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第零章

調べたところ彼の両親は結城組によって殺され、ずっと復讐の機会を狙っていたことが明らかになった。

そして、ただあの事件から変わったもののもある。前組員や壱和さんを慕っていた組員が組から離れて行った。元々、現組長に不安を持っていたものの、留めていた彼が亡くなったことが大きかったらしい。

 組だけでなく俺自身もあの事件から、暫くは負傷者の手当が出来なくなり、外に出るということに恐怖心が芽生えていた。事件のあとだから仕方がない、少し療養生活を行い、今は少し改善され、負傷者へね対応も、外出も問題なく行えている。

 そっと日記に書留、準備をしていたお香にマッチを近づけ優しい香りに息を吸い込む。

辛い記憶や怖いと思うものがあるなら取り除けばいいと以前作っていたお香を完成させた。

 「……ゲホッゲホッ……ヒュっ…」

 お香を炊くようになり少しづつ体を蝕まれていくのが分かる。又元々の持病も少しづつ悪さを始める

 『なぁ、お前何してんの?』

 「か、香満さん…なにってお香を嗜んでいただけですよ」

 「お香をね…」

 「なぁ、このお香が良くないものって組長から聞いたけど?」

 「………っ…」

 胸倉を捕まれ、彼との距離が縮まる。否定するように首を振ると舌打ちと共に思い切り脇腹を蹴り挙げられた。

 「……っ…ゲホッ………」

 「壱和さんが亡くなってからお前からその香りがするようになった。けど香りがするようになってから記憶が抜けることがあっただろ?日常生活の上で些細なことだ、医者として仕事にも支障がない程度だけどな」

 「なぁ、お前さ、こいつがなんで亡くなったのか、壱和さんがどうして亡くなったか覚えてるか?」

 「……………」

 彼の問いかけに言葉をつまらせる。元の生活に戻るに当たってあの時のことは曖昧になっていた。彼らが亡くなった時俺はその場にいたという欠片の記憶。

 「覚えてないだろ。壱和さんはこいつに、お前だって殺されかけただろ」

 彼の言葉にモヤがかかっていたものが薄らぎ、過去の記憶と結びつき、あの時のことを思い出した。

目の前で倒れる壱和さんの姿とこちらに銃口を向けていた彼の姿。それと同時に子供の頃のあの記憶

「……っ、い、………けて…」
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