2
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
最近、幼なじみが変です。
正しく言ってしまうと、彼はいつだって、どこか少しだけおかしいのですが。
けれど最近の彼は、それとは比にならないくらいおかしいのです。
「…三成?」
ギリリ、と音がしそうな程に抱き締められて、櫻姫は思わず顔を歪ませた。最近城に帰ってくると、こうして櫻姫を抱き締めたまま離さないのだ。
…あの、凶王と恐れられる三成が、だ。
「櫻姫」
珍しい、と櫻姫はそう思う。
いつも彼は櫻姫を名前で呼ぶことはあまり無いのだ。
「ねぇ、三成。痛い…」
「………」
「…どうしたの。なんか…変だよ?」
その問い掛けに三成はすり、と櫻姫の首に顔を寄せた。
よしよし、とそれを撫でてやると、腰に回された腕に力が籠るのが分かった。
「っ…三成、痛い、よ?」
正直言って、凄く痛いのだ。
彼は細い。のにどこにそんな力があるのか、と思う程の力で、櫻姫を抱き締めてきて。
「みつな…ん、っ」
突然降ってくる、唇への熱い感覚。間近に見えるサラサラとした銀髪。恐ろしいくらいに整った、見慣れた顔。
この現状から導き出される答え、それは。
「~~っ!?」
待って。なんで。
なんで私、三成と口吸いしてるの?
ぐっ、と強く頭を押さえつけられて、抵抗が、出来ない。
「んっ…んんっ、み…つ、な…りぃ…っ」
角度を変えて何度も何度も与えられる甘い刺激に、頭がぼんやりとする。
「…っは…あっ…」
喰われるのか、と思う程に長い口吸いから解放されて。やっと酸素を取り込める、と思った矢先に。また唇を目の前の幼なじみのそれによって塞がれた。
「ん…っ!」
やっぱり、おかしい。
「みつな…り…?」
虚ろげな瞳で見据えた彼は、どこか余裕が無さそうで。
その目には、光が宿っていない。
「(…ああ、)」
と櫻姫は納得した。
不安なのだ。彼は。
けれど自らの頬を撫でる、幼なじみの手のそのあまりの冷たさにびくり、と肩を震わせて。
ざわり、と血の気が引くのが分かった。
「貴様は…幾度私の心を殺せば気が済むのだ。…あれ程、私の傍を離れるなと…」
「は、離れるって言っても…少し、散歩に出ただけ…」
「…言い訳などいらん。…散歩、か…ならば何故、こんな遅い時間まで帰って来なかった」
「…そ、れは」
「……私には言えぬことなのか」
言える訳がない。
家康様とお話していて遅くなったなどと。
「…櫻姫」
「な、に…」
怒られる、と思うと自然と足がすくむ。彼は怒ると怖いのだ。
「私に隠し事など許さない」
貫くような視線で見られてしまえば、櫻姫に抵抗など、出来るはずもなく。
「……っ」
「櫻姫」
名を呼ばれて、びくり、と肩が震える。
「…家…康様と…お話、を」
家康。と。その名が櫻姫の口から紡がれた瞬間。ぴく、と彼の肩が微かに跳ねて。
ダン!という音と共に風を纏った、強い衝撃が、櫻姫の頬を掠めた。
櫻姫の肩ギリギリの壁を、三成の刀が貫いたのだ。
「っ……!?」
「…貴様は私のものだ。そうだろう?…あまりに私の心を殺すのならば…未来永劫私から離れぬよう、貴様を縛りつけて私しか知らぬ場所に監禁するが」
ねえ。幼なじみが、おかしいです。
3/4ページ