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第零章

聞こえて来た銃声の音。母様の叫び声が聞こえ、倒れる父様の姿。その後ろにたつ人物が母様に銃口を向けバンっと大きな音が響いたと共に倒れていく母様の姿に飛び起きた。

「…………っ…、ぁ…、か、母様!!………」

嫌な汗が背中を伝い、下ろしていた髪を濡らす。

浴衣の肩に羽織をかけ、外の空気を吸うために部屋を出た。縁側に座り、風に当たっているとバタバタとこちらに向かって走ってくる足音が聞こえてくる。

「先生!!親父さんが」

「…………わ、わかりました」


その言葉に、  急ぎ部屋へと向かった。

部屋に入ると、組長の奥さんがかれの手を握りしめ静かに肩を震わせていた。
俺はそっと自分のかけていた羽織を奥様にかけ背中を摩る

 「爲魅、うちの人が…」

 「えぇ、確認を行いますので、少し下がってて貰えますか?」

 部屋から持ってきていた鞄を取り出し、1つずつ確かめ全ての確認を終えるとポケットの時計を取り出し時間を確認を行った。

 「午前二時三十八分…」

 自分の言葉に奥様は今まで耐えていたものが溢れるようにその場に崩れ落ちた。近くいた組員に奥様のことを任せ、眠る組長の体を拭き、服を着替えさせて行く。一通りやることが終わり、部屋を出た。

自身の部屋に戻る最中、両目から流れ落ちる雫。何度拭ってもとまる気配もなくただぽたぽたと流れ落ちた。

 「おい、爲魅…」

 名を呼ばれ振り返るとそっと抱きしめられ頭を撫でられた。それに驚いていると『我慢しなくていい』と言う言葉にどんどんと止まらなくなり相手の服を濡らす。

 「……俺は…っ……」

 「お前のせいじゃない…誰もお前を責めやしない。大丈夫だから」

 彼は優しく背中を摩った。その温もりに安心するように俺はそっと意識を手放した。
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