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嗚呼、酷く美しいと。そう、思った。
「我と共に来い」
そう呟く彼の手を、私は取った。
それが、全てのものに対する、裏切りだと知っていても。
抗えない。逆らえない。
民へ。国へ。そして何より、兄への裏切り。
全てを知っていて、私は全てを裏切ったのだ。
天下分け目の戦。関ヶ原の戦い。
その戦を前に、壊滅せしめられた国。
そこには黄色い旗だけが立っていた。
兄がかつて親友と呼んだ男の旗。
徳川家康、他でもない彼の旗。
けれどこれは虚像だ。
私は全てを見ていた。
これは彼による、策略。
その時私はここにいたのだ。兄の留守を預かって、民を、国を守ろうと必死だった。
けれど待っていたのは絶望だけで。私が圧倒的な彼の知略に、采配に、敵う筈が無かったのだ。
そうして何も無くなって。民の屍をただ茫然と見据える自分の前に、彼が現れた。
毛利元就。
謀神と呼ばれる、智謀の将。
そして私の──誰よりも大切な人。
「五十鈴」
名を呼ばれて。目の前に差し伸べられた手。逆らえる、筈が無いのだ。
「迎えに参った」
そう、言われてしまえば。
抗える筈なんてない。
だって私は、彼が、何よりも。
全てを、民を、国を、兄妹を。天秤にかけていいと、そう思える程に、彼が大切なのだから。
「元、就」
彼の策に嵌ったのだと、理解していてなお。私はこの、茨の道を、彼と共に。
「連れて、行って」
愛しているわ。
全てを裏切れる程に。
それが、私の。
(愛のカタチ)
例え全てを裏切ってでも、私は彼と一緒にいたいの。
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