汰なんて、嫌なんだよ。僕は……もう、振り回されたくないって思ってたのに……」

 彼の声から覇気が無くなった。伏せられた瞳から感じられるのは、ただひたすらコチラに対する「失望」の感情だろうか。とにかく、自分の軽率すぎる言動に彼の気持ちが乱されてしまったのは紛れもない事実なのだろう。まだよく分かってないが、とにかく何か言葉をかけなければならない。

(で、でも、結構な力で口を塞がれてるから、声…出せない……っ!!)

 彼の手を掴んで離そうとしても、力の差がありすぎてビクともしない。ペチペチと軽く叩いてアピールしても、中々気づいてくれない。これは相当彼が追い詰められている証拠だろう。

「ん……むーーっ!!むぅ…んんっ!!」

 彼の頬に手を伸ばして、ふにふにと指を沈ませる。それでも彼の表情が変わることはなく、ただ一点にどこかを見つめている。口を閉ざし、必死に頭を働かせているのだろうか。それはそれで別に構わないが、せめてこの手だけは外して欲しい。

 あまり気乗りはしないが、耳を軽く引っ張って気を逸らそうとする。ベタベタと他人に触れられるのをあまり好ましく思っていない伊東にとって、このスキンシップは心底嫌に思うだろう。それでも、今やらねば何も行動できなくなってしまうのだ。

「んんんっ……!!む、むーーっ!!」
(お願い、伊東先輩!!はなして!!)
「……はあ…。もういいや。こんなことて深く考えるのも馬鹿みたいだし」

 必死に抵抗していたが、あっという間に開放される。それに拍子抜けしていると、いつも以上に深刻そうな顔をした伊東にため息を吐かれてしまった。そんな顔をされる理由も、そんな態度をされる筋合いもないが、自分の行動で彼の気分を害しているのなら、まずは謝らねば。そう思い、離れていこうとする手を掴んで、訝しげな顔でこちらを睨みつけてくる彼の瞳を真っ直ぐに見つめ返す。嗚呼、やっぱり綺麗な瞳だと思いながら、激しく鼓動する心臓を必死に宥めた。

「せ、先輩…!ご、ごめんなさい……私の軽率な行動で、あなたの気分を害してしまった…んですよね…?本当に、本当にすみませんでした…!」
「…………」
「もう、迷惑だって仰るなら……ち、近寄るのもこれっきりにしますので…!!貴方の視界に入らないように、努力精進致しますので……なので、だから……!」

 私のことを嫌っていてもいいから、せめて……同じ学校で過ごさせて欲しい。貴方のことを好きでいさせてほしい。自分はいくらでも嫌われていい。だから、好きでいる権利がほしい。彼を好きでいてもいい資格がほしい。それだけは、奪わないでと。真っ直ぐにそう伝えた。

「お願いします……!貴方の邪魔にならないように……しますから…!迷惑なら、もう二度と話しかけないし、視界にも入らないようにします……!!だから、だから……」

 こんなの、いつでも覚悟していた。なのに、どうしてだろう。鼻の奥から喉にかけて激痛が走り、目尻からじんわりと何かが溢れてくる。嗚呼、最悪だ。まるで情に訴えかける人みたいじゃないか。嫌だ、それで同情を誘ってるように見えたら最悪だ。最悪で、最低な女すぎる。こんなの、こんなこと……ッ!!

(ダメだ……絶対に、嫌われた…!!)

 そのことを実感してしまうと、どうしても涙腺が緩んでしまう。鼻をすすって、こんな情けない顔を見られたくなくて、本で隠しながら続きの文字を探そうとする。……が、その前に彼の手が紡希の手に伸ばされた。本を持つ手に重ねるように触れてきて、そのまま分厚いソレを奪われてしまう。

「はっ……ひっどい顔。……僕と二度と関わらないようにするなんて…そんな見え見えの嘘つかなくてもいいよ」
「っ、そ…んな……こと…!だって、あなたに……迷惑をかける、くらいなら……」
「確かに迷惑かもしれないけど、君が僕の視界に入ってくるのはもう日常なんだよ。……それに、君は僕が居ないと生きていけないんでしょ?」

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっているだろうに、それでも彼は笑いかけてくれる。その理由がわからなくて、考えたくなくて首を傾げてしまう。

「……僕の傍に居てもいい。僕に好きだって何度も何度も言ってきていいよ。何回だって受け止めるから。……でも、僕に飽きたらちゃんと言って。……僕にだって、心の準備は必要だから…さ」

 伊東の指が頬に伸びて、流れる涙をそっと拭ってくる。彼の言っている言葉の意味を理解するよりも、彼の優しさに触れられたことが嬉しくて、それだけで馬鹿な頭は幸せだと更に涙を零してしまう。

「な、んでっ……なんで、わたしに……やさしく、してくれるんですか…っ…!?だって……わたし、めいわくじゃ……」
「…………こういうのは、直接言葉にするものじゃない。でも君は頭が足りないから…ちゃんと言ってあげないとダメだよね」
「なっ……!?わ、私、いま真剣なんですよ……!?バカにするなら、あとに……」
「絆されたんだよ、君に。……君の熱量に、君の純粋な好意に……悪くないって思ってんの。君なんて、頭も足りないし要領も悪いし、ほんとに目が離せない後輩でしかなかったのに……いつの間にか、僕の心の奥深いところにまで侵食してる」

 そう言うと、伊東は真っ直ぐにコチラを見つめてくる。

「僕はね、ホントに君のことは興味もなかったんだよ。それなのに、来る日も来る日も、なんなら夢の中にまで君が出てきちゃったりしてさ〜?……ほんとに、君のせいで…生活リズム狂わされたり、この前のテストだって一問ニアミスしちゃったりして…もうめちゃくちゃにされてるの」
「えっ、ぁ……ご、ごめんなさい……?」
「うん。……僕は、君のせいでおかしくなっちゃった。でもね、僕ってば優しいから。君がそのままでいてくれるなら僕も許してあげるよ。変わらず、僕のことを好きでいて…僕の傍にいてくれるなら、それでいい。でもさ、僕から離れるならちゃんと筋だけは通して欲しい」

 そこまで言うと、伊東はゆっくりと顔を近づけてくる。大好きな人の顔が間近に迫り、呼吸すらできなくなってしまう。バクバクと心臓が破裂しそうになり、ヒュッと息を詰まらせていると彼の吐息が耳朶にかかった。

「僕をおかしくさせた責任くらい…ちゃんと取ってよ」
「っっっっ……!?」
「……まあ、嫌ならいいけどね?君って恋愛願望はないんでしょ?だから、僕に黙って恋人は作らないで。僕よりも好きな人ができたら僕に報告すること。これさえ守ってくれたら、あとは好きにしていいから」
「ぁ、え……?」
「僕と恋人になってほしいなんてことは言わないから。……でも、僕を差し置いて自分だけ幸せになろうなんて思わないでよ?君はそんな薄情な人間じゃないもんね?」
「も、もちろん…です…!!貴方以外の人に向ける好意は、全て親愛ですから…っ!!あなただけ、先輩だけ……とくべつ、ですから…!!」

 鼻を啜りながらそう答えると、伊東はいつにも増して穏やかな笑みを浮かべた。初めて見るその顔に胸の奥がキュウッと締め付けられて、呼吸もままならなくなる。

「そっか。……その言葉、嘘だったら承知しないよ」
「は、はい…っ!!」
「まあ、君に限って人を傷つけるような嘘はつかないだろうけどね。嘘ついたら針千本飲ます〜ってヤツだね」

 この男なら本気で自分に針千本飲ませてきそうだなと思いながら、ニコニコと真意の読めない笑顔を浮かべる伊東を見つめて、へらりと笑った。





 心臓を突き刺されたような痛みが広がった。呼吸ができなくて、しばらくの間動けなくなった。目の前が真っ暗になってふらついて、本棚に肩をぶつけたところで正気を取り戻す。

(……なに、アレ…?)

 伊東の天敵とも言える男が、自分によく懐いている後輩に声をかけている。その事実を受け入れたくなくて、自分以外にもあの人懐っこくて輝くような笑顔を見せる彼女が許せなくて、人の後輩にちょっかいをかけるあの男が許せなくて、許せなくて。奥歯を噛み締めて、頭に上った血が下がるのを待った。短絡的に行動しては、伊東が嫌う馬鹿と同類になってしまう。それだけは、避けたかった。

(落ち着け、落ち着け……!!土方君は普通に、困ってたあの子を助けただけでしょ…!大丈夫、何も無い。あの二人の間には何も無い、はずだから…!!)

 深呼吸をしている間に、土方はどこかに行ってしまったようだ。特に何の接点もないのに急にしゃしゃり出てきやがって。そんなことを考えていると、気の弱い彼女の頬が少し赤くなっているのが見えた。そこから、あまり記憶が無い。



「あ、そのっ……か、お……近く…ないですか…?」

 冷静になれたのは、彼女と約束をしてから。それまでは、まるで自分が自分ではなくなったような、そんな感覚だった。茹でダコのように真っ赤になった顔でコチラを見上げてくる紡希に、伊東は思わず笑ってしまう。ただ少し距離を詰めただけでこんな面白い反応をされるとは思ってもない。だが、別に彼女を虐めたいわけではないのだ。軽く「ごめんね」と言いながら離れると、彼女はわかりやすくホッと息をついて困ったような笑みを見せた。

 嘘をつくのが大の苦手で、自分の感情をすぐ表に出す。隠し事もできないし、素直になんでも吐き出してしまう彼女は、誰がどう見ても危なっかしい存在だろう。だからこそ、目が離せない。だからこそ、気にかけてしまう。自分のことを慕ってくれている子なのだから、当然の感情だろう。……なんて、正当化しながら。

「ごめんね。……急に、あんなことして。…勢いが余ったってのはあるけど、さっきのアレは僕も本心だから安心してね?」
「い、いえ…!……え?本心…??」
「あ、もうこんな時間?塾に行かなきゃいけないから僕はこれで失礼するね。君も早く帰るんだよー?」
「え!?ま、まって…!待ってよ先輩…っ!!」

 慌てて追いかけて来ようとする紡希を横目に、伊東は小さく息を吐く。自分以外のものに関心を向ける彼女なんて、なんだか信じられない。でもこうして自分を盲目的に追いかけてくる彼女は、やっぱりどこか憎めない。

(本当に…絆されちゃったなぁ)

 こんな、関わったら絶対にめんどくさい女の子を気に入ってしまうなんて。自分も相当ヤキが回っているのかもしれない。そんなことを考えながら、図書室を後にした。



「ったく、あいつら本当に焦れってぇな…。山南よぉ……お前ホントに背中押してやってんのか?」
「私はちゃんとやってるつもりだよ。というか、あまり焚き付けない方が良いと思うよ土方君。伊東さんの想いだってあるんだから」
「そりゃそうだが、だからって俺が少し会話しただけであんな風になるなんてよ……重症じゃねぇか?」
「それはそうだけどね?」

 伊東とクラスメイトである二人が、本棚の陰に隠れてそんな会話をしているなんて、知りもしないまま。

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